早めに移住する以外に
助かる道はない
2020年05月11日(月) 
     
 
 前回ご紹介した藤井聡氏の著書『巨大地震Xデー』(光文社)のなかから、「45 の起こしてはならない最悪の事態」を1つずつ見ていきたいと思います。
 原文を生かしつつ、文意ごとに分割して箇条書きにしました。

超高層ビルの倒壊

 特に大きな被害が想定されているものの1つが、東京や大阪、名古屋といった大都市の超高層ビルの倒壊である。
 最近に作られ、耐震基準を満たしたものでも、首都直下地震の際には耐震基準を上回る地震の揺れが生じてしまうこともあり得るので、倒壊する危険性は十分にある。

 南海トラフ地震の場合は、長い時間、何分間も地震が続く「長周期地震動」が発生する。この場合、超高層ビル群は倒壊してしまう可能性が危惧されている。実際、1985年のメキシコ地震のとき、超高層ビルに限って倒壊してしまったという事例が報告されている。

駅や鉄道の倒壊

 高層ビルでなくとも、大きな地震動の場合には、駅や鉄道施設が倒壊し、大量の犠牲者が出る可能性がある。

 例えば東京駅、渋谷駅、新宿駅といった巨大な駅で大きな倒壊が起これば、数千人規模で犠牲者が出ることとなる。

 さらには、首都圏の鉄道の場合、常時1車両に100人以上の乗客が乗車している。線の中の「高架」や「橋」あるいは「盛り土」などのどれか1つでも倒壊・瓦解してしまうと、大惨事になる可能性が十二分にある。

 別の最悪のケースの1つとして考えられるのが「新幹線」の脱線である。実際、2004年の中越地震のとき上越新幹線は脱線している。脱線箇所がカーブであったり、電柱等が倒壊しているところだったり、トンネルの入口付近であったとするなら、大惨事となる可能性があった。

家屋の倒壊と、火炎旋風による大量の死者

 恐ろしいのは、大量の住宅が一気に倒壊してしまい、その下敷きとなって、何万人という方々が犠牲になってしまうという事態である。

 実際、阪神・淡路大震災の折りには、5500人の死亡者のうち、実に88%が、家屋の倒壊等による原因で、「家の中」で亡くなっている。

 首都直下地震や南海トラフ地震においては、直下型の揺れが、東京、大阪、名古屋をはじめとした大都市部に襲いかかり、家屋の倒壊により大量の死者が発生することが真剣に危惧されている。

 倒壊を免れたとしても、大規模な火災の発生によって、その被害が拡大してしまうことも危惧されている。木造家屋が密集する住宅地であれば、その火事は瞬く間に拡大していく。

 そのときに危惧されるのが、「火炎旋風」(火災旋風)である。それは「炎の竜巻」であり、これまでにも大火災の際にその発生が報告されている。
 これは、火災によって周辺の酸素が巻き込まれ、熱せられることで、局地的な上昇気流が生じて発生するものである。

 この旋風は酸素のあるほうへと動いていく。その内部は秒速100メートル以上に達する炎の旋風で、人々が高温のガスや炎を吸い込み、呼吸器を損傷して窒息死するケースが多く見られるという。

 関東大震災においても火炎旋風は横浜で30個、東京では実に110個も発生したと報告されている。中でも墨田区で発生した火炎旋風は、4万人もの都民の命を奪ったのであった。

 当然、この火炎旋風は、首都直下地震においても危惧されている。

津波による大量の死者

 政府は、南海トラフ地震の際、最悪のケースでは死者が32万人にも及ぶと試算している。この32万人には、既述の建築物の倒壊や火災による死者も含まれているが、その大半を占めるのが「津波」による被害である。32万人の7割にも及ぶ、23万人もが、津波による死者として推計されている。

 3・11で東北の街々を襲った巨大津波が、今度は三大都市圏や、東海道の大都市群をはじめとした広大な地域に襲いかかると想定されている。津波の規模が3・11と同程度であったとしても、被害は何倍にもなる。

