トーチェ氏の心の法則
あなたの知らない“あなた”
C・トーチェ夫妻・著 長岡俊治・訳
日本教文社 1984年刊
 
なわ・ふみひとからのお知らせ ★ 
 トーチェ夫妻の教えの要点をまとめますと、次のようになります。

1.私たちがいま体験している現実は、私たちの心(潜在意識)が作り出したものである。

2.この現実を好ましいものに変えるためには、私たちの潜在意識の中身を変えなくてはならない。

3.私たちの潜在意識は周りからのさまざまな情報によって影響を受けている。

4.どのような情報を受け入れるかということも非常に大切になる。

5.潜在意識の中身を変えるには、心の持ち方を変えるための努力が必要である。

  この本では、心の持ち方を変えることの必要性と、具体的な努力の方法について詳しく述べられています。ここでは極一部を抜粋し、特に重要なポイントと思われる部分は赤い文字にして強調しています。
 
PART T あなたの意識を点検しよう!

心とは

●私たちは重力に支配されています。しかし、重力は目に見えません。同じように、電気を見た人は誰もいませんが、私たちはさまざまな方法で電気を利用しています。“心の法則”についても同じことがいえます。心の法則があるということなど考えもしなくても、私たちの生活の一秒一秒が、心によって影響されているのです。

●長い間、「心」とは頭脳の中にあると考えられてきました。しかし、最近の科学的証明によってこの信念は打ち破られました。大脳の半球または両球を奪われた戦争犠牲者の推理力、行動能力は、脳が正常なときにくらべて低下しないということがわかったのです。
 その結果、心こそが私たちのコントロール・センターであり、頭脳は単に肉体に現れた心の代理組織として働くものであることを、はっきりと認めないわけにはいかなくなりました。頭脳が心によってコントロールされるということなのです。

心のはたらき

●肉体の異常な反応は、“信念”によって引き起こされますが、その信念を、私たちは信仰や暗示や経験などによって、意図的に、あるいは無意識のうちに受け入れています。
  たとえば、暗示を集中的に与える催眠術という方法によって、完全冷房の部屋にいる人の心を、サハラ砂漠にいると信じさせ、コートを脱がせることができます。同じ原理のもっと建設的な応用では、たくさんの病院で、イボをまったく心理学的に治療して驚くような効果をあげています。
  また、オブザーバーたちの見まもるなかで、外から熱を加えないのに水ぶくれができたり、薬を全く用いずに水ぶくれを消滅させた事例も報告されています。
  ある有名な野球選手は、「フライを打ってしまう」という強い恐怖心を持っていて、それが主な理由で選手生活をやめました。しかし、私たちの暗示の治療を受けた後、選手としての力が回復し、再び活躍することができたのです。
  同じ方法で、女性の不感症や、肥りすぎや、アルコール中毒、そして麻薬中毒も治すことができます。

■「信じる」ということ

心は「事実」によってでなく「信念」によって結果を生み出していくのです。ですから、良くないことは「知らぬが仏」ということです。
  メキシコの僻地の住民やエスキモーたちは、文明から離れて生きています。彼らは実に単調な食事で暮らしています。だから、栄養学の専門家たちは、当然彼らは病気や衰弱を起こすはずだといいます。
  ところが事実は正反対で、このような「原始的な」人たちは、完璧な健康をエンジョイしており、頭がはげたり、虫歯になったり、皮膚病にかかったりすることは決してありません。けれども、ビタミンやミネラル等の科学的な知識を一度吹き込まれると、彼らも私たち現代人と共通したあらゆる病気にかかりだすのです。

■「意識」とは…

●心とは、目に見えない万能のコンピューターとも言うことができます。このコンピューターは、私たちの身体をコントロールするために頭脳を代理人として使います。心は私たちの生活に必要な知識を、その時々に応じて頭脳に与えてくれます。
  たとえば、赤ん坊の心は、人が足で歩いているのを観察して、はじめて「自分も歩けるのだ」ということを意識します。

■意識の力

●心は電気的な放射物や思考波の送受信機として働きます。想念は力です。家も車もラジオも、見える物質すべてが想念なしでは存在しないのです。一切のものが、まず想念という目に見えない心の世界でつくられた後で、はじめて現象の世界に姿・形を現します。

●すべての物質は見かけの堅さに関係なく、原子でつくられており、その原子はプロトンで構成され、プロトンの周りをエレクトロンが絶えず回転しているのです。ですから、物質とは静的な振動を持つ流動体である、と考えなければなりません。想念は意識の働きですから、「心と物質は一体である」と結論されます。

