白い人が仕掛けた黒い罠
高山正之・著 WAC
 
第10章 白人はいつも肚(はら)黒い 

 マイク・ホンダとは何者だ

 90年代、つまり戦後半世紀たったころ、米国特派員に出た。そのときに一番驚いたのが、ごく普通の社説に「北朝鮮」という単語が出てくると必ず「日本の植民地だった(where Japan once colonizes」という枕詞がついていたことだ。別に戦前の話ではなく、今、進行形の飢餓についての論評だ。
 同じように「東南アジア」が出てくれば「かつて日本が残虐行為を働いた(where Japan had conducted atrocities)」とつける。
 オランダは4百年インドネシアを植民地にしながら、学校も病院も作らなかった。フランスはベトナムで学校の代わりに刑務所をつくり、薬の代わりに阿片を売り付けた。彼らはそれを植民地と呼ぶ。日本は朝鮮に学校を作り、病院を置き、鉄道を敷き、電気を通した。それを植民地という一言で日本もまた朝鮮を残忍に搾取したという印象を故意に植え付けようとしていた。
 これは『ニューヨーク・タイムズ』に限らない。『ロサンゼルス・タイムズ』も英紙『インディペンデント』も同じだ。そしてこういう新聞が一番大きく書き立てるのが、日本軍の従軍慰安婦と南京大虐殺、そして東南アジアでの残虐行為だ。
 南京では日本軍は掠奪をほしいままにして6週間にわたって市民を毎日7千人ずつ殺し続け、2千人の女を毎晩強姦したことになっている。それなら強姦につきものの日本人の子種を宿した妊娠騒ぎがあっていいが、それはない。30万人分の骨も出てこない。目撃者もなぜか『ニューヨーク・タイムズ』の記者と米国人教授とオーストラリア人の『マンチェスター・ガーディアン』紙の記者に限られる。オーストラリアといえば米国におべっかを使う元囚人国家として知られる。
 従軍慰安婦は朝日新聞の植村隆記者が捏造した。「日本軍が無辜(むこ)の朝鮮大女性を強制連行して戦場で将兵相手の慰安婦にした。女子挺身隊と呼ばれた」と書いた。実際は朝鮮大女衒(ぜげん)が置き屋に売った。それをまたオーストラリアのジャーナリストが増幅し、米下院議員マイク・ホンダが「日本軍はアジア女性20万人を性の奴隷にした」ことにして非難決議案まで出した。この男は創氏改名でホンダを名乗っているようにも見える!?
 最後の「東南アジアでの掠奪と残虐行為」。新聞では日本の枕詞に使われるわりに具体性に欠ける。前述したようにフィリピンで目を覆う残虐行為を働いたのは米国人だ。ベトナム人を阿片漬けにしたのはフランス人だ。インドネシア人女性を裸にして鞭打ち、傷口に辛子を塗ったのはオランダ人だ。わずかにシンガポールで日本軍は華僑を殺した。華僑のリー・クワンユーが言い立てるが、彼自身が認めるように日本軍がマレーに上陸すると、華僑は白人のご主人様英国について戦った。インド兵などと同じだ。
 しかし英軍が負けると華僑の一部はタイに逃げ、残りは兵装を解いて無辜の市民を装った。いわゆる便衣隊だ。逃亡兵よりあくどい。狩り出されて処刑されるのは戦時法では当たり前だ。日本軍はしかし全員は殺さなかった。見逃してやったら結果的にそれが仇になった。戦後は被害者面し、あることないこと吹聴してマレー人の海に浮かぶ島シンガポールに居座って支那人の素性を隠し、マレー語の国歌を歌い、キリスト教とイスラム教の祭日を休日として「シンガポーリアン」を名乗る。虐殺を言い立てる彼らの言葉にはあまりにも嘘が多い。
 
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