魂 の 記 憶
宇宙はあなたのすべてを覚えている
喰代栄一・著  日本教文社
2003年刊
 

 世界はあなたのすべてを永遠に記憶する

 さて、今ほど私たちの未来に対する影響力の大きいときはないとラズローはいうが、これはとても深い意味があると私は思う。まず、今(現在)が時代の流れの特異点であるということだろう。特異点では何が起こるか予測がつかない。過去からずっと同じ軌道で飛んできた宇宙船地球号が、ある時点にさしかかったとき、突然この軌道を変えてとんでもないところにワープする。あるいは暗黒のブラックホールにどこまでも落ち込んでしまう。とてつもなく良いことが起こるかもしれないし、人類史上最悪のことが起こるかもしれない。それがこの特異点の特徴だ。
 人間社会では、過去からの考え方や習慣、常識などに基づく行動様式によって現在の社会のほとんどが決められており、それが過去から流れてくる大河のように未来へと向かう。その大河の流れを変えるのは容易ではないのだ。それは私たちの過去からのカルマともいえるだろう。しかし、今というこの瞬間の2パーセントくらいは、過去の流れを変える宇宙の創造力が働くこともある。それをうまく利用することができれば、私たちは未来を思うようにつくることができる。私たちの意識のあり方によっては、明るい未来をつくることができるのだ。――ラズローの『マクロシフト』を読むまでは。
 しかし今、私はその考え方を修正しなければならない。私たち自身の意識のあり方次第で未来を変えることができるという点で、私とラズローの考えはよく似ていた。しかし、決定的に違うところがあった。それは2001年から2005年の5年間は例外であると、ラズローが考えていた点だ。
 この5年間は特異点にさしかかっているから、私たちは過去のあり方に影響を受けない。過去の呪縛から解き放たれているということなのである。したがって、今なら私たちの努力次第で容易に素晴らしい未来を築くことができる。私たちは思いきって創造性を発揮することができるのだ。反対に、へたをすると人類が滅亡しかねないほどのことだって起こるかもしれない。

 それを理論的にバックアップするのがシュワルツとルセックによってもたらされた世界観だ。彼らの理論によれば、私たち一人一人の行動や人生が、光によって宇宙の記憶倉庫(量子真空)に保管され、決して消えることなく存在し続けることになる。世界はあなたのすべてを記憶しているのである。その意味で、この地球にすむすべての人々の人生には深い価値があるのである。宇宙の記憶倉庫に保管されたものは、全体としてひとつの生命体のような存在になっているとも考えられるからだ。
 私は2年前に『地球は心を持っている』という本のなかで、地球には「惑星心場」という一種の心のフィールド、つまり「地球の心」があるというアーナ・ウィラー博士の仮説を紹介した。これは有名なジェームス・ラブロック博士の「地球ガイア仮説」を一歩推し進めたもので、地球ガイアがひとつの生命体ならば、その生命体には心が宿っていてもおかしくないという考え方がその根底にある。(中略)
 「地球の心」は、少なくともシュワルツのいう宇宙の記憶装置の一部を形づくっているのではないかと、私は思う。私たち一人一人の心すべてをつなげた大きな心のフィールドが「地球の心」で、それは記憶装置でもあるから、私たちのすべての人生の記録がそのなかに生死を超え永遠に記憶されるのではないか。そうであれば、この地球にすむ誰一人として、「地球の心」に影響を与えないものはない。すべての人々の心や行動が情報エネルギーとして「地球の心」に吸収され、そこに記憶されるからだ。
 ここでよく注意しておかねばならないのは、嬉しいことも悲しいことも、他を思いやる気持ちも他を傷つける気持ちも、すべてがそこに記憶されてしまうということだろう。そして、私たちがこの地球に誕生してからずっとそのようなことが起こってきたのだろうと、私は思う。
 人々の心が影響を与え続けてきた「地球の心」は、したがって、自ら進化・成長してきたともいえるだろう。おそらくラズローのいうように、過去の「マクロシフト」によって大変身を遂げながら。
 そして今、ふたたび「地球の心」は大変身しようとしている。その変身のしかたは、私たち一人一人の心の持ち方ひとつで決まる。その意味で、あなたは非常に大切な存在なのである。
 また、こういうこともいえるだろう。私たちの意識や人生における行為や学んだ体験が情報エネルギーとして「地球の心」に記憶されるのと同じように、「地球の心」の方からも私たちに投げかけてくるものがあるだろう。シュワルツの仮説によれば、すべてが「情報エネルギーシステム」として、お互いに情報エネルギーを交換し合って進化していくはずだからだ。そこで私は、多くの人々が過去からずっとなんらかの形で祈りをささげてきた地上の歴史を思う。
 祈りによってどれほど「地球の心」が癒され、浄化されてきたことだろう。私たちが歴史の流れの特異点にいる今こそ、多くの人々の祈りが必要であろう。また、そうしてつくられてきた「地球の心」の清らかな部分から、私たちが癒され続けてきたことは確かなのではないか。「地球の心」と私たち一人一人の心の間で、いまも情報エネルギーが交換されている。それは、大いなる「地球の心」が、常に私たちを見守り、守護しているということではないのか。「シュワルツの仮説」を研究すればするほど、私のこの思いは強くなるのだ。
すべての人
 すべての人の人生に、素晴らしい意味と価値がある

 最後に、改めて問おう。この宇宙のただなかの、地球という惑星で暮らしている私たちは、いったい何者なのか。そして、私たち人類は今後どうなっていくのか、と――。
 シュワルツの仮説では、この宇宙のすべてのものが様々なレベルで情報エネルギーを交換し合いながら、自己改変し学習しているという。そういうことを永遠にくり返しながら、すべてのものが活動している。それは、「この宇宙のすべてのものが生きている」ということと同等ではないのか? また、そういう宇宙が、永遠に進化し続けているということではないのか? それはまた、この宇宙のすべてのものがつながっているということではないのか?
 つまり、つきつめていえば、宇宙が全体で一つの生命体であり、自己進化している存在であるに違いないのだ。そう考えると、この宇宙はなにかとてつもなく神々しく、とてつもなく深い叡智と意味を含んだ究極の存在(「超宇宙」)に向かって、進化しているのではないかと思えてくる。

 私たちは、より高く清らかで幸せに満ちた人生を得るために学び、人生修業をくり返す。そうしてみずからの魂に記録してきたことが、シュワルツの仮説で説く過程を通じて、より大きな宇宙の記憶のなかに吸収されるのである。それは宇宙が「超宇宙」に進化するためには欠かすことのできないことなのだ。その意味で、私たち一人一人の人生には深い価値があるのである。
 しかし、そんな高尚なことは抜きにしても、私たちが前向きに生きようとするかぎり、私たちはより善い状態へと導かれ、決して悪い方へは行かないことだけは確かだ。なぜなら、私たち一人一人の前向きな生き方とそこから学んだよい経験が、宇宙の記憶倉庫に保管され、それが「地球の心」を形成しながら、多くの人々の心にふたたびフィードバックされるからだ。
 私たちは、いずれ自らの肉体と別れなければならないときが来る。しかし、その人生で学び徳を積んできたことは、肉体の死とともに消えることはないだろう。それは一種の善なる「魂の記憶」としてこの宇宙に残り、私たちのよりよい進化を支えていくに違いないのだ。そしていつの日か、私たちは深い愛と智恵、そして霊性(スピリチュアリティー)を身につけた存在へと飛躍する。是非、そうなってほしいものだ。

 
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