●人類史上最初につくり出された電球は、正しい意味ではエジソンの意識の現れでした。つまり、エジソンの内部信念が環境に投影されたものでした。その時代の人々は、彼の発明を見てはじめてそれを意識し、そこから広く電気照明が使われだしたのです。
  このように、見えない意識が見える結果に先行するのです。意識とは、外部に表現される前に、まず内部に存在しているものであるということです。

■習練

●意識は、私たちが知り覚えたことによって形を整えていきます。私たちの持っているすべての知識は、次の3種類の「習練」を積むことによって生まれます。
  1.勉強(学校などにおける思索と討議)
  2.観察(無意識の観察と模倣)
  3.ヒアリング

  この「習練」とは、心によって脳の中にレコードの溝に似た形で印象づけられていくことです。強い印象は深い溝となり、繰り返し繰り返し再生されていくのです。

一度何かを覚えると、たとえそれを使わなかったり意識的に忘れていたとしても、それは永久に記録されたことになります。こうして記録された溝は、決して消えることはありません。

■あなたの環境

●現れた「環境」と、原因である「意識」との関係を見てみましょう。すると、環境や経験が、潜在意識の欲するままに驚くほどの忠実さでつくられていることがわかります。
  一例をあげると、多くの医者は、ある特定の病気を毎日研究し、観察し、耳に入れたりするために、それについて極端に意識するようになります。彼らの心は、その病気の性質や徴候、そして結果を、あまりにも数多くカメラのように撮ったため、その潜在意識が自分たちの体にそっくりそのままの病状を再現するのです。

●建設的な面の習練もまた、私たちの意識を強く育てあげます。多くの少女たちは皆、母親の美しい衣装で自分を着飾り、その姿を鏡に映し、美の女王になりすましてウットリするものですが、その中には、後になって本当にミス・アメリカに当選した人もいます。
  知らずしらずに観察し、習慣づけられて、人々は病気や、貧困や、失敗や、論争や、孤独や、犯罪や、事故などについて、ひとりでに意識しだします。無意識の習慣に舵を取られてきたこの人たちの潜在意識は、ほとんど例外なく、あとになってからその自覚した通りの環境を創り出します。

●周囲で話される一言一言をことさら注意して聞いていなくても、それは私たちの意識の中へ入っているのです。そして、永久に回り続ける意識のレコードに溝を彫っています。繰り返すうちに溝は深まり、想念の結果を外部に作り出すでしょう。
  言葉は、肥沃な地(私たちの心)に落ちた種子のようなものです。そこに蒔かれたものを、私たちは遅かれ早かれ、年齢とは無関係に、三次元の色彩豊かな結果として刈り取らなければなりません。

●「人を信じてはいけませんよ」と両親からしつけられた子供は、得てして幻滅を感じるような経験をしがちです。そして、「ああ、僕の両親の言うとおりだった。この世は悪人だらけだ」と嘆息するでしょう。けれども、一人ひとりの悪人は、実は彼の被害意識が反映した影に過ぎないのです。
  ガン腫瘍を取り除く医者は、ただ影を追っているだけです。ガンの真の原因は、患者がガンの存在を信じ、ガンが人を殺す力があると信じ、そして強い憎しみや欲求不満、その他の感情が鬱積していることにあるのです。その原因を根本から取り除かない限り、種は残り、腫瘍が別の場所に現れたり、別の病気となって再発していきます。

■人生のパターン

●想念が積み重なって個人の信念となり、潜在意識を満たしたあとで、私たちの人生を支配するのです。

●私たちの現象の世界は、内面世界の単に目に見える一面にすぎません。私たちはいつも意識と一体であって、私たちがどこへ行こうとも、意識は同じ結果をくり返し創り出します。

■意識を変えよう

私たちが意識を変えたときにのみ、嫌いなパターンを永久に取り替えることができるのです。では、意識を変えるにはどうしたらよいのでしょう。それは当人に、自分の過去の経験の、動機とか理由を理解させることから始めます。彼の古い信念を取り除くのは、一歩一歩行なわなければなりません。私たちをコントロールしている信念のほとんどは、幼児の頃私たちが受け入れたものなのです。

