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 アウト・オン・ア・リム
シャーリー・マクレーン・著
山川紘矢・亜希子・訳 地湧社
 
 「言葉をかえて言えば、もし、我々の一人ひとりが、自分の使命や神との関係、いや、人類との関係における自分の意味を知れば、社会的調和や平和はひとりでにもたらされるということだよ。戦争やあらゆる争いごとや貧困などというものもなくなる。貪欲になったり、他の人達と競争したり、恐れたり、暴力を使ったりする必要はないということがわかるからだ」
 「なぜ、個人の使命や、神との関係を知る必要があるのかしら? なぜ他の人達との関係において自分を理解するだけではいけないの?」と私は聞いた。
 デイビッドは微笑んでうなずいた。
 「それでもいいんだ。実際それでいいんだ。人類に対する思いやりということは、神とつながっていることだし、我々一人ひとりの心の中にある神聖ないのちの光なんだから」と言った。
 「でも、最初に自分がいったい誰なのかを知ることがやさしい道だよ。それは自分こそ宇宙の秩序が現われているところだからさ。ただ、この現生だけの自分を知っても十分とは言えない。
自分の生きた前生が現生の自分を作っている。すなわち、今いる自分は、前生をいかに生きてきたかによる所産ともいえるからね」
 「宇宙の秩序ですって?」
 私はあまりに馬鹿げた話に笑ってしまった。
 「あなたの輪廻転生の思想って、宇宙的正義に源を発しているの?」
 「そうとも」と彼は言った。
 「じゃあ、あなたは
私達の魂は浄化され尽くすまで、繰り返し繰り返しこの世に戻ってくると言うの?」
 「筋が通っているじゃあないか。そう思わないかい? それですべてが説明できると思わないかい?」
 「よくわからないわ。そうかもしれないし、そうでないかもしれないわ」
 「偉大な真理は隠されているのだ。隠されているからといって、それが正しくないとはいえないよ」
 「もし、そんなこと信じてしまって、
私の行動の一つひとつが必然的な結果をもたらすなんて考えたら、動けなくなってしまうわ」
 「でも実際そうなんだよ。ただ自分で気づいていないだけなんだ。キリストが言おうとしていたことはまさにそのことだよ。
我々が毎日言ったり、したりしていることは、ある結果をもたらしており、今日在るのは、過去の結果として存在しているのだ。もし誰もがそのように感じ、体の中でそのことを理解したら、世の中はずっといい場所になるだろう。我々はいいことにせよ悪いことにせよ、自分で種を播いて、それを刈り入れていることに気がつかなくてはならないんだよ」
 「もし、私達が宇宙的な意味で、自分の行動をとらえることができさえすれば、人はもっと親切で責任を感じるようになるというわけね」 
 「その通りさ。そこがポイントだ。我々は各自が宇宙的真理の現われであり、宇宙のたくらみの一部なのだ。僕がさっき言ったように、それは本当に単純なことなんだ。そのことに気がつけばつくほど、結局自分を苦しめなくなるんだよ」
 「あなたはヒッピーが言っているように、みな自分のカルマを作るということを言っているの?」
 「そうだよ。理解できないほど難しいことではないと思う。インド人は何千年も前からそう言っていた。インド人はヒッピーよりずっと昔からそういうことを知っていたんだ。意味ある人生をいかに生きるかということをさ。人がその条理に従って生きた時、人は互いに相手に対してもっと思いやりを持つようになるのさ。もしその条理に沿って生きない場合は、その代価を宇宙の秩序の法則によって支払わなくてはならないのさ。偶然でこの世に生きているのではない。
この世の中に偶然というものはないんだよ。すべては高い次元の秩序によって動かされているのさ。原因があって結果がある、因果応報とだけしかね。科学の世界だって、原因があって結果があるということは真理だろう。理性のある人は、原因と結果を信じているだろう? 普通の人に言ってごらんよ。自分の播いた種は自分で刈らなくちゃならないって。そういえば、みな反駁できないと思うよ。では、よく考えてみたまえ。もし、この世で償えないとしたら、いつ償うの? 天国で? それとも地獄で? 宗教でさえ因果応報を言っているよ。この世で償えなかったものは、天国とか地獄で償うとしているじゃあないか。では宗教で言っている天国と地獄を信じる方が、輪廻転生の因果応報より信じやすいと言えるだろうか。君にとって、どちらの方が実際的で公正な考え方だと思う?」
 「まあ」と私はびっくりして、ちょっと考えてみた。
 「どちらも信じられないわ。きっと人生はあれこれ理由もない偶然にすぎないのだわ」
 「それなら誰も責任をとらないということだ。僕にとってはそれでは出口がない一巻の終わりさ。僕はそんなふうに思っては生きられない。君だってそうじゃあないの? でも、それも君次第だと思うけどね。行き着くところは個人に戻るんだけどね。シャーリー、カルマの意味はそこなんだ。どう考えようと自由だけど、
その人の行動は、よいことも悪いことも終極的にはその人に戻ってくるんだ。この人生で戻ってこなくても、将来の人生にね。つまり因果応報ということさ」
 デイビッドは話を続けた。
 「いずれにしても、今では西洋の科学者でさえ、物質は不滅だと言っている。物質は形を変えて存在するにすぎないとも言っている。形態を変えるということは物質的な面から死のことを言っているのだよ」
 「難しくてわからないわ」
 「我々が死ぬ時、死ぬのは体だけだっていうことさ。魂は体を抜け出し、精霊体になる。魂はどんな形になっていようと永遠なんだよ。我々の体は魂の宿る一時的な住処にすぎないんだ。でも、生きているうちにすることは重要な意味をもっているのさ」
 
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