[戻る]

 

ぼくもおまわりさんになる

兵庫県加古川市  津田光子(42歳)
  
  子どもが小学五年の時、学校の帰り友人と二人で、高価なおもちゃが川の中に落ちているのを見つけました。どうしようかと迷ったあげく、近くの交番に届けました。ちょうど留守だったので、30分くらい待ったら、おまわりさんが帰ってきて、やさしくほめてくれた上に、自分のサイフからジュースを買って二人に飲ませてくれました。
  夜になって家に電話があり、
  「子どもさんは良いことをしたのでほめてやってください」
  と言ってきました。
  その時から“自分も大人になったら親切なおまわりさんになる”と心に決め、中学に入ると柔道部で体をきたえ、今年高校に入りました。今、また進路決定の時、大学は法学部を選ぶようです。希望はあくまでも派出所のおまわりさんです。
  子どもの人生まで決めてしまう、やさしい親切なおまわりさんに出会えたことは、この子にとってどんなに幸せなことだったでしょう。
 
『涙が出るほどいい話』(河出書房新社・刊)より