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 霊界通信
ベールの彼方の生活@
G・V・オーエン・著 近藤千雄・訳
潮文社
 
 死の自覚

 ではこれから、地上の人間がこちらへ来た時に見せる反応をいろいろ紹介してみましょう。もちろん霊的発達段階が一様ではありませんから、こちらの対応の仕方もさまざまです。ご存知の通りその多くは当分の間自分がいわゆる“死んだ人間”であることに気づきません。その理由は、ちゃんと身体をもって生きているからであり、それに、死および死後について抱いていた先入観が決して容易に棄てられるものではないからです。
 ですから、そうした人たちに対して最初にしてあげることは、ここがもう地上ではないのだということを自覚させることで、そのためにいろいろな手段を講じます。
 一つの方法は、すでに他界している親しい友人あるいは肉親の名前をあげてみることです。すると、「知っているけどもうこの世にはいません」と答えます。そこで当人を呼び寄せて対面させ、死んだ人もこうしてちゃんと生き続けていることを実証し、「だからあなたも死んだ人間なのですよ」と説得します。これが必ずしも効を奏さないのです。誤った死の観念が執拗に邪魔するのです。そこで手段を変えることになります。
 こんどは地上の住み慣れた土地へ連れて行き、あとに残してきた人々の様子を見せて、その様子が以前と違っていることを見せつけます。それでも得心しないときは、死の直前の体験の記憶を知らせ、最後の眠りについた時の様子と、その眠りから醒めた時の様子とを繋いで、その違いを認識させるようにします。
 以上の手段が全部失敗するケースが決して少なくありません。あなたの想像以上にうまく行かないものです。というのも、性格は一年一年じっくりと築き上げられたものであり、それと並行して物の考え方もその性格に泌み込んでおります。ですから、あまり性急なことをしないようにという配慮も必要です。ムリをすると却って発達を遅らせることにもなりかねません。もっとも、そんなに手こずらせる人ばかりではありません。物分かりが良くて、すぐに死んだことを自覚してくれる人も居ります。こうなると私たちの仕事もラクです。
 あるとき私たちは大きな町のある病院へ行くことになりました。そこで他の何名かの人と共にこれから他界してくる一人の女性の世話をすることになっておりました。他の人たちはそれまでずっとその女性の病床で様子を窺っていたということで、いよいよ女性が肉体を離れると同時に私たちが引き取ることになっておりました。病室を覗くと大勢の人がつめかけ、みんなまるでこれから途方もない惨事でも起きるかのような顔をしております。私たちから見るとそれが奇異に思えてならないのです。なぜかと言えば、その女性はなかなか出来た方で、ようやく長い苦難と悲しみの人生を終え、病いに冒された身体からもうすぐ解放されて光明の世界へ来ようとしていることが判るからです。
 いよいよ昏睡状態に入りました。私の仲間が“生命の糸”を切断して、そっと目醒めを促しました。すると婦人は目を開き、覗き込んでいる人の顔を見てにっこりされました。暫くは安らかで満足しきった表情で横になっておられましたが、そのうちなぜ周りにいるのが看護婦と縁故者でなくて見知らぬ人ばかりなのだろうと、怪訝に思い始めました。ここはどこかと尋ねるので有りのままを言うと、不思議さと懐かしさがこみ上げて来て、もう一度あとに残した肉親縁者を見せてほしいと言います。
 婦人にはそれが叶えられました。ベールを通して地上の病室にいる人々の姿が目に映りました。すると悲しげに首を振って「私がこうして痛みから解放されてラクになったことを知って下さればいいのに……」と歎息まじりに呟き、「あなた方から教えてあげて頂けないかしら」と言います。そこで私たちが試みたのですが、そのうちの一人だけが通じたようです。が、それも十分ではなく、そのうちその人も「幻覚だろう」と思って忘れ去りました。
 私たちはその部屋を出ました。そしてその方の体力が幾分回復してから子供の学校へ案内しました。そこにその方のお子さんがいるのです。そのお子さんと再会した時の感激的シーンはとても言葉では尽くせません。お子さんは数年前に他界し、以来ずっとその学校にいたのです。そこでは今やお子さんの方が先生格になってお母さんにいろいろと教えていました。ほほえましい光景でした。建物の中や構内を案内していろいろなものを見せてまわり、また友達を紹介しておりました。その顔は生き生きとして喜びに溢れ、お母さんも同じでした。
 それから暫くの間、私たち二人はその場を離れたのですが、戻ってみるとその母子は大きな木の下に腰かけ、母親が地上に残してきた人たちの話をすると、子供の方はその後こちらへ他界して来た人のことや、その人たちと巡り会った時の話、学校での生活のことなどを話しておりました。私たちは二人を引き離すのは辛かったのですが、遠からず再び、そして度々、きっと面会に来られるからという約束をして学校を後にしました。
 
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