思考形態

 あなたの思考すべてに――霊界でも物質界でも――かたちがある。訓練された霊能者なら、そのかたちを見てとることができる。思考の強度によって、重さ、力、形態が変わってくる。心の中をさっとかすめていくような思考は、かたちを長くとどめない。だが、強い思考、繰り返しされる思考は、色と音をともなった強力なかたちをつくり上げる。このかたちは私たちについて回り、人生に影響を与える。たとえば、燃えるタバコの灰がコートの上に落ちても、すぐに払いのければコートに穴は開かない。だがそのままにしておけば、そのまま燃え続け、穴を開けてしまうことになる。思考もこれと同じだ。ひとつの思考を長く持てば持つほど、その強度は増していく。思考は火と同じように、ある程度そのまま放っておかない限り、影響力は低い。長く保持された思考は、強いパターンを生み出し、私たちのオーラを形成する(オーラとは、色のついた雲のような物質で――私たちの思考、感情、情熱によって生み出される――私たちのからだを取り巻いている。この敏感な大気は、感情や思考の変化にすぐさま反応し、感情の変化によって、オーラの色も変わる)。
 思考はそれぞれ違ったかたちで反響する。強い嫉妬心は、それを抱く人のオーラに、茶色がかった緑というくすんだ色を生み出す。こういう思考を抱えていると、善良な思考があなたに向けられても、その否定的な思考がすべてはねかえしてしまうのだ。愛情深い思考は、黄色がかった色を生み出し、そのほかの前向きな思考を引きつけやすいようにしてくれる。
 たとえば、あなたがだれかのことを強く憎んでいるとする。あなたはその人に、幾度となく軽蔑心を抱く。この軽蔑心は、不快な形態をとり、オーラを怒りの赤色に染める。もしあなたがその怒りを長いあいだ抱いているようだと、愛情深い人間はだれひとりとしてあなたに近づこうとしないだろう。
 憂鬱な、否定的な人間と一緒にいると、こちらまで滅入ってしまうという経験は、霊能者でなくともあるはずだ。どうしてそうなるのかと言えば、あなたまで彼らのオーラに染まり、カメレオンのように、否応なく彼らのバイブレーションを吸収してしまうからだ。
 そういった否定的なパターンを打ち破ることのできる唯一の道具は、あなたの意志の力だ。憎しみを、愛や寛大さに置き換えなければならない。もしそれができないようなら、あなたの心がいずれバランスを欠くことになるかもしれない。いずれにせよ、その場合あなたは間違いなく不幸になる。間違った思考は、苦痛以外の何物をも生み出さないのだから。

 正しい思考は、前向きな形態を生み出し、その結果、幸せとバランスを得ることができる。それは、物質界でも霊界でも同じことだ。
 思考形態を見るためには、霊視能力が必要だ。具体的な表現が与えられない限り、物質的な目でそれを識別することはできない。あなたがそういった能力を持ち合わせていない場合は、思考形態の物質的結果を待つしか方法はない。だが霊界においては、思考の力はもっとはっきりとしたかたちで現れ出るのだ。

