白い人が仕掛けた黒い罠
高山正之・著 WAC
 
第8章 奴隷のいた国、いない国 

 ハングル普及に尽力

 日本の隣には、以上述べたように文化的につながりのない、はっきり言って、。日本人がいちばん忌み嫌うタイプの人たちが住んでいる。
 隣の国とは、たとえ相手が「マトモな国」であっても付き合いづらいものだ。モーゼの十戒でも、「汝の隣人を殺すなかれ、汝の隣人の妻を犯すなかれ 汝の隣人のものを盗むなかれ、汝の隣人を謗るなかれ」と言っているくらいだ。
「隣人」との付き合い方のいちばんいいお手本が、「アメリカのキューバ外交」だろう。
「日本と朝鮮半島」の関係を、「アメリカとキューバ」に置き換えればいい。アメリカにしてみればキューバは自分に向けられた匕首(あいくち)のようなもので、日本にしてみれば朝鮮はわき腹に突きつけられた匕首のようなものだ。
 キューバは1500年代からスペイン領となって、ずっと混乱が続いていた。原住民のインディオは虐殺され、女は強姦されて、メスティソという混血児の島になる。また、殺戮の結果、人手不足となって、アフリカから黒人を運び、奴隷だらけの島になった。そして、時代がくだった1890年代から、その奴隷たちが宗主国・スペインに対して反乱を起こすようになる。
 アメリカはキューバが混乱しているときは、ずっと無関心だった。キューバで何が起きようと、国内で争っている限り、周りの国にとってはどうということもない。しかし、そのアメリカがキューバに介入した。1898年の米西(米国・スペイン)戦争だ。なぜかと言えばメスティソや黒人奴隷の反乱軍が、支配層のスペイン人たちをほとんど駆逐するところまできていたからだ。
 自分のわき腹に、まとまった「意思をもった国」ができるというのが国家にとってはいちばん怖い。アメリカが米西戦争でキューバに介入したのは、あと少しでこの島に「独立した意思ある国」ができそうになったためだ。
 
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