白い人が仕掛けた黒い罠
高山正之・著 WAC
 
第5章 白い人が仕掛けた黒い罠 

● 残らず処刑台に送れ

 20世紀に入った時点でアジアは日本、タイ、支那を除いて列強の植民地として分配されていた。
 朝日新聞によれば日本も台湾、朝鮮を「植民地」にしたことにしている。
 確かにさきの大戦のカイロ宣言には「奴隷的状態の朝鮮半島」とあるが、これは創り過ぎだ。植民地とは人頭税、酒税、塩税を課し、識字率を抑え、宗主国への抵抗は徹底鎮圧という形がある。単純に言えば一つの国をまるごと奴隷農場にすることを植民地と言った。
 例えば仏印では前記の税のほか結婚、葬式、引っ越しも課税し、本国では法で禁止されている阿片を専売にしてすべての村に割り当てた。
 金を稼ぐためなら売人もやる。これがフランス人の植民地観だ。
 識字率は1%強。学校は建てないが刑務所はすべての街に建て、有名な監獄島プーロコンドールは植民地化してすぐの19世紀末に作っている。
 この監獄島はベトナム戦争当時まで現役で使われ、通称「虎の檻」と呼ばれた。
 日本は朝鮮に人頭税も塩税も課さなかった。所得税も本土の7分の1におさえた。刑務所の代わりに鉄道を敷き、電気を通し、学校も建て、識字率は90%を超えた。
 今にして思えば日本も無駄なことをしたものだが、朝日新聞はこんな朝鮮統治をさも欧米植民地のように描き、逆に仏印は天国だった風に書く。真実など糞喰らえ、という断固さはゆるぎないが、それなら新聞を名乗るのはやめた方がいい。
 そういう欧米の植民地で1930年代初頭、宗主国への反抗が一斉に起きた。
 インドではガンジーがあの「塩の行進」をやった。参加したインド人の列は50キロもの長さになった。植民地税の代名詞でもある塩税への抗議で、英政府はガンジーを投獄し、彼を支える国民会議派を非合法化した。
 仏印では越南光復会のグエン・タイホク率いる6百人がイエンバイの仏軍基地を襲撃し、白人兵6人を殺害した。仏側は狙撃では世界一のセネガル兵を出動させ、片っ端から殺していって最後に残ったタイホクら13人をギロチンで処刑した。
 越南光復会は日本に学んだ潘佩珠(ファンボイチャウ)が指導する民族派組織で、仏政府はテロ集団として弾圧していた。
 蘭印ではオランダ海軍の駆逐艦「セーブン・プロフェンシン」が植民地支配に抵抗する住民に奪われた。
 そしてビルマではサヤサンの反乱が起きた。
 
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