 霊能者はどうやって思考形態を読み取るのか

 思考形態を理解すれば、霊能者の仕事をより理解してもらえるかもしれない。実際のところそれは、バイブレーションの問題なのだ。
 すべてのものに生命があり、それぞれ違った速度で振動している。霊視能力を持つ人間は、それぞれ違った速度のバイブレーションで、ものを知覚できる。たとえば、初対面の女性が面会に訪れたとする。彼女はきちんとした身なりをして、とても健全そうに見える。
 だが私の目には、彼女の怒りのバイブレーションが見てとれる。赤く染まり、憤怒の振動を示しているからだ。つぎに私は、その怒りの原因を理解することができる。彼女は、恋人と別れたばかりなのだ。その恋人は、彼女を欺き続けていた。彼女は、復讐心に燃えているのだ。
 こういったことは、私にとって本を読むがごとく簡単に読み取れる。と言うのも、私か彼女の思考形態に波長を合わせているからなのだ。それから、霊能力を使って、彼女に待ち受けている未来を見ることもできる。そして、彼女がこの否定的な思考を持ち続ければ、いずれ病に伏してしまうということがわかるのだ。だが彼女の意志は自由で、思考を改めることでその未来を変えることもできる。この場合、彼女の怒りを何とか寛容の心に置き換えることができるかもしれない。
 話しているうちに、彼女の中にもうひとつの思考形態が現れる。だが怒りはまだ優勢を占めている。新たに現れた思考形態も、彼女の激怒の力には太刀打ちできないのだ。あとは時間が彼女の心をいやしてくれることを期待したい。そんな否定的な考えをいつまでも抱いていても、何の意味もないのだ。そのために苦しむのは、彼女自身なのだから。
 私は、考えを変える必要があることを、何とか彼女にわからせてあげようと必死になる。だが彼女には、私の意味していることがわかっていない。確かに自分がとても不幸な状況に陥っており、怒りにとりつかれているということはわかっているのだ。しかしだからと言って、この否定的な考えが彼女の不幸に直接関係していると証明することにはならない。時間がたてば、彼女が求める証明がなされるはずだ。
 あなたは、自分の考え方によって自分の世界をつくり出している。人生のあらゆる状況において、あなたには自分の考え方を選択する自由な意志がある。常に自分の手で状況を変えられるとは限らないが、考え方は変えられるはずだ。ローレンスはよくこう言う。「何が起きたかということよりも、それにどう反応したかということのほうが大切なんだ」霊界では、これは一般常識となっている。だがこの世の人間は、まだそれを学び始めたばかりなのだ。

 自由

 私かはじめて思考の力を体験したのは、まだかなり幼いころのことだった。それ以来ずっと、私は思考の力とともに生きてきたのだ。
 しばらくのあいだ、ほしいと思うものが何でも現れるという状態だった。アドレス帳とか財布などといったほんの些細なものが、頭の中で考えるだけで実際に現れ出たのだ。ある日、「新しいアドレス帳を買いにいかなくちゃ」と思って外に出たところ、玄関のわきに、ビニールがかけられたままの真新しいアドレス帳が置かれていた。最初は、奇妙な偶然だと思い、さして気にも留めなかった。だがこういうことが十回も起きたあとには、私も自分の思考に注意を払うようになった。それでわかったのだが、少しでも長いあいだひとつの考えを頭の中に抱いていると、それが実現されるのだ。あまりいい気はしなかった。と言うのも、何かがほしくなると、そういった思考形態がついつくり出されてしまうのだ。
 この力を悪用するつもりはなくても、とにかくそれは起きてしまうのだった。霊能力に恵まれていたということから、私の思考パターンは、普通の人よりも強力なものだ。だから私は、人一倍自分の考えることには注意を払わなければならなかった。
 修行によって、私は自分の考えをコントロールする方法を学んだ。何かものを得るために、何らかの考えを頭にとどめておくようなことはしない。常に、前向きで、建設的で、心優しい考えを抱くよう、最大の努力をしているつもりだ。そうすれば、すべて自然なかたちで望みのものを手にすることができる。
 思考は、とても強い影響力を持つ。それは自由を獲得するための道なのだ。
 物質であれ人物であれ、あるいは物質的利益への欲望であれ、何かの強迫観念にとりつかれている場合、私たちに自由はない。そういった均衡を欠いたものごとはすべて、私たちのものの考え方から生み出されているのだ。ここでちょっと考えてほしい! つまり私たちがものの考え方を変えれば、自分の人生を変えることができるということなのだ。これは、ただ頭の中で考えさえすれば、すべて自分の思いどおりにいくということではない。正しい考え方をすれば、自分の欲望に屈せずにすむということなのだ。心の平穏以外、何も望まなくなる。そうすれば、自由を手にできるのだ。
 だが物質的存在のために、こういったものの考え方がむずかしくなっている。私たちは常に、物質界の誘惑によって試されているのだ。欲望は、早死に、病気、衰弱を引き起こす大きな原因だ。霊界では、そのような一時的な物質に悩まされることもなくなると悟れば、思考も解放されるはずだ。
 霊界では、一時的な喜びを追求するあまり、へとへとに疲れきるようなこともなくなる。霊体は、何かを求めて争う必要もない。その天国のような世界に一歩足を踏み入れれば、悪癖や物質生活のストレスから解放され、自由になる。
 いまからでも前向きな思考パターンを始めていれば、十分に報いられるはずだ。ぐずぐずしていても、何もいいことはないのだから。
 
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