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 輸入食品に日本は潰される
山田正彦・著  青萠堂
 
 アメリカに頼っていて
 本当に日本の食料は安心か


 日本は少ない人口なのに世界の食料を食べ尽くしている。
 世界人口の2%しかない日本が、世界の農産物輸入の11%(金額ベース)を輸入している。1位EU18%、2位アメリカ14%についで世界第3位の食料輸入国である。ちなみにEUは日本の人口の3倍、アメリカは2倍以上もいるのだ。
 しかも農産物輸入に比べてその輸出はたいへん少なく、輸入額から輸出額を差し引いた純輸入額をみると、1984年以降ずっと世界第1位の純輸入国となっている。
 1999年には純輸入額が336億ドル(4兆2千億円)であり、2位ドイツ134億ドル、3位イギリス127億ドルを大きく引き離している。
 逆に輸出額のほうが多い純輸出国は、オランダ、フランス、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチン、アメリカなどとなっている。
 日本の農産物輸入の相手国としては、アメリカが38%と断然多い。2位は中国12%である。1990年にオーストラリアを抜いて上がってきたのだ。この10年の間に全輸入額も299億ドルから369億ドルへと増大しており、中国からの輸入農産物の伸びはたいへん大きい。他の輸入相手国は、オーストラリア、カナダ、タイと続き、この上位5カ国で70%近くを占めている。
 代表的な農産物別に見ると、小麦(世界の輸入額の7%)、とうもろこし(同23%)、肉類(同28%)について、日本が世界で最も輸入額が多い。
 そして、その輸入相手国は、いずれもアメリカがトップである。

 このように食料輸入はほぼアメリカ一辺倒といっていいほどである。本来なら日本は買い手であり、売り手のアメリカにクレームをつけることができるのに、逆に「買わせていただきます」といった感じである。

 
アメリカを信頼している日本は
 自給率が大幅に低下


 アメリカをはじめとした少数の特定の国に依存度が高いこのような構造は、国際需給の変動や輸入相手国の輸出政策の影響を受けやすい、もろい体質を持っている。
 1973年に、アメリカは一時的ではあれ大豆の禁輸をしたことがあった。そのために飼料価格が暴騰したが、そのようなことがいつ起こるかわからないのである。
 この1973年の出来事は、今調べてみると、ソ連(ロシア)が食肉の需要を満たすために、大量の穀物の買い付けに走り、アメリカは自国の穀物が不足して高騰するのをおそれて、穀物の輸出を規制したのである。それだけの理由だった。イラク戦争のいきさつを見ても、アメリカがいかに自国利益第一主義かがよくわかる。
 アメリカにとっては、わずか2カ月間の大豆輸出規制だったが、世界の穀物相場は、一気に4〜5倍に高騰した。当時イギリスは食料自給率50%を切り、ドイツは65%、フランスはかろうじて100%を維持していたが、ヨーロッパ各国は、食料が現実に輸入できなくなることを知り、愕然とした。
 その時から各国は穀物の自給をめざして動き出したのだ。それ以来、EU各国は農家の育成・保護に力を入れ、EU予算の半分をつぎ込んで、食料自給率の達成に努力してきたのだ。ひとえにアメリカが信用できないからであるといえる。
 その結果、2000年にイギリスはカロリーベースで食料自給率74%、ドイツは96%、フランスは132%になった。データがとれる先進国の食料自給率を調べると、イタリアを除くすべての国が自給率を上げており、イタリアは6ポイント下落したが73%となっている。そのなかで日本だけは、1970年の60%から2000年に40%と、20ポイントも下がっている。先進国のなかで最も低く、しかも一貫して低下し続けている。
 いざ食糧危機のときに重要になってくる主要食糧の「穀物自給率」に至っては、日本は28%であり、ドイツもイギリスも、すでにこの20年間で100%を達成している。

 
いざ食糧危機になったとしたら
 日本はパニックに


 2003年、オーストラリアは大干ばつで、あれだけの食料輸出国が輸入国に転落した。この年、日本の冷夏、ヨーロッパの猛暑、中国の大洪水と、異常気象はさらに続いている。いつ最大の食料輸出国アメリカが、輸出禁止せざるを得ないような状況に陥らないとも限らない。そうなったときに、アメリカに食料を依存している日本はどうなるだろうか。ブッシュ大統領は「食料を自給できない国は国でない」と語っているのだ。
 おそらく、アメリが輸出を禁止するらしいと情報が飛び交うだけで、小麦粉は暴騰して、すぐにパニックになり、スーパーに並んでも買えなくなるのではないだろうか。実際に、小麦、大豆、とうもろこしの輸入が止まったら、国家備蓄も少ないことから、すぐに酪農、畜産が大打撃を受けて、飼料は配給制になり、鶏卵搾乳は飼料の配給が優先されるものの、豚や肉牛は屠場に運ぶしかなくなるだろう。
 そうなればパン、菓子、豆腐、肉類はスーパーから姿を消し、レストラン、ハンバーガーの店も開店休業に陥ることになる。
 このように考えれば、消費者にとっても、食料、穀物の自給率はたいへんな問題であることは理解していただけると思う。そしてさらに、ヨーロッパ各国がなぜ穀物自給率の100%達成に、なりふりかまわず取り組んできたかもわかろうというものである。

なわ・ふみひとのひとくち解説(2017年記)
 
トランプ大統領の誕生によってアメリカは保護主義へと舵を切りました。これからは食料と石油が戦略物資として強力な武器になる世界が訪れるということでしょう。そのような政策を進めることができるのは食料大国アメリカです。
 一方日本は、この本の著者が憂えているように、戦勝国アメリカによって戦後は世界最大の食料輸入国へと誘導されてきました。また、石油をはじめとするエネルギーはもともと世界最大の輸入国でしたが、いまや国内の原子力発電所も大半が休眠状態ということで、中東で大きな問題が起きれば前回以上の石油パニックが訪れることになるでしょう。尖閣諸島をめぐる中国との小競り合い(武力衝突)という形でシーレーンが閉ざされても同じ事態が発生します。
 このように、食料とエネルギーをうまく使えば、いまやアメリカや中国が日本の息の根を止めるのは簡単なのです。――ということで、「これからは食料が戦略物資(武器)になる状況が訪れる」ということを記憶にとどめておいてください。トランプ大統領の就任中にその事態は必ず訪れるはずです。心の準備をしておきましょう。
 
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