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 霊的人類史は夜明けを迎える
近藤千雄著 ハート出版
 
 
 四つの思想上の特徴

 シルバーバーチによると、人間界の問題はあくまでも人間どうしで知恵を出し合って解決すべきであって、そこに霊界からの強制があってはならないというのである。シルバーバーチはよく、「あなたの理性が承服しないものは、どうぞ遠慮なく拒否なさってください」と述べている。それも同じ考えからで、それはたとえば守護霊と人間との関係についても言える。
 守護霊(英語ではガーディアン)という用語には、日本語でも「守る」という意味があるところから、この文字だけを見た人は「何でもかでも守ってくれる霊」と受けとめて、その考えで現実を振り返って、「おかしいではないか。少しも守ってくれてないではないか」と言う。が、守るといっても、母親がヨチヨチ歩きの子供を「ケガをしないように」とついてまわるのとは次元が違う。母子の関係は同じ平面上のことであるが、守護霊と人間とは“波動の原理”で結ばれており、波長が合い、守護霊の監視下にあるかぎりは心配ないが、つい邪(よこしま)な考えを抱いたり、憎しみや自己顕示欲が強くなってくると、それを機に、邪霊・悪霊といった低級霊に操られることになる。
 次に挙げられるシルバーバーチの教えの特徴は「苦労に感謝しなさい」ということである。苦労こそ魂の肥やしであるという考えのもとに、人間生活ならではのさまざまな悩みごとや難問と正面から取り組み、自分の力で解決していきなさい、と言うのである。そこには“ご利益”的な要素はみじんもない。「わたしの説く真理を信じても、それで人生の苦労がなくなるわけではありません」とまで言っている。
 たいていの宗教が「ウチの神さまを信じたら病気も悩みも苦労もすべてなくなります」と宣伝する中で、シルバーバーチはその逆を言うのである。なぜか。それは、地上という世界が魂のトレーニングセンターのようなところだからである。せっかく鍛えに来たのに、何の苦労もなく、のんびりと過ごしたのでは意味がない。シルバーバーチの霊訓が“大人の教え”と言われるゆえんはそこにある。甘ったれは許されないということである。
 次に挙げられるのは「サービスこそ宗教」という教えである。日本語でサービスというと、オマケとか待遇の良さといった安っぽい意味が感じられるが、英語のservice の本来の意味は「人のために自分を役立てること」ということである。どんなに小さい行為でもよい。人を喜ばせる行為、人のためになる行為こそ、一宗一派の教義を信じて宗教的行事に参加することより、はるかに霊的な宗教的行為であるというのである。
 最後に挙げる特徴は、“因果律”を宇宙・人生の根本原理としていることである。「自分で蒔いた種は自分で刈り取る」というのはずいぶん言い古された諺であるが、「やはり真実です」とシルバーバーチは言う。善因善果、悪因悪果、因果応報などともいうが、これに関して注目すべきことは、シルバーバーチはその因果律をただ歯車のように巡るのではなくて、“魂の向上進化”を目的としている点である。
 これはスピリチュアリズムの特徴といってよい、きわめて大切な原理である。上にあげた3つの特徴も実はみな、この“向上進化”という目的があればこそ生きてくるのであり、人生問題のすべてがそこに帰着する。たとえば善悪の問題でも、伝統的宗教の教えや古くからの生活慣習を基準にして判断するのではなく、当人の魂の向上にとってそれがプラスになるかマイナスになるかで判断すべきであるというのである。
 われわれ地上の人間は、どう長生きしたところで7、80年か、せいぜい百年程度であるが、シルバーバーチは死後3千年にわたる生活の末に、今この地球という故郷に戻ってきて、その間に学んだ宇宙の摂理と、地上生活を有意義に送るための英知をわれわれ後輩に語ってくれた。それが、こうした何でもないようで実は深い英知に裏打ちされた教えばかりなのである。それを事実上60年間も繰り返し説いてきた。しかもその間に矛盾撞着も見られなかったという事実は、まさに人類史上空前絶後というべきであろう。
 
 
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