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 これが死後の世界だ
 W・H・エバンズ・著 近藤千雄・訳 潮文社
 
 
 少女からの通信

 ‥‥以上は大人の見た子供の生活であるが、今度は子供自身はどんな見方をしているかを子供自身の口から聞いてみよう。出典はカミンズの『彼らは今も生きている』。質問者はカミンズ女史のよき理解者で協力者のギブズ女史。語っているのはエリザペスと名のる少女。本来カミンズ女史は自動書記霊媒であるが、この通信だけは突如として現れた入神談話である。
 
エリザペス「またお話しできるのね。このあいだもずいぶん話したっけ。でもあの時はママに伝えてほしいことばかりしゃべっちゃって……。だって、あたし、地上にいた時よりずっと賢くなっていることをママに知ってもらいたかったの。今なら絶対ママに負けないと思うわ。ところで、おばさんはお人形と遊んだことある?」(私は「おばさんはお転婆だったから、お人形がきらいだった」と笑いながら答えておいた)
 
エリザペス「こうして地上に戻って昔のあたしに帰るのは、ちょうどお人形さんと遊ぶ時みたいで、とっても面白いわ。でもね、こうして話をしているあたしは本当のあたしの一部分、それも、つまんないところだけなの。あたしのママだって同じことよ。こちらの世界ではママのもっと素敵な部分がママの来るのを待っているのよ」
 
「お嬢ちゃんが死んでから最初に連れて行かれたところはどんなところだったか教えてくれない?」
 
エリザペス「そうね、話してみようかしら。だけど、おばさんて面白い人ね。まるで先生みたい。だって、聞いてもわかんないくせに色んなことを聞いてみるんですもの。(クスクス笑う)小さい時に死んだ人は死んでからずいぶん長いあいだ眠るんだけど、生まれてすぐ死んだ人だとすぐにほかの身体に入って、そのまま大きくなることがあります。でもそれは滅多にないことよ。大ていの人は目が醒めると大人の人に連れられて、地上と同じ家のたくさんあるところへ行くのです。いま家があると言ったけど、本当は無いんです。でも地上の家と同じように、そこに住むことが出来るんです。そういうことは案内してくれる大人の人がちゃんと教えて下さいます」
 「つまりね、おばさん、あたしが心の中で家のことを考えるとそこに家が出来るんです。あたしたちのお友だち同士が子供に見えるのも、お互いが心の中に子供のイメージを画いているからなのです。おばさんたちだって、お互いが子供の気持になって付き合ったら、次第に子供に見えてくるはずよ」
 「それから、あたしの身体は地上の人が固いと言ってるもので出来ているのではありません。空気よりもずっと軽くてキメの細かいもので出来ています。その身体には自分が思う通りの形や色を付けることが出来ます。おばさんは気づかなかったでしょうけど、あたしは一度おばさんの心に絵を画いてみたことがあるのよ。あたしは心に思っただけで絵が画けるんです。おばさんもこちらへ来たら画き方を教わります。家を建てようと思えば心の中に家の絵を画くんです。すると、まわりにニョキニョキと家が建ち始めます。お伽話もぜんぶ本当にあることばかりよ」

 
魔法のような力

 「魔法の杖を握ったらおばあさんが少女になったり、魔法のじゅうたんに乗ればどこへでも飛んで行けたりするのも、みんな魔法のような力をもった心がそうさせるのです。人が止めようとしても止められないの。すごいんだから、その力は。でも、来たばかりの子供にはそんなことは出来ません。心の使い方がわからないからです。始めはただ地上に似たきれいな国や立派な人々や家なんかを見るだけです」
 「そのうち次第に自分の心に強い力があることを知ります。すると遊びをやめて、その力の使い方を勉強しようと思い始めます。一ばん最初に教わるのは自分の好きな場所の拵(こしら)え方です。もちろん始めは一つずつ拵えて行きます。あたしが最初に作ったのはお馬さんでした。心で考えてからしばらくすると、すぐ目の前に一頭の馬が現われたのです。その時はうれしくて、うれしくて」
 「お友だちの中にはつまんないものを拵えるのがいてね。あるお友だちなんかジャングルとプレーリー(大草原)なんかを欲しがったの。その子は頭のいい子だったからすぐに拵えることが出来たんだけど、拵えてみると薄暗くてヘビなんかがウヨウヨしてるでしょ。急にこわくなって大急ぎでホラ穴を拵えて、その中でブルブルふるえていたんですって。もちろんその穴も心で拵えたのよ」
 「結局あたしたちはこちらでも地上と同じ生活をするんだけど、ただ違うのは、家なんかが大人の方が拵えたものだということ、そして、そのうち心の使い方を教わると自分でいろんなものを拵えたり、大人の方が作ってくれた場所(環境)を作り変えたりするってことね。もちろん手や筋肉を使うのではなくて、心に絵を画いておいて、次にそれが本当にそこにあるのだと信じるの。一ばん難しいのは信じるってことね。あたしも最初は信じることを何回も練習したっけ。悪い人はこちらへ来ても悪いことばかり考えるから、いやあな場所が出来ちゃうの。子供は教わったことを信じて、そのことだけに一生けんめいになるから、いつも楽しいことばっかりよ。だけど、ただ一つだけどうしても作れないものがあるの。それはね、人間。パパややママはどんなに拵えようとしても絶対にダメ。大人の方に聞いてみたら霊魂だけは誰にも作れないんですって。そういうことを教えてくださる大人の方はみんな優しくて親切な人ばかりだから、私たち子供がびっくりしないように、いつも姿を変えて来て下さるのよ」
 
 
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