「アッ!」
帽子が飛んだ! 青い帽子が突風にあおられて、みるみる通行人のすき間を縫って、転げてゆく。みんな手を出すものの、キャッチできない。
そのとき。ポコ、ポコ、ポコ、ポコ‥‥。なんと、タンクトップに超ミニ、十五センチはあろうかと思われる厚底サンダルを履いた女の子が、長い茶髪をなびかせて、その帽子を追いかけた。
「取った!」
車道に出る寸前だった。
そしてまた、ポコ、ポコ、ポコ、ポコ。前よりももっと速く走り、腰の曲がった小さなおばあさんの頭に、それを何事もなかったかのようにのせ、歩き始めた。
その後ろ姿に「ありがとう」。つい、独り言が出た。
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