「白人スタンダード」という
新たなる侵略
清水馨八郎・著 祥伝社 

 本来、人間に適した「食性」とは

 人の生命を維持する食文化は、各民族の置かれた風土と環境に適応して、長い時間をかけて形成され、定着し、安定した立派な文化である。だから極北極寒の白人の特殊な食文化を世界基準として他に強制することが、いかに自然の摂理に反することかは、誰の目にも明らかである。
 いったい、ヒトと生まれた原人には、創造主は何を食べて生きよと教えたのであろうか。それは人の体の構造や機能を見ればすぐに分かる。銭湯に行ってお互いの体を眺めれば、すぐに納得する。ヒトには他の動物を捕えたり、戦ったりする武器が何一つ備わっていない。他のすべての動物が身につけている、外界から身を守るための毛皮さえ、はぎとられている。まさにスッテンテンの、何と哀れな生物ではないか。
 飛ぶことは鳥や蝶、ハエ、蚊にさえかなわない。1メートルも飛び上がれない。泳ぐことは魚にかなわない。走ることは犬や馬にかなわない。敏捷性もないので、他の動物を捕らえて食べることなどできるはずがない。
 神様は、「お前たちは逃げ出さない草や木の実を食べていればよいのだ。その代わり、他の動物には与えなかった『チエ』だけは授けてやる。ただしこのチエは自然の掟に背くような『悪知恵』に使ってはならない」と言って突き放したのが、原始のヒト族の誕生であった。
 かくてヒトが生まれながらの体に最も適した「食物」は、穀類、野菜など、植物型の食べ物であることは明らかである。
 まず歯の構造をみても、穀物や豆類を擦り潰すための臼歯が20本、野菜を噛み切るための門歯が8本で、肉などを引き裂きちぎるための犬歯はたった4本である。また腸の長さも口から肛門まで8、9メートルもあり、肉食動物の2、3倍も長くできている。
 さらに、ヒトの原産地はアフリカの中部のような熱帯から亜熱帯にかけた地域で、植物的食物が豊かな地域であった。ヒトにとっては、豆類や果物、木の実などが生理的に最もかなった食物になっていった。
 ヒトの親戚筋に当たるゴリラやチンパンジーも猿の仲間もすべて、食性は植物型になっている。キリスト教で人間の始祖といわれるアダムとイブも、穀類や木の実を食べていたと旧約聖書には書いてある。だから現在世界各地の民族の主食の分布図も、大方植物型になっているのは、自然の摂理というものである。
 
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