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 断食
滝泰三・著  冬樹社
 
 
 絶大な野菜食の効果

 肉やバターを食べることが健康のためによいと考えている人がある。欧米ではベジタリアン・レストラン(野菜食レストラン)が繁盛している。英国には二千軒もあるというし「健康相談所」の看板をかけている店もある。肉が脳卒中や癌などの原因だとわかってきたのです。
 エスキモーの平均年齢は27〜8歳といわれます。肉食のおかげでリュウマチも多く短命です。心臓病と肉は密接な関係があり、動脈硬化の原因となっています。ある学者の研究ですが、知能指数の低い人が肉を好むといっています。力道山など、毎日一貫目(3.75キロ)の肉を食べており、野球のバットで腹をなぐらせて鍛えたが、血液は酸性になり、腸はのび切っていた。短刀で刺されて死んだが、現在の医学ならこの程度の傷は治してしまう。いかんせん、腸がのび切っていて縫合しようにもつながらなかった。直接には短刀による刺傷だが、肉の食べ過ぎによる体質が死を招いたわけだ。
 野菜食にすると力がでないという説をいう人がいるが、メルボルン、ローマのオリンピックで金メダルを3つとったマリー・ローズ(オーストラリア)は、徹底した菜食を通した選手ですよ。お母さんが偉かった。生まれつきひ弱で神経質だったローズを食事で鍛え上げたのです。黒パン、玄米、黒糖、海藻、のり、ピーナツバター、蜂蜜とゴマとヒマワリの種子で作ったバター、野菜サラダなどが食事の中心だった。白砂糖は一切使わず、果物と海藻でつくったゼリーをとった。ビタミン類を自然食からしっかりとり、あの強靱な身体をつくりあげた。
 日本では野鳥愛好家の中西悟道先生は50歳になって軽い脳卒中をおこし、菜食に切り換えて健康になられた。水泳選手でターザン役のワイズミュラーもそう、松永安左衛門、吉川英治、教育大の杉靖三郎教授、谷崎潤一郎、など有名人にも菜食主義者は多いのです。
 菜食をお粗末なものという考えが流行している。客が来るとすぐ肉料理や高級魚の刺身をとる。大まちがいも甚だしい。野菜こそ最高の美食であり、ぜいたく食なのですよ。シミやソバカスは消え、精力は強くなる。スマートになる。頭がスキーッとする。肉こそ粗食なのですよ。肉食を続けると尿酸がふえる。肌が荒れる。血液がアルカリ性なら蚊に食われても腫れない。中和してしまうのです。女性の肌には特にはっきり現われますね。断食をした女性の肌は光っている。肉食をしていると肌が荒れ、胸かくが小さくなり骨盤が狭くなる。腋臭(わきが)が強くなる、気はいらいらし、荒くなる。自分で調理せずインスタント食品ですましてしまう。
 添加物のほとんどは毒性のものだ。不勉強とか非行の原因ともなっている。殺人者や強盗なども食生活に重大な原因がある。食生活のあやまり、美食主義でカロリーのとり過ぎになっている。三千〜四千カロリーはとり過ぎですよ。食べ物はその人の一生を決定するといってもいいですね。悪い食生活の習慣を断食でいったんストップし、正食にかえすことですね。家族全体がよくなります。一家そろって健康、これほどありがたいことはありません。

 
玄米食の根拠(1)

 まず“主食”とは何かといったことですが、「主食というのはそれだけで生命を維持できる食物」ということです。私は玄米食の話をする時、いつも二木謙三先生(東大名誉教授、都立駒込病院長)のことを思いだします。
 二木先生は生まれた時から医者に、この子は長くは持たんといわれた。腫物、中毒、淋巴腺炎、潰瘍性の皮膚病で身体中ががさがさになり夜も眠れない。目やにが出て眼精疲労となり、あんどんの灯にうす紙を張ったような視力になってしまった。いまから考えれば極端なビタミン不足だったわけです。ビタミンがわかるようになったのは、たかだか27〜8年前のことです。二木先生はとうとう腎臓炎をおこして死にかかってしまった。二木先生のお父上は漢方の医者だった。そこで塩を絶って小豆の汁を飲ませた。すると小便がよく出るようになり身体のむくみもとれてきた。「食べ物がこんなに重大な影響を持つものか」と、子供心にも思ったと述懐されています。
 中学か高校では健忘症になり仙台の高校では落第してしまった。学校の都合で二木先生は山口高校に移った。立派に卒業したが、何とか丈夫になりたい一心で、まず腹式呼吸から始め、毎朝冷水まさつをし、徳山からの徒歩競走にも参加した。同じスピードで歩いて一番になった。大学も出て病気もかなりよくなったが、どうしても胃カタルが治らない。ドイツの留学(大正15年)から帰って玄米一食にした。胃カタルなどいっぺんに治ってしまった。60歳を過ぎて玄米食一本に絞った。玄米一食と野菜。この齢で合気道の植芝先生に入門し、10年間通って六段になった。
 午前4時に起きて牛込の道揚に行き、6時に帰ってくる。帰って一食、茶碗に一膳の玄米と、野菜をたく時、水の多い野菜を下に敷いて他の野菜を煮る。沸いてきたら蓋をして蒸す、つまり水だきということだ。この一食で一日を過ごす。
 二木先生が大阪に来られた時、迎えの人たちは寝台車を探したが居られない。なんと三等車にちゃんと坐っておられる。「私は食堂車は結構」といって、玄米をひいた粉を茶に入れて食べている。病院の大院長であった先生がこうなのだ。94歳まで生きて、死ぬまで玄米で過ごし、合気、各地の講演と飛びまわっておられた。現代の玄米普及の大功労者ですね。
 二本先生は病気は天地の道理に反した生活によって起こると言っておられる。自然にあった食べ物で病気は治る、とも。自然の水をのみ、大気を吸い、自然のものを食べる。人間はこんな簡単なことを粗末に考えている。

 ★なわ・ふみひとのコメント★
 
石塚左玄の「一物全体」の考え方からしましても、毎日食べるお米は精白米でなく玄米にすべきでしょう。最低でも胚芽米を食べる方が健康にはよいと思います。私の家では40数年来、胚芽米を食べていますので、たまに旅先などで白米を食べますと、米の“命”が全く感じられないパサパサした味がします。玄米も5〜6年食べてみましたが、しっかり噛まないといけませんので、その点でも健康によいことがわかります。ただ、最近では洋食化が進み、米そのものを食べない人が増えつつあるのは残念なことです。
 
 
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