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 乱れた日本の国語
中條高徳
『致知』2008年11月号「巻頭の言葉」
 
 恥の文化の崩壊

 我が国はその昔より「言霊の幸ふ国」と言われてきた。言葉の表現に細やかな優しい気配りをして磨いてきた国であった。
  大陸から学んだ漢字に平仮名や片仮名を創り出して表現を豊かにしてきた。千年前の『源氏物語』を読んでも、先人たちの言葉の見事な表現にうなる。
 673年前、戦敗れマッカーサーが厚木に上陸するや、「修身・歴史・地理」は教えてはならないと宣言。表看板は「ザ・ウォーギルト・インフォメーション計画」と掲げたものの、6年8か月の占領期間は、この国を民主化するとの名の下に、我が国の歴史の否定に終始した。国家を潰すに武力はいらない、その国の歴史を消せばいい、との説さえある近現代にあって、まさに実験台の趣があり、見事といってよいほどの徹底さであった。
  (中略)
 人類最初の原爆の洗礼、東京大空襲を始めとする諸都市の猛爆、沖縄戦など、我が国有史以来の数々の惨憺たる体験をした国民は虚脱状態だっただけに、巧妙を極めた占領政策は見事なほどに滲み込んでいった。そして他国に類を見ないほどの縦軸・横幅で織り成し、築いてきた「恥の文化」は音をたてて崩れていった。
 民族の誇りでもあった「絆」は切断され、極端をいえば戦前の全てが悪とさえ捉える輩が急増した。

 
言語の乱れは心の乱れにつながる

 文化庁が実施した平成十九年度「国語に関する世論調査」の結果が発表になった。
 「国語は乱れていると思うか」の質問に、8割近くの人が「乱れている」と答えている。
 動物の叫びかと感ずるような若者言葉や、敬語、謙譲語の乱れなど、国語力全体が著しく低下していると感ずる国民が極めて多いことがこの調査で窺える。
 国語の習得は古来、学ぶこと、習うことが基本とされている。しかしこの調査では、子供たちの学習のモデルは86%テレビという結果になっている。とりわけ大さわぎ娯楽番組の罪が大きい。それに国会議員や知事らが出演しているのはいかがなものか。
 言語は心の表象ともいわれる。逆もまた真なり。言語の乱れは心の乱れにつながる。
 世のりーダーでもある経営者たちの最近の言動に卑しい発言が多くなったのも、筆者にとって大きな気掛りである。最高学府に学んだホリエモンこと堀江貴文氏の「投資家にとって邪道かどうか関係ない。ずるいと言われようが合法だったら許される」「誤解を恐れずに言えば、人の心はお金で買える。女は金についてくる」との発言などはあまりに卑しい。この類の発言が昨今のリーダーたちに多く散見されるのは、由々しい問題である。
 「人間学」を疎かにし、知識の集積のみに走った、つまり「時務学」のみに走った哀れな結末に他ならない。

★なわ・ふみひとのコメント★
 著者が嘆いているように、「言葉の乱れは心の乱れ」ということを痛感させられる昨今の日本の状況です。
「鶏が先か卵が先か」ということですが、「心」が五感ではつかみにくいものである以上、まずは「言葉」を正すことが身魂磨きのスタートとなるでしょう。私たちは今日の日本の哀れな現実を直視しつつも、ただ世を嘆いているのではなく、まず自ら正しい言葉を使っていくことから始めたいものです。そのことが、先人たちが長年にわたって大切に育ててきたこの国の遺産を守ることになると確信しています。
 
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