●好ましいパターンと一致するように目標を定めて努力すれば、強い力で新しい意識を創り出すことができます。積極的な言葉は、特に効果的です。
  「私にはできない」とか「それは不可能だ」とか「足りない」とか「疲れた」とか「いつも‥‥で困っている」などという言葉は、私たちの意識に否定的な暗示を与えます。まじめな表現であろうと、ふざけた言い方であろうと関係ありません。
  それらの言葉が、将来、私たちがまったく予想もしない時と場所で、失敗や、困難や、疲労の状態を創り出す助けとなります。なぜなら、私たちの意識は休むことを知らず、日常生活のあらゆる分野の働きや経験を決定するからです。

どんな場合でも、想念や、言葉や、行為のかたちで与えられた命令を、心は公平にそのまま実行しています。そして、努力して反対の方向に行動しない限り、心は単純に印象づけられたアイデアや経験によって固められたパターンを、くり返し創り出しながら、私たちを支配し終わるまで休むことを知りません。

私たちが、他人について否定的に考えたり話したりするだけでも、その結果は私たちにふりかかります。なぜなら、前に説明したように、潜在意識は私たちの言葉のあやとは無関係だからです。言葉はすべて客観的に、正確に記録され、潜在意識のなかへと包摂されて、その性格をますます強めていきます。
  「彼はだめな人間だ」という言葉は、「私はだめな人間だ」と訳されて、話す当人の上に必ずはね返ってくるでしょう。まったくのところ、話しかける相手はただひとり、自分自身だけなのです。

●私たちの人生を変える力としては、一時的な想念が無力であるということは容易に想像できます。必要なのはまったく新しい心の状態であり、それは、ある一定の期間にわたって努力を続けることによってのみ得られるのです。
  たゆまず、集中的に暗示を行ない、新しい環境に触れていくことによって、特に若い頃には、意識を完全に変化させることができます。日頃の教育手段、つまりテレビや本や、そして異なった信念を持つ人々と交際することも、意識変革の一助となることがあります。
  もちろん、逆もまた同様です。否定的な性格の人々や教えに触れ、またそうした経験にさらされると、意識自身の純粋な力が、その人にとって不利な方向に汚されていきます。
  たとえば生まれてくる子供は皆純粋な心の状態にありますが、その子の生涯のパターンを決定する意識の心構えというものは、両親や遊び友達や学校から、そのまま学びとるということになります。
  宣教師たちが、まったくの善意から原住民に不衛生な状態を意識させてやった結果、そのことによって病気を誘発させることになるというのも明らかな事実です。中世において伝染病が急激に流行したことも、明らかに意識に関連した問題に原因があります。西部の荒くれ男たち、テレビの犯罪映画、ロックンロールの熱狂、スポーツカーやその他の気違いじみた流行の反乱についても、同じことが言えます。

●交通安全運動の場合、警告の標語が発表されると、それは不注意でいることや、殺されることを命令しているように働きます。なぜなら「注意しなさい」という言葉は、心によって「あなたは不注意です」というふうに翻訳され、さらに心の再生力によって「もっと不注意でいなさい!」というように強まっていきます。もちろん、宣伝・広告物――たとえば、衝突現場やズタズタにちぎれた人体の写真等――を見たときに生じる二次的な暗示の効果も見逃すことができません。

■心のつながり

●心の放射物、または波というべきものは、時間や空間を超越しているのです。世界中で行なわれた精神感応の実験は、思念がどんな厚い壁や、どんな遠い距離にも影響されないことを証明しました。
  私たちがミニ放送局と受信局であるという理論をテストするために、高度の感応力をもった人たちに、非常な遠距離から複雑な精神メッセージが送られました。彼らは驚くべき明快さでそれらを記録し、理解しました。特別な状況におかれたり、そういう素質を自然にもっている霊媒は、思念によって遠隔地から送られた暗示に対し、ちょうど目の前で話しかけられているかのように感応します。

●米国陸軍情報部は、スパイ活動を含めたいろいろな目的にとって、精神感応がはたして有益かどうかを調べるために研究や実験を行ないました。1960年6月15日までに行なわれたこれらの実験は、大成功を収めました。
  この点に関し、ソビエト(現ロシア)科学誌『ナニカ・イジズン』に掲載された記事は注目されます。
  「離れたところへ思念を伝達するための脳の放射物は、ミクロ単位で発生するものと考えられます。思念中の頭脳センターから出るいろいろな放射波の働きは、別の人の頭脳センターにそれ相応のシグナルを作り出すことができます」
  「人間が正確な交信をするためにの、脳波の増幅器を製造できる可能性が出てきました」
  「頭脳センターによってつくられるものと同じ人工波を発生させて、人間の精神活動に直接影響するように設計することも、まったく問題ないと考えられます」
  普通の人でも、目に見えたり耳に聞こえる形ではなく、ある事件を別の場所でハッキリ知ることがあります。たとえば、恋人の死を虫の知らせによって知るなどというのがそれで、そういう事実は記録され実証されているのですが、ここで取り上げるには数が多すぎます。

