「白人スタンダード」という
新たなる侵略
清水馨八郎・著 祥伝社 

 大東亜戦争は、史上第三の「元寇」だった

 戦争を侵略戦争と防衛戦争に分けると、日本は有史以来、他国の領土を奪うために軍備を整え侵略軍を派遣した侵略戦争は一度も起こしていない。すべて敵の野望を喰い止めるための防衛戦争であった。明治の富国強兵策も、世界中で力が支配する時代だったからこそ、日本も兵力を蓄え養い、防備を強化して外国の侵略に備えたものであった。領土拡張のための帝国主義的軍国主義ではなかった。それ以前の江戸時代300年は鎖国政策をとっていたのだ。鎖国は侵略の反対で、内に籠もることであった。その頃白人たちはわがもの顔で世界中を侵略し荒らし廻っていたのである。
 日清戦争はわが国生命線である朝鮮半島を、清国が侵略したことに対して日本が反撃した自衛戦であった。続く日露戦争も、ロシアの満州から朝鮮半島への侵略の野望を防ぐための自衛戦だった。
 満州事変も、支那事変も、戦争ではなく事変であった。大陸での日本人や日本の利権に対するいわれない反日、抗日の、匪賊(ひぞく)や共産軍による残虐なゲリラ行動に対して、懲罰や治安のために日本軍が出動したもので、白人の植民地略奪戦争とは全く異なる自衛戦であった。日本側がいかに不拡大方針を掲げても、通州事件、上海事変と次々とゲリラ活動を起こして、日本軍を大陸に深く誘いこんだのは支那である。
 大東亜戦争も「前門の虎」ルーズベルトと、「後門の狼」のスターリンが白人のアジア支配に邪魔な日本を征伐しようと襲いかかってきたもので。日本にとっては独立国として戦わざるをえない当然の戦いであった。だからこれは日本史における第三の国難、第三の「元寇」と位置づけるべきだと考える。
 アジア大陸の中央草原に勃興した蒙古民族は破竹の勢いで周辺諸民族を征服し、支那大陸を支配して大帝国を作り、さらに東方の日本に襲い掛かってきた。文永・弘安の役である。北条時宗を大将とする鎌倉武士の勇敢な防衛戦で侵略軍を玄界灘の海の藻屑と追い払うことができた。この蒙古襲来は、わが国が受けた最初の国難で、「元寇の役」と呼ばれる。
 次に明治に入り、遠く西洋に拠点のあるロマノフ王朝のロシアが極東に進出してきた。この国難を防いだのが第二の元寇、つまり「露寇」としての日露戦争である。
 その後、35年ほど経って、米国が西部劇の延長として太平洋をハワイ、グアム、フィリピンと征服し、次いで日本に襲いかかってきたのが大東亜戦争で、これは日本の歴史にとっては第三の国難であった。いわば、第三の元寇、つまり「米寇」ともいうべき大国難だったのである。
 日本は当時の米国に何のウラミも侵略の意図もなかったのに、米国のほうが、アジア太平洋制覇の野望の実現のため、日本に襲来してきたものである。これは対等の動機で始まった一般戦争の概念に入れるべきではない。米寇と位置づけるべき正当な防衛戦だったのである。
 米国は戦争を日本に仕掛ける前に移民受け入れ国であるのに日本の移民だけを排除したり、日本人の資産を凍結したり、石油の対日輸出を禁止したり、ABCDラインで日本を経済封鎖するなど、いじめにいじめて、戦争を挑発してきたものである。
 開戦するや非戦闘都市や住民に無差別爆弾を投下して、皆殺しのホロコーストを実施しようとした。まさにアングロサクソンの本性を発揮した明らかな侵略戦争であった。だからこれは日本にとって第三の国難、第三の元冠として、歴史に残さねばならない。
 日本人には縄文時代から戦争の経験がほとんどない。他国や他部族を襲って、殺戮と財宝を奪うという戦争の概念がないのだ。豊かな国土で人口が少ない時代には、他人を殺したり、食べ物を奪ったりする必要がなかった。ある土地で喰いつめたり、飽きたら、新田を切り拓いて移動する土地がいくらもあったからだ。歴史が進んで権力闘争はあったが、他者の財産を奪い合う経済戦争はなかった。
 日本の歴史では、戦争の概念の以前は「役」と言っていた。「前九年の役」、「後三年の役」、「西南の役」、「日清戦役」などと呼んだ。
「役」の元の意味は人民に労働を課すことで、役務、兵役、苦役、雑役などの言葉で分かるように、強制された労働のことで、喜んで参加するものではない。地方に動乱が起きたり、朝廷にまつろわぬものを征伐するために兵士を動員し、人民に苦難を与えるので、これを「○○の役」と呼んだのであろう。蒙古襲来は当時の武士や人民に大変な苦難と犠牲を与えたので、これを「文永・弘安の役」と言ったのである。日本の地方行政の中心窓口を役所、役場というのも、公共のために役務を果たすところという意味からきたのだ。
 以上の意味から、大東亜戦争を昭和の「米国襲来」と呼び、国民に大変な犠牲と苦難を与えたので、これを「昭和の大役」と言うべきである。
 
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