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「大恐慌」以後の世界
浜田和幸・著  光文社
 
 地球規模で広がりつつある食糧不足

 近年、世界の穀物生産量は減少傾向を見せている。
 これは、異常気象、農薬・化学肥料の大量投与、土壌汚染、病原菌等の複合的原因で各国の穀物生産量が低下した結果である。アメリカですら穀物の戦略的備蓄は、1999年から2000年の時点において115日分あったが、いまでは半分の53日分しかないとされる。これは過去47年間の最低水準。穀物需要に対する供給が追いつかないという需給ギャップが、2007年から8年も連続するという由々しい状態に陥っているわけだ。
 そんななかで、金融危機が進行していけばどうなるだろうか?
 バブルを引き起こしたマネーが、実質的にもっとも価値がある食糧に向かうのは間違いないだろう。とすれば今後、世界規模で食糧の争奪戦が起こる可能性がある。
 アメリカ農務省によれば、世界各国の穀物供給能力は今後も減少を続け、記録的な食糧不足の状況が想定されるという。過去100年以上にわたって、戦争以外の理由でこれほど穀物の供給が低下したことはなかった。
 要するに、世界の人口が増え続け、食糧に対する需要が増大し続けているにもかかわらず、穀物生産能力が追いつかない状況が生じているのである。
 言うまでもなく、食糧に対する需要は、人口爆発が続く中国、インドを筆頭に急激な増大傾向を見せている。現在、世界の人口は67億人だが、今世紀末には100億人を突破するのは確実と予測される。言い換えれば、4〜5年ごとにアメリカと同じだけの人口が加わるということである。
 このような膨張を続ける人口を養っていくには、食糧は言うに及ばず、エネルギー源の確保も欠かせない。
 日本は食糧の60%以上を海外からの輸入に依存しているが、その半分はアメリカである。とくにトウモロコシはほぼ全面的にアメリカに頼っている。そのトウモロコシを、アメリカは外国に輸出しないようにする可能性も出てきた。バイオエタノール燃料の原料として使うようになったからである。
 今後、わが国は、かつてない不況に見舞われるとともに、食糧とエネルギー不足にも陥る可能性が高いのだ。
 金融危機により内向きになったアメリカが、最後の戦略物資として食糧とエネルギーを囲い込めば、世界はよりいっそうの混乱を迎えるのは間違いないだろう。

 
食糧高騰による危機的時代は10年続く

 中でも顕在化してきたのは、世界的な米不足である。現在、世界の米の備蓄量は、1980年代以降最低水準にまで落ち込んでいる。
 そこで懸念されるのが、発展途上国の社会不安である。世界銀行の調査によれば、メキシコからイエメンまで世界33カ国で、食糧やエネルギー価格の高騰を引き金とする社会不安が発生している。
 中国の農村部におけるデモや騒乱事件はいまも相次いでいる。中国の治安は日ごとに悪化している。日本は、そのような中国から国内需要の20%近い食糧を輸入している「食糧輸入国」であることを、もっと認識する必要がある。
 はたして私たちのこの世界はどこに向かっているのだろうか?
 このままいけば、ウォール街崩壊による金融危機が実体経済にも及び、誰もが口にしたくない世界恐慌に陥るのは時間の問題である。
 となれば、景気後退の波はアメリカからヨーロッパ、中国、日本、インド、ロシアにまで及び、世界中で失業者があふれるだろう。各国政府は国民の不安を鎮めるため、保護主義を強め、自由貿易は後退してしまう。世界は食糧やエネルギーをめぐって対立を深めていくことになる。食糧暴動は日常化し、世界中で紛争が起こるだろう。

 
日本は「食糧パニック」にもっとも無防備

 こうした食糧とエネルギー危機にもっとも弱いのが、わが国である。実際現在のわが国は1950年代以降、もっとも深刻な食糧危機に直面している。
 にもかかわらず、大方の日本人は日々の食生活で、そのような危機感を味わうことなく大量の食料をムダにしている。そのノーテンキぶりに世界があきれているようだ。
 国民が生きていくために欠かせない食料の60%以上を外国に頼っている日本。万が一、海外の産地が天候不順に見舞われたり、紛争や戦争に巻き込まれた場合の対応はできているのか。輸入が止まれば、日本人は間違いなく飢えに直面する。
 世界人口の2%に過ぎない日本が、世界の農産物の11%を輸入し、水産物に至っては23%を買い漁ってきた。この食糧市場に、中国やインドという巨大な胃袋を持つ龍や象が参戦してきた衝撃がどの程度のものになるのか。けっして安穏としていられないはずである。
 迫りくる大恐慌の次に世界を襲うのは「食糧パニック」とみて間違いない。

★なわ・ふみひとのコメント★
  わが国がこれから間違いなく体験することになると思われるのが食糧危機です。国内の食糧生産量では国民の胃袋を半分も満たすことができない状態にあるわけですから、それは避けられません。そのことがわかっていても、日本の農業の衰退にブレーキをかけることさえできないのが実情です。この本の著者・浜田氏は、深刻な食糧危機が「大恐慌」以後に訪れると予測していますが、私も全く同感です。
 「では、大恐慌はいつ訪れるのか」と思っておられる方も多いでしょう。そのヒントは、1989年に日本経済のバブルが崩壊したあと2〜3年目から始まったデフレ不況を思い出していただけばわかると思います。バブルの崩壊によって日本経済は深刻なダメージを受け、その後は長い間デフレ不況に見舞われました。いま復活した自民党の安倍政権によって「アベノミクス」という名で文字通り第二のバブル経済が演出されようとしています。円安と株高が同時に実現し、経済は活況を呈するように仕組まれているのがわかります。このあとに来るのはハイパーインフレと国家財政破綻ということになると予測する識者の意見が主流のようです。
 そういう意味では、今後の日本経済というより世界経済のバブル化の動きには大いに注意しておく必要があります。この本の著者が述べているように、もう一度バブルの崩壊を経験すれば、この国はついに財政破綻に陥り、多くの国民は窮乏の極みとなり、食糧危機にあえぐ事態を迎えることになると思うからです。それが文字通り終末の大峠へと続く一本道になると考えられます。
 しかしながら、そのような深刻な危機が訪れることがわかったとしても、もはやこの国の政府が国民のために対策を講じてくれることは考えられません。国民は自衛するしかないというのが現実です。そういう意味では「美食」「飽食」の習慣を改め、「米のひと粒でも大切にする」という日本人本来の生き方に立ち返ることが大切です。食糧危機は、私たちに食べ物に対する感謝の気持ちを取り戻させる機会になることでしょう。
 
 
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