●2人またはそれ以上の人が、互いの連絡がまったくなしに、遠く離れた場所で同時に同じ発明をするということも、よく知られた現象です。彼らは同じ心の周波数で同調し合っただけです。
  また、教育を受けていない人々が、しばしば偉大なアイデアを掘り出したり、正統派の教育で磨かれた人たちには考えられなかったような深い真理を発見したりするものです。
  とにかく、いったい誰がフルトンや、エジソンや、フォードや、ライト兄弟を教育したのでしょう? こうした人々は、小学校以上の教育をまったく受けていません。
  これらすべてのことを考えてみると、次のように結論することができるでしょう。
  すなわち、心は無限の連続体であり、その中に人類や、生物や、物体など世界の一切を包含しています。この巨大な電子プロトン波動の領域では、存在するもの一つひとつが、独自の振動率や個性をもっています。
  さらに一歩すすめると、流行や活動や経験についても、すべて同じことがいえます。住宅や車は、その持ち主の振動を保持しているものです。もしその振動が低いものだと、訪問者や新しい持ち主は憂鬱になります。もし高ければ、逆に活気づくでしょう。

■心の力学

●心の波は(それが変化しなければ)個々人の心から発信されると、それにふさわしい意識に受信されて、相応の結果を現します。
  母親が「息子は事故を起こすのではないか」と心配すれば、夫が「帰りが遅いと妻に叱られるのではないか」と恐れれば、妻が「夫はウソをついているかもしれない」と不安になれば、社員が「上司に首を切られるのではないか」とびくびくすれば、被告が「陪審員は不利な判決を下すのではないか」と気遣うならば、セールスマンが「客はこんな商品は買わないのではないか」と取り越し苦労をすれば――すべてそれ相応の反応が引き起こされるでしょう。
  反対に、明るい積極的な態度や信念は、他の人たちの協力を得て好ましい結果を生み出すでしょう。
  日常の出来事は関係する人々の意識に影響されるばかりでなく、見た目には関係のない第三者の意識によっても影響されているのです。
  「人を殺したい」という欲望を意識的、または無意識のうちに持っている人は、「殺されるのではないか」と恐れている人に引き寄せられ、その他、家族や隣人や警察などの「犯罪」の意識も加わって、殺人が行なわれます。

●このような犯罪事件に関する報道やニュース映画は、罪悪の既成観念をさらに強め、なお一層の犯罪をつくり出すだけです。少年犯罪の状況は、この原理を鮮やかに描き出しています。世間一般がこうした傾向の事件を意識し、予期するために、トラブルを引き起こす気など持っていない若者たちを、犯罪に駆り立てるようになります。
  何がそうさせるのか、彼ら自身も自分の行動を説明できないし、あとになって深く後悔するでしょう。

■循環の原理

●潜在の心は、いったん動き出すと循環しはじめ、その作用が完結するまで止まることを知りません。心は欲する目的を達成するまで、どこまでも働きます。心の働きは、「事故」の意識を持っている人自身が実際に事故に遭うか、直接巻き込まれなくても、近い肉親や友人の上にそれが起こるまで続きます。成功、障害、または他のどんなタイプの意識についても、このことは言えます。

潜在意識の願望は、どんな意識であるにせよ、心の力によって現実界に再現されます。バンス・パッカードによると、内心優越感を抱きたがる夫は、どうしても傲慢な相手を妻に選ぶ傾向があり、また、内気な妻は、あけっぴろげな夫を選ぶことはめったにしません。やきもちやきの配偶者たちは、やきもちをやかずにはいられない生活をする似た者夫婦です。
  もう一歩進んで言うと、このような人たちは相手を選んではいません。容姿や外観によって選び合ったように見えますが、実は、彼らの潜在意識が一つの統一体をつくるために、お互いに引きつけたのです。それぞれが一つひとつの言葉や行動に、相手の潜在意識の内容を反映しています。事実は、私たちが知ったり会ったりする一人ひとりが、私たち自身の一部分を鏡に映し出しているということです。相手の言うこと、行なうことは、すべて私たちの一部です。

