●34メートル津波で死者32万?

 きたるべき巨大地震の悪夢……。
 目前に迫っているのが首都直下型地震だ。
 それだけではない。地震研究者が、それ以上に恐れている地震がある。
 それが、南海トラフ地震だ。東は駿河湾から西は九州南端まで約1,000キロ、水深約 4,000メートルのトラフ(海溝)。日本列島が乗る大陸プレート(岩盤)の下にフィリピン海プレートが沈み込む。それが一瞬で裂ける。
 それを海溝型地震という。すると悪夢ともいうべき超弩級の地震が発生する。
 1960年のチリ地震では沖合の海溝が1,300キロにわたって動いた。2011年東日本大震災は約500キロ。だから、いつ起きてもおかしくはない。
 2012年8月29日、政府(内閣府)は衝撃発表を行った。
 「南海トラフで、マグニチュード(M)9・1級の超巨大地震が発生する可能性がある」
 「その場合、30都府県で被害が発生する」「震度7で238万棟が全壊・焼失」「死者は最大32万3,000人」
 これら被害想定は内閣府・中央防災会議の有識者による作業部会が公表した。
 「犠牲者の7割は津波による」という。
 「津波で堤防や水門が破壊された場合、死者はさらに2万3,000人増える可能性がある」
  そんなものですむのか?
  内閣府は、南海トラフ地震について2003年にも被害予測をしている。そのときは死者数2万4,700人。それが、今回、いっきょに13倍になった。
 それは3・11の教訓から「考えうる最大級の地震を想定した」ためという。
 死者32万人……。
 この数字にだれもが絶句する。しかし、この数字にすら過小見積もり“操作”があった。

●本当の被害者は350万人!

 「南海トラフ巨大地震 本当の被害者は350万人!・」
 衝撃タイトルが躍る。
  さらに「――大阪・名古屋の巨大都市が消えてなくなる」。ただ驚愕というしかない。 これは『週刊現代』(2012/9/15)の特集記事。死者350万人といえば、第二次大戦の犠牲者に匹敵する。
 あなたの頭の中は真っ白になるだろう。呆然自失……思考停止。もはや、理解を超えている。しかし、これは研究者の厳密な推計から導かれたものだ。
 この見出しと、政府(内閣府)発表記事をくらべてほしい。
 同誌は、政府予測を「残念ながら想定が甘すぎる」と切って捨てる。
 「本当の被害は政府発表の10倍超」「平野部の大都会は津波で一気に破壊される」「東海道新幹線、東名高速は崩壊、中部国際空港は水没」「浜岡原発は完全アウト」……。
想像を超える悪夢が連続する。最期に「そのとき、生き残る道は……」と問いかける。

●34・4メートル津波が2分で襲う

 そして「最悪の場合は350万人が犠牲になる」という。
 その理由として――「避難訓練が十分でない」「人口密度が高い自治体が多い」「家屋倒壊・火事など被害者が少なく見積もられている」ことなどをあげる。
 死者がケタ外れに増える最大の理由は、巨大津波の「高さ」と「速さ」だ。
 高知県黒潮町を襲う津波は34・4メートルという。それが、地震発生からわずか2分で到達する。町民全員が瞬時に津波に呑まれる。生存者はゼロだろう。
 30メートルを超える津波。一言ではピンとこない。
 たとえば東京新宿の伊勢丹本館ビルの高さが30メートル。
 交差点の向かいから見上げる。聳える高さにただ、ゾッとする。これほどの津波が襲ってくる――まさに海の壁だ。想像するとめまいがする。こんな高さの巨大津波が太平洋岸を襲うのだ。それも地震発生から数分で……!

●九州、四国、東海、太平洋岸壊滅

 だれもが息を呑んだ。南海トラフ地震で発生する津波の余りの高さだ。
 最悪30メートル超の巨大津波。それが沿岸都市に次々に襲いかかる。
 イメージしてほしい。これだけの高さの大津波が海岸都市や工業地帯、コンビナート、港湾、漁港、住宅地、観光地を襲う光景を……。
 それも地震発生からわずか数分で津波は到来する。避難のいとまなどない!
 津波の最高が前出、高知県黒潮町だ。
 34・4メートル……。新宿伊勢丹ビル屋上を4メートルも上回る。もはや、想像することもできない。白日夢である。しかし、我々は、その光景を直視したではないか。東日本大震災で津波を目前に体験した人は一様に語る。「……夢のようだった」。「とても現実とは思えなかった」。
 高知県だけでなく四国全域の太平洋岸一帯は全滅だろう。愛媛県も20メートル超に直撃される。伊方町は21メートル。忘れてはいけない! ここには伊方原発がある。原子炉は完全に水没、破壊で爆発は確実だろう。その放射能汚染は西日本全域を地獄にする。大分、宮崎、鹿児島の沿岸部も13〜17メートル津波で壊滅する。瀬戸内海は内海なのに山口、広島、岡山も沿岸は4、5メートルの津波が襲う。紀伊半島の太平洋岸一帯も壊滅。そして、名古屋から東京間は太平洋ベルト地帯と呼ばれ、まさに日本の生命線だ。人口密集も半端ではない。
 その生命線が20〜30メートルもの超巨大津波に直撃される。全壊、全滅必至だ。
 愛知県は、なんと22メートル高の津波が襲来する。大都市名古屋も20メートル級に襲われる。名古屋市だけで人口221万人。どれだけの人が津波に呑まれるか。むろん、名古屋の人にとって、そのような光景は、まったく想定外だろう。