 その被害の程度を地域別に見るなら、最も激甚な人的被害を受けるのが静岡県で、最悪約11万人もの死者が予想されている。

 津波の高さは、広い範囲で高さ20メートル前後、最大は高知県土佐清水市と黒潮町の34メートルとされている。

 東京や大阪でも3〜5メートル程度の津波が危惧されている。この津波の高さは、大阪や東京の臨海部の様々な施設を破壊し、多くの人々の命を奪うに十分な高さなのである。

 なお、こうした津波被害は、人々が迅速に「避難」するのなら、大きく低減させることができる。例えば、3・11の2万人近くの犠牲者の大半は津波でその命を奪われてしまったのだが、、迅速に「避難」しさえすれば救われたはずなのである。

 実際、南海トラフ地震による津波の死者数は、迅速な避難さえかなうのなら、犠牲者数を5分の1にまで激減させることができるであろうという試算が、政府より公表されている。

■迅速な「救援」ができず、犠牲者が拡大する

 巨大地震時によって国民の生命が失われるという事態に勝るとも劣らぬほどに深刻なのが、被災した大量の人々に対する「救助、救急ができない」という事態である。

 巨大地震による犠牲者はすべてが地震や津波で「即死」に至るわけではない。ガレキの下敷きとなり、迅速な救援が来なかったため、あるいは適切な医療ができなかったために失われてしまう命も、夥しい数に上ることが危惧されている。

 首都直下地震や南海トラフ地震が起これば、民間住宅や高層ビルや駅等の倒壊で大量の死亡者と夥しい数の「負傷者」が発生する。
 
 首都直下地震の場合には、関東平野の広い地域で同時に「700万人」という大量の人々が避難者となるため、自衛隊、消防、警察等の救援部隊がすべての被災者のところに駆けつけることはできない。

 南海トラフ地震にいたっては、避難者数が「950万人」と膨大で、また被災地が東京から九州まで超広域に及ぶため、救援部隊が駆けつけることができない地区がいたるところに出てきてしまう。

 こうした、救援が不十分になるという事態は、様々な原因で生じる。
 第1に、救援部隊、医療班の絶対数そのものが不足しており、大量の避難者数に対応しきれないという問題。
 第2に、警察署や消防署が被災して、救援部隊が不足してしまう可能性。
 第3に、ガソリン等のエネルギーが途絶えてしまって、救援活動が著しく不十分なものとなってしまう。
 第4に、避難路がすべて絶たれて「孤立集落」が各地に発生すれば、その救援が困難になる。
 このような事態が生じれば、死者数はさらに拡大してしまうことになる。

■大量の「避難者」に必要物資が届けられず、長期的に被害が拡大

 700万人や950万人という避難者が出れば、大量の水と食料が必要となるが、十分な水と食料の供給は著しく困難である。

 まず、水道が被災し、当面の間、水道が使えなくなってしまうことが予期される。食料にしても、多くの食料工場が被災し、食料供給が著しく困難となることも危惧される。

 被災地以外から数百万人分の水や食料を毎日着実に調達できるとは限らない。調達できたとしても、それを運ぶための道路がガレキに埋もれて運べないことになる。橋梁が落ち、トンネルが塞がってしまっているようなケースでは、その復旧には相当程度の時間がかかる。

