「白人スタンダード」という
新たなる侵略
清水馨八郎・著 祥伝社 

 世界史を席捲した白人の悪業と、現代のアメリカ

 アメリカの世界制覇の野望は、世界戦争の準決勝戦にも相当する大東亜戦争で日本に勝利したことで大きく前進した。続く決勝戦である米ソの冷戦にも勝利して、ついに世界史上初の世界一国支配の夢を実現した。
 世界最強の軍事力と資本を握った米国は、アメリカの正義は世界の正義、アメリカン・スタンダードがそのままグローバル・スタンダードと思い上がるようになった。今のところ、アメリカの力と資本と文明の一極支配を批判し抑制する力は、世界のどこにもない。
 従来の世界は人種も言語も、思想も、宗教も、文化も、多様化、個別化していて、その絶妙なバランスの中で人類文明は進化してきたのである。これを人為的に一色に塗り潰すことが、果たして人類の幸福につながるだろうか。それは逆に人類文明の衰亡、滅亡を急がせることにならないだろうか。しかもそれが僅々200年足らずで生まれたアメリカ文明という人工文明で塗り固められたものだとしたら、人類の危機は一層早まるだろう。
 アメリカの文明とは、そのルーツは長くヨーロッパで育ったアングロサクソンを中心とする西洋文明の転移したものである。人種的には太陽の恵みの乏しい、皮膚の色を持たない白色人種の文明である。地表のすべての生物は太陽の光で多少色づくのが普通である。ところが白色人種は皮膚に太陽光による色素がついていない。人間として見たとき、有色人種が当たり前のヒト族で、白色人種は、むしろ“異常”だともいえる。
 その出自を辿ると、冬の半年間の太陽光の乏しさが憾(うら)みとなってか、掠奪を生業とするバイキングという名の海賊の子孫である。歴史的にみて、彼らは異民族に対する本能的、野獣的な残虐性、闘争性、侵略性、殺戮性、怨恨性、復讐性などが、その遺伝子の中に組み込まれているとしか思えない所業を繰り返してきた。その残虐非道の野獣的本性がなければ、僅々二、三〇〇年の間に、平和に暮らしていた世界各地の住民を、侵略し、奴隷化し、殺し、植民地支配ができるわけがなかったはずである。
 アメリカ文明とは、この白人西洋文明の終着点であり、その集大成なのである。この危険な文明に世界を委せておけば、21世紀の世界は、いよいよ不幸になること明らかである。私は以前から、これを白人による人類の危機、「白禍論」として追及する必要を、痛感してきたものである。
 従来、歴史的には「黄禍(こうか)論」という史実や言葉はあるが、白禍論という概念も、評価も聞かない。黄禍論は、日本が初めて白人に勝った日露戦争の実態を知った西洋白人たちが、黄色のモンキーである日本の出現によって、白人の一方的な世界支配が脅かされるのではないかという危機を感じて、議論されるようになった。その代表が、ドイツのウィルヘルム二世である。
 今人類は新世紀を迎えて、地球環境問題、ゴミ、公害問題、地域紛争、宗教紛争、エイズ、麻薬、性の乱れと、社会の退廃と末期的諸問題の危機を感じてきた。これら矛盾と危機を突きつめてゆくと、それらはすべて、西洋のイデオロギーや西洋科学技術や物資文明の後遺症であることが分かってきた。人類がこのままの西洋文明を引きずってゆくと、人類はあと数世紀も生きられない可能性がある。
 人類を滅ぼし衰退させるような西洋文明を文明といってよいのであろうか。いったい西洋文明とは何であったのか、その文明の矛盾と限界は、これこそ「黄禍論」どころでなく「白禍論」と呼ぶべきである。
 
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