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 「死後の世界」研究
 隅元浩彦・堀和世/共著 毎日新聞社
   
 
 前世療法

 カナダ・トロント大のジョエル・ホイットン教授が1986年に発表した共著書『輪廻転生』も挙げておこう。ホイットン教授はその序文で、「理屈の上で輪廻を認めるのに特に問題はない」と断言し、その上で、人間がなぜ、どのように「輪廻転生」するというのだろうか――という問いに一つの解答を導き出したことで注目される。
 ホイットン教授によると、一回の人生を終えて次の人生を始めるまでに肉体を持たない「中間生」があるという。ホイットン教授は被験者を退行催眠でまず「前世」へ連れもどし、その人生の最期を見させてから生と生への境界へと送り込む。
 そこで被験者の「魂」はまず、年老いた賢人の集団の前に出て、それまでの人生の裁きを受けるという。
 〈ある被験者はこう語る。「ガイドは私の腕をとって、長方形のテーブルを前に裁判官が着席している部屋へと連れていかれました……」〉(『輪廻転生』)
 この裁判官の前で「魂」は一瞬のうちに人生を回顧し、後悔や罪悪感など自責の念にとらわれる。日本で言えば、さしずめ「閻魔大王」の御前というところだろうが、感じるのは恐怖ではなく「安らぎ」という。
 そして大事なのは、この回顧をもとに「魂」が次の「転生」をどのようにするかを決める――ということだ。著書から引用する。
 〈決断するときには、裁判官たちの存在が大きくものをいう。裁判官たちは魂にどのようなカルマがあるのか、またどんな点を学ぶ必要があるのかを踏まえて幅広い助言を与える〉
 カルマとは仏教でいう「業」である。相次ぐ人生で行ってきた行為によって自分の次の人生と運命が決まっていくという因果の法則を形づくるキーワードだ。ホイットン教授は著書でこう述べている。
 〈進歩の代償はつねに試練と困難である。魂が成長するにつれ、人生が次第につらいものになっていくのは、まさにこのためなのである〉
 人生における両親、職業、人間関係、喜怒哀楽にかかわる出来事も、自らを高めていくために、すでに前もって選ばれ「カルマの台本」に書かれていたことだというのである。ホイットン教授はこれを、「宇宙という教室」と呼ぶのである。
 
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