 医薬品や医療班、さらには石油やガソリンなどのエネルギーが現地に長期間にわたって到達しないケースも十二分に考えられる。


 本日特に私が紹介したかったのは次の2項目です。

■迅速な「救援」ができず、犠牲者が拡大する
■大量の「避難者」に必要物資が届けられず、長期的に被害が拡大


 首都直下地震で700万人、南海トラフ巨大地震では950万人の人が「被災者」となるわけです。基本的には地震や津波で住む家を失った人たちということになります。地震では家は全壊しなかったとしても、その後の火災や津波のために結局は住むことのできない状態になる可能性が高いと思われます。また、周辺の道路はガレキで埋まっているため、家が残っても生活することはできないでしょう。そもそもガレキや焼け跡を乗り越えて家までたどり着けるかも疑問です。
 ということで、住む家を失った人たちは、当面は避難所暮らし、やがて国が準備する仮設住宅に――ということになると思いますか。
 ここで、藤井聡教授がおっしゃってるようにイマジネーションが必要となります。
 700万、あるいは950万の人を収容する避難所の確保ができるのかという問題です。普通に考えれば無理でしょう。
 膨大な数の避難所に必要な水や食料を届けることはさらに困難です。人数も把握できませんから、適当に届けるとしても、誰が(どこから)、どういう手段で、必要な水や食料をはじめとする生活用品(トイレットペーパーなども必要)を届けることができるでしょうか。
 食料のことを言う前に、ちゃんと雨風をよけて横になって寝られる場所を確保することが難しいと思われます。
 しかも、地震の影響で電気は使えません。水道も出ません。水洗トイレは機能しません。
 では、たとえば避難所の人たちは排泄はどこでするのでしょうか。
 たとえ雨風をしのげるような避難所が確保できたとしても、そのような避難所暮らしをいつまで続けられるでしょうか。病気になる人もあるでしょう。地震でけがをしている人もいるでしょう。普段でも病院は満員状態ですから、震災で多くの病院や診療所が被災したなかでは、病人の治療に当たる人さえ確保できないでしょう。
 イマジネーションを深めれば深めるほど、悲惨な現実が明らかになってきます。
 当然、それだけの膨大な人を住まわせるだけの仮設住宅の建設はできないでしょう。
 場所の確保はもちろん難しいでしょうが、何よりも建設業者そのものが被災して、機能しない状態です。そのうえ、電気が失われて工場も稼働していなければ、建築資材や道具の確保もままならない状態でしょう。
 しかも、大災害のために日本は間違いなく国家破産状態です。支援をしてくれる国はどこにもありません。なぜなら、世界第三位の経済大国が震災のため国家破産をすれば、世界大恐慌は避けられないからです。世界各国が国内大混乱状態で、とても他国の心配をする余裕などないでしょう。しかも、現在の新型コロナ騒動の影響で、世界はもともと人の動きを止めてしまっています。どこの国もわざわざ日本まで飛行機を飛ばしてまでして救援には来てくれないに違いありません。しかも日本の太平洋側にある国際空港は、地震のためにほとんど使えない状態になっている可能性大です。

 いずれにしても、膨大な数の被災者を収容する施設の確保は難しいということです。
 ですから、被災したら野宿をするしかない、と覚悟しておくべきでしょう。車中泊ならまだましな方です。
 さらに問題は、避難者に対して水や食料が確実に届けられる可能性は低いということです。
 ということは、地震や津波で被災したら、たとえその時は命が助かっても、やがては深刻な食料不足のなかで命を失ってしまう可能性が高いということです。そうはならないという楽観的なシナリオがイメージできるでしょうか。私にはイメージすることがてきません。
 ということで、「地震が起きるまでに、被災想定エリアから他の地域に移住すべきである」というのが私の結論です。それ以外に、自分と自分の家族の命を守る手段は考えることができません。
 今の家を捨て、仕事を捨て、学校をやめてでも、首都直下地震と南海トラフ巨大地震の直接の被害が想定されていない地域に移住する決断が必要です。そのためには、まずご家族の理解と協力が欠かせませんので、先般のアンケートで気持ちの確認をしていただいたのです。
 私は「Xデー」を今年の夏頃と予測しています(日にちも確定していますが、発表はもう少しあとで)ので、ご家族の説得までに残された時間は、あとわずかです。

 次回は、『巨大地震だ、津波だ、逃げろ!』(船瀬俊介・著/ヒカルランド)から、超高層ビルの倒壊問題についての記述を拾ってご紹介します。
 私自身、現在27階建てのタワーマンションの10階に住んでいますので、この本を読み返してぞっとしているところです。
 超高層ビルのオフィスで働いている人、超高層マンションに住んでいる人、あるいはそのような超高層ビルの周辺に住んでいる人にはぜひ読んでいただきたい内容です。
 
 
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