●「太平洋ベルト地帯」壊滅

「被害総額。最大1,000兆円!・」
『夕刊フジ』(2012/8/31)のショッキングな大見出しだ。
「新たな『想定』に列島衝撃」「経済拠点中心GDPの約2倍」(同紙)
 これは南海トラフの被害総額でも最大級といえる。あまりに数字が大きすぎる。だれもピンとこない。
「経済損失は専門家の間には、1,000兆円にのぼるとの見方も浮上している。経済拠点が集中する太平洋岸が壊滅的被害を受けると、日本は文字通り沈没してしまうのか」(同紙)
 南海トラフ地震と津波で経済損失が天文学的になる。その理由は、「太平洋ベルト地帯」に被害が集中するからだ。この全域での工業出荷額は日本全体の3分の2を占める。
 つまり巨大地震と20メートル級津波直撃で日本の工業生産の7割近くが失われる。さらにベルト地帯には東海道新幹線、東名高速などの大動脈が走っている。
 地震と津波で、これらが寸断される。すると、日本経済は致命傷を負う。
 被害は日本列島全体におよぶ。部品供給網が断たれる。そして、それは長期化する。
 新想定の作成に携わった関西大学、河田恵昭教授も、こう断言する。
「最低でも270兆円の経済的な被害が見込まれる。おおまかだが、300兆円から900兆円とみるべきだ」(同紙)。やはり、最大1,000兆円に近い。
 日本の実質GDP(国内総生産)は511.5兆円(2011年)。900〜1,000兆円規模といえば、年間GDPの約2倍という驚天動地の損害だ。
 日本ははたして立ち直れるのか?・

●米軍、死者2,000万人を想定

 南海トラフが一瞬ではじける。九州、四国、紀伊半島、東海地方の沿岸を20〜30メートルの巨大津波が瞬時に襲う。多くの人口は港湾部、沿岸部に集中している。
 地震発生から数分、避難は絶望的だ。人々はなすすべもなく30メートル前後の怒濤に呑まれる。
 最初の一撃で、太平洋岸一帯は全滅する。死者は350万人ですむだろうか?
 アメリカ軍部(ペンタゴン)も南海トラフ巨大地震の極秘シミュレーションを行っている。その犠牲者予測を知って仰天した。なんと、米国は2,000万人の死者を予想……!
 南海トラフ地震がM9クラスとはいえ、それだけ死ぬものか?

●原発爆発で日本は消滅する

 某外交評論家が、じっさいペンタゴン内で行われている南海トラフ“救出シミュレーション”を目撃している。
 彼らは原発事故の犠牲者も想定しているのだ。
 南海トラフが1,000キロにわたってはじける。すると浜岡、伊方原発は20〜30メートルもの津波の直撃を受ける。次々に爆発するだろう。
 南海トラフによる惨劇は、地震、津波、原発とトリプル災害で襲ってくる。
 しかし、内閣府の被害想定、報告書には原発のゲの字もない。
 またもや不都合な真実にフタである。ペンタゴンは日本“救出”の「新トモダチ作戦」も立てている。南海トラフ地震による原発の複数爆発で日本列島が放射能汚染される。第7艦隊は風上となる九州から上陸する。風は大陸から太平洋に向けて吹いている。米軍兵士たちが放射能にさらされる危険も少ない。こうして、大量のアメリカ軍が“救援”のために日本に上陸する。これは言い方を変えれば日本再占領である。津波や放射能汚染で2,000万人を失った日本は、こうして米軍の管轄下となる。完全な属国化の完了である。
 51番目の州にもなれずプエルトリコのように自治領(準)として細々と生きることになるかもしれない。300〜400兆円と言われるアメリカに貸付けた金(米国債)も、当然、踏み倒されるだろう。
 これは悪夢のシナリオである。聞きたくない。知りたくない。耳をふさぐだけだ。しかし、あらゆる情報が集まる米軍部が想定した訓練シナリオなのだ。
 死者想定32万人という政府発表が子供だましに思えてくる。
 
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