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 カラスの死骸は
なぜ見あたらないのか
矢追純一・著 雄鶏社
 
 あなたが石ころを蹴ると、宇宙の果てで何かが起こる

 「ニューエイジサイエンス」という言葉を聞いたことがおありでしょうか? これまでの古いタイプの科学とはまったくちがった発想から生まれた、新しいタイプの科学です。
 このニューエイジサイエンスは、もともとは素粒子が「無」から現れ、また「無」へかえっていってしまうというミクロの世界の科学からはじまりました。この不思議な現象を研究していくうちに、物も心もじつは同じで、目に見えないあるエネルギーが姿を変えて現れたものにすぎない、ということに気づいたのです。
 そして、「この宇宙にあるすべての物質や現象は、お互いに密接に関係しあっていて、そのうちのどんなに小さな物一つでも、それがなくなることによって、ほかのすべてのものごとに影響を与えるのだ」ということを発見したのです。
 このニューエイジサイエンスの先頭をきっている科学者たちの、面白い考え方をちょっとみてみましょう。まず、「靴のひも理論」というのがあります。
 この理論は、有名な物理学者ジェフリー・チェーという博士によってつくられた仮説ですが、一言でいえば、物質をどのように細かく分析していっても、「究極の素粒子などというものはない」ということです。
 では、いったいなにがあるのかというと、一つの素粒子が生まれてくるのに対して、別の素粒子が深く関係している。また、その素粒子が生まれたり消えたりする場合にも、そのほかの多くの素粒子が関係する……という具合に、この世に存在するすべての素粒子が、じつはお互いに影響しあって、それぞれの素粒子を生みだしているのだというのです。このことは、実験でもだいぶ前から発見されている事実です。
 なぜこれが「靴のひも理論」とよばれているかというと、ちょうどスニーカーのように、靴のひもがたくさんの穴に通されている靴を想像するとわかりやすいでしょう。靴のひもを引っぱると、ひもが通っているたくさんの穴の一つ一つつがグイッと締まります。つまり、一か所に力を加えると全体にその力が影響を及ぼしていく、ということが似ているからです。
 このことから考えて、ニューエイジサイエンスでは、この世のすべての物質やできごと(現象)は、すべてがお互いに関係しあっていて、そのどれもが切り離すことができないと考えているのです。
 つまり、いま55億近くの人間がこの地球上に住んでいますが、そのうちの、どの一人が死んでも、それが全世界の人々だけでなく、あらゆるできごとや宇宙全体のいろいろな現象にも影響を及ぼすと考えているのです。そればかりでなく、一人ひとりの行動や考えることにいたるまで、ありとあらゆるものごとが宇宙全体のどのような細かな部分にまでも影響するというのです。
 人間ばかりではありません。地面をはっているアリや、土の中にいる微生物にいたるまで、また植物や岩石のような鉱物にいたるまでも同じことがいえるのです。
 これは、いままでの古いタイプの科学とはまったくちがった、「より人間的な考え方」に近いと感じられたことでしょう。一人の人間の行動や心が、この地球上ばかりでなく宇宙全体に影響するということは、一人の人間の価値がいかに大切なものであるかということを意味しています。これは「人間の命は地球よりも重い」というヒューマニズムの考え方にも通じるのです。
 そればかりではなく、地面をはう一匹の小さな虫も、地球上の全生物とお互いに影響を及ぼしあっているということは、「どのように小さな生命も尊い」という昔からの言い伝えが正しいことを証明しているのです。
 
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