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 「道」を忘れた日本人
松本道弘・著  日本文芸社
 
 
 真珠湾攻撃はルーズベルトの陰謀だった

 卵が卵であることは事実(fact)である。科学者はそれには満足せず、その卵が鶏の卵か、ワニの卵か、その隠れた真実(truth)を知ろうとする。
 科学者でなくてもよい。凡人であっても、その卵がゆで卵であるか、あるいは、人間が口にできるにふさわしい卵であるかといった程度の疑問は持つはずである。
「事実」から離れ、「真実」に迫るには、その卵の殼を破らねばならない。そう、そのような思い切った知的発見がディベートという手段であり、過程である。
 不思議なことに、神は観察しうる事実を甘受する(本来、それは悪魔のやることだが)が、隠された真実を求め、忍び込もうとするのは、不思議に悪魔のほうである。洗礼を受けたものに対して、聖餐式にパンとぶどう酒を与えるのは神だが、その信仰に揺るぎがあるかどうかを冷ややかに観察し、検証し、尋問するのは、悪魔という闇の司祭者である。
 一神教のアメリカ人は、そして素直な日本人(=アリ)の多くは、真珠湾攻撃をしたという事実をそのまま受け止め、日本人を卑劣な民族だと信じ込んでいる。
 だが、真実は、日本がルーズベルトの陰謀により真珠湾の攻撃に追い込まれたのである。
 フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、より魅力あるヨーロッパの戦争に裏口から入りたいがために、日本を挑発し、真珠湾へ追い込み、その最初の一撃を事実として、議会を説得させ、日本と一戦を交える大義名分を得るという卑劣な戦略をとったのである。
 日本を憤怒させ、窮鼠にさせるのは明らかに罠であったのだが、用心深いドイツはそれにかかわらず、素直な日本人だけが嵌(は)められたのである。これが真実である。
 ルーズベルトの挑発行為は次のように残酷なものだ。

1.アメリカにおける日本の資産の凍結。

2.パナマ運河の封鎖。

3.アメリカの対日禁輸。

4.日本大使に対する脅しの勧告。「太平洋政策をやめよ。さもないと、軍事的に……」

5.11月26日(真珠湾攻撃の11日前)、最後通牒が渡される。「中国、インドネシアから軍を引き、ドイツ・イタリアとの同盟を反古にせよ。さもなくば……」


 白人たちに対し、北米インディアンをこれ以上殺さず、彼らの領域から撤退し、バッファローに対し無益な殺生をするな。もしも、ただちにこれらを実行しなければ、日本軍は、アメリカを攻撃するぞ、と脅せば、彼らは、命をかけて闘っただろう。占領したインディアンの領域は彼らにとり既得権であるから、防衛戦争のため、という大義名分は立つ。
 アメリカが、日本に対して渡したハル・ノート(国際長官コーデル・ハルが、41年11月26日、野村吉三郎大使に手渡した最後通牒)は、それ以上に理不尽でかつ非人道的な“脅し”であった、と筆者はみる。ハル長官を悪魔の回し者にしたルーズベルト大統領は、まさに白髪鬼であった。

「ルーズベルトの陰謀」を暴いたのは日本人ではなく米国人

 不思議なことに、「これは裏切り行為である」と怒りを表現したのは、日本人(アリ)ではなく、米国人(ハチ)であった。スピーチはできるがディベートのできない国民(アリ)と、スピーチよりもディベートを好む国民(ハチ)の差がここで歴然とする。
 極東裁判が無効だと言って、ディベーターのようにネチネチと最後まで反論をしたのも、パール判事という、インドの蜂である。(中略)
 11名のドイツの軍事リーダーが処刑されたニュールンペルグの軍事裁判に関し、ロバート・タフト上院議員の次の言葉には、蟻たちは賞賛を送った。

「絞首台で処せられる11名は侵略戦争の罪を犯した犯罪人である。彼らが有罪であるのは戦争に負けたからである。この理論によれば、もし日独伊枢軸国が勝っていたら、ルーズベルト大統領は処刑されていたことになる」(『此れこそ真珠湾攻撃の真実だ』)

 ひと言で言えば、日独伊の三国同盟軍が勝っていれば、ルーズペルトは処刑されていただろうという、極めて論理的な見解である。そこには正か邪かといった道徳的な価値判断は存在せず、アメリカ好みのプラグマチズム(勝者が裁かなければ、誰が裁くのか)が湿っぽい「情」を乾かせている。
 この「負けたから有罪だ」と勇気ある発言をしたのも白人(ハチ)である。熱烈な反共主義者ハミルトン・フィッシュも蜂である。彼は、『ルーズベルト――コインの裏側』で、次のような強力な針を用いて、ルーズベルトの陰謀を暴いた。

 
ルーズベルトは、議会を無視してアメリカの外交政策をほぽ牛耳っていた。彼は傲慢だった上に権勢欲に取り付かれていたので、最後通牒を発して、アメリカ合衆国を不必要で、避けることの出来た戦争に引きずり込んだのだ。以来、大統領の権限が無制限になり、海外での紛争に我が国の軍隊を勝手に派兵するようになったのは、周知の通りである。
 外交委員会のメンバーだった私でさえ、日本を侮辱するような最後通牒が送られていたなどとは全く知らなかったのだ。否、私を含む全てのアメリカ人は、ルーズベルト大統領と声を合わせて、日本軍による真珠湾攻撃を「汚辱の日」として弾劾した。アメリカ人誰もが、奇襲という卑怯な攻撃に激昂したのである。大統領の「汚辱の日」の名演説は党派を越えて心の底から支持された。――我々は、ルーズベルトが計画的に我々を欺いて戦争に導いたなどとは、疑いもしなかった。そのあたりの事情を、私と同期で議会に奉職し、後年アイゼンハワー大統領によりイタリア大使に任命されたクレア・ブース・ルースは、ルーズベルトが「裏口からドイツとの戦争を仕組んだ」と表現していた。
 (ハル・ゴールド「誰が対日『最後通牒』を仕掛けたのか」=「諸君!」1991年8月号)


★なわ・ふみひとのコメント★
 既に当コーナーで何度もご紹介してきた内容です。「日本が宣戦布告なしに真珠湾を攻撃する」というシナリオを作ったのが、ルーズベルト大統領という一個人でないことはすぐわかることです。そのためには軍の中枢をも巻き込んだ綿密な計画が必要だからです。たとえば、当日は空母や新型の戦艦などは、襲撃を受けるハワイの基地から離れた別の場所に移動させておく必要がありました。また、日本の船団がハワイに近づいていることが、なぜかアメリカのレーダーに発見されないという不思議な状況を作る必要がありました。このような“偶然”は大統領一人では作ることはできません。
 つまり、ルーズベルト自身は、「卑怯な日本に憤り、参戦しないという選挙公約を破って日本やドイツ、イタリアとの戦争に踏み切った大統領」という役回りを演じさせられただけなのです。それを裏で操った勢力こそが、今日の世界を支配している「超国家権力」なのです。ルーズベルトが単なる操り人形でしかなかったという事実を証明した書籍も私の本棚にあります。何らかの形でその内容もご紹介したいと思っています。
 
 
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