●不愉快な事件が起きたとき、被害者は「事件当時、そうした嫌なことは考えもしなかった」と断言するでしょう。意識的な想念に関する限り、そのことに疑う余地はありません。
  しかし、意識というものは意識的なものも無意識のものも、パターンを持っています。そして想念は、ある一定の形を持ったエネルギーの結晶としては、作られもせず壊されもしないものなのです。私たちがいったん想念すると、年月が過ぎてもそれは力をたくわえて残り、「考えをめぐらした」そのできごとが発生するにふさわしい環境になったとき、「結果」となって必ず現れてきます。
  「夫にとって自分は充分ではないのではないか」と内心ひそかに恐れている婦人がいたとします。そして彼女は、その恐怖心を自分の意識からうまく隠しおおせたとしましょう。しかしながら、表面には現れていない彼女の意識は、すでに結婚の破局を予期しており、他の女性の出現を避けられないものにしています。
  この不幸な妻は、当然夫をとがめ、そして自分の悲劇をうらみます。もし、仮にこの夫の情事がやんだとしても、すぐに他の女性が登場するでしょう。妻が意識を変えるまで、それは終わりなく繰り返されます。

●心の溝が深まり、前述のような経験として現れてくると、事態は次の段階を迎えます。一度周期がめぐって全体が完結すると、舞台は新しい周期の出発に備えて、いっそう大がかりにセットされるのです。その時こそ、もっと好ましいパターンを植えつける最良の時期でもあります。

■その他の応用

●他者を引き離して大々的に販売を進めている会社は、強力な意識的要因をもっているので、その業界のリーダーシップを握れるほどの需要をつくり出すことができます。販売を始めたころの商品は二流品だったとしても、一般大衆の信頼を得るならば、それが決定的な効果となって次々に必要な改良を生み出さずにはおきません。なぜなら、多数の人々の抱く信念は、積極的であれ、否定的であれ、必ず支配力を及ぼし、報いられるからです。
  繰り返して大々的な広告キャンペーンを打った後は、人々の心の中では、無意識のうちに製品の品質と社名もしくはトレードマークとが結びつき、それは会社全体にとって一つの有利な期待をつくり出すでしょう。一方、会社にとって不利な広告宣伝は同じくらい有害です。「○○はこうである」と信じる人が多ければ多いほど、「こうである」ということはますます確実になります。
  悲劇的な例を見てみましょう。国務長官ダレス氏は、容態が重いと発表された後に急死しました。彼の死は、自分自身や侍医たちの意識に起因するばかりではなく、おそらく、国民全体の死に対する恐れによって引き起こされたものです。
  こうしてみると、インフレや疾病や失業や事故などの予想率が、なぜたいてい正確に当たるのか、その理由を私たちは説明することができます。国家的なスケールで見るならば、国民の間に貧困の意識が広まると、それは繁栄を獲得しようとする政府の努力を妨げることになります。「景気の悪化」を予期する人口の比率が大きければ、株式市場の下げや不景気を起こす原因となります。

PART U あなたの意識を確立しよう!

  「PART T」では、あなたの座っているその椅子が一つの結果であることをのべてきました。椅子の原因は、デザイナーの心に浮かんだアイデアでした。その椅子を改良するには、原因となるアイデアや青写真を変更しなければなりません。同様に、あなたの結婚や職業や社会的地位などは結果であって、その底に流れる意識を変えなければ改善はおぼつきません。
  あなたができるだけ短期間で最適の結果を望むならば、関連のある部分を読まれた後で次の10項目のステップを実行されることをお勧めします。

 1.自分を「成功者」と考えましょう
 2.決断しましょう
 3.自分を愛しましょう
   (少なくとも好きになりましょう)
 4.他人を愛しましょう
   (少なくとも好きになりましょう)
 5.「できる」と考えましょう
 6.すべてを善とみましょう
 7.始めたらやり遂げましょう
 8.「豊かに」生きましょう
 9.妥協してはいけません
10.気長に、忍耐づよく


 ★ ここでは10を抜粋しました――なわ・ふみひと ★

  6.すべてを善とみましょう

●あなたの意識を「善」に向かわせるためには、あなた自身の、あなたの配偶者の、あなたの生活の中から、美点を見つけ出し、それを自覚しなさい。記憶の悪さを嘆くかわりに、簡単に思い出せるいろいろなことに思いを集中しましょう。そして「私は記憶力がよいのだ」と自分自身に明言しなさい。いつも、物事をできるだけ思い出すように努力しましょう。このように忍耐強く努めるならば、あなたは必ず成功します。

