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バスの中で

大阪府池田市  江端 良枝  
  
  梅田から守口行きのバスに乗った。
  しまった! 男子高校生がいっぱい乗っている、
  と思った瞬間、さっと一番後ろの席の二人が立ってくれた。
 「ありがとう」
  助かった。けれど、降りるとき、この大勢の中かき分けて前までいけるかしら。
  いよいよあと二つ目のバス停で降りるので、少し早めにと思って立ち上がった。
  すると真ん中あたりから大きな声がした。
  と同時に、通路の真ん中からバタ、バタと、みんな両側の窓の方へ体を傾けて、中央に一本の道を作ってくれた。
  その鮮やかなこと!
  白シャツの高校生たちは野球帰りのようだった。
 「ありがとう、ありがとう、ありがとう」とお礼を言いながら、楽に運転席の横に着いた。
  もう一度みなさんの方に向かって最敬礼をして、「ありがとうございました」と言ってバスを降りた。
  いまどき身なりの悪い不良のような高校生もたくさんいる。けれど、こんなに統一のとれたさわやかな高校生もいるんだなあと、頼もしく思った。
  友の家に着いた。晴れやかな私の顔を見て、「何かいいことあったの?」
 「はーい、いいことあってんよ!」

 
池田市働く婦人の家・エッセイグループ作品集』(平成16年度)より