●動・反動の法則は、どんなときでも、どんなところでも作用しています。今日あなたが他人を非難するように心の溝を彫るならば、たとえ頭の中でそう思っただけであっても、あなた他人から――もしかしたら、今まで会ったこともない人から――非難を受けることになるでしょう。ですから、本当の意味で自己本位に考えてみても、私たちは他人に寛大であることが要求されます。
  行為についてもまったく同じです。親切な行為であれ悪意ある行為であれ、与えたものが必ず返ってくることは、改めて説明するまでもないでしょう。
  これは国際的にも当てはまります。たとえば英国は、チェコスロバキアと交わした援助協定に1938年に違反しました。ところが1956年のスエズ危機のとき、英国は米国から援助を断られ、チェコスロバキアが味わった苦しみと同じものを経験しました。
  ずっと以前、米国は理由のよしあしを問わず、ある国々を非難したことがあります。そして現在、善意ある多くの米国民は、友好関係を保ってきた他の国々から自分たちがどうして非難されるのか、その理由がわからず困惑しています。事実は、昔祖先たちのしたことの償いを、今させられているのです。
  それと同じように、私たち一人ひとりは、過去にとった態度や行為の結果を現在受け取って、それについて喜んだり悲しんだりしているのです。一人の人間が自己変革をしようと努力すれば、新しい結果が確実に現れてくるのですから、一国の政策を修正すれば、同じように想像以上の利益を引き出すことができるでしょう。

10.気長に、忍耐づよく

他人に対して向けられたあらゆる行為は(気短な言動も)、遅かれ早かれ必ず私たちにはね返ってきます。これが「心の法則」です。私たちが短気を起こすと、その報いは必ずしも最初の相手から返ってくるとは限りません。
  前を走るドライバーの運転にイライラするたびに、あなたは将来セールスに行った先の客が短気を起こし、商品説明の最中に席を立ったりする場面をセットしていることになるのです。
  このことが「忍耐」の必要性をはっきり示しています。他人に対して忍耐強いことと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なことは、自分自身に対して忍耐強くあることです。あなたが作り上げようとしている新しい習慣や信念は、赤ん坊と似ています。赤ん坊が大人のように歩けないからとか話せないといって叱られたとしたら、きっと落胆するでしょう。そのように、あなたの内部に芽生えたこの「新しい生き方」にとっては、忍耐や習練、そして理解ある励ましが必要なのです。
  あなたは新しい種を蒔きました。けれども、しばらくの間は古い信念と行動の結果を刈り取っていかなければなりません。あなたがかつて抱いていた事故や盗難や争いへの恐怖心は、表面の意識から隠されて自覚していなくても、それに相応した経験を現し続けるかも知れません。
  しかし、そのような時にも力を落としてはいけません。むしろ、それが起きたことを喜びましょう。なぜなら、具象化したその事件によって、あなたの潜在の信念は表現され、永久に捨てられたからです。あなたはあわてふためいたり、失望落胆したり、恐怖に襲われるような愚を再び繰り返してはいけません。もっと良い日があなたの目前に近づいていることを思い起こしましょう。
  種まきを終えた農夫のように待ちましょう。
  彼は新しい種を掘り起こして、育っているかどうかを確かめたりはしません。彼は土を耕し、水を注いで、あとは自然の摂理にまかせるばかりです。

●新しい意識を自分のものとする過程で留意しなければならないことがあります。それは、幼い頃に学んだことほど、心の記憶に一番深い溝を刻みこんでいるということです。ですから、努力によって意識が変化しようとするその変わり目で、古い記憶が鮮やかによみがえってくるものです。
  まず外部の人との関係が改善されていくでしょう。しかし、配偶者とはしばらく争いが続くかもしれません。その理由は、2人は遠い昔に形成されたお互いの根深い憎しみを反映しているからで、その憎しみは、おそらく両親との関係に端を発しているからです。
  たまにあなたは仕事やフィアンセや結婚相手に対して、まだ不愉快に思うことがあるかもしれません。しかし、あきらめてはいけません。あなた自身を説得しなさい。あなたの内奥で現在起こりつつある成長の過程について、深く考えましょう。赤ん坊は一晩で大人になることはできません。種が一本の木に成長するにも、何年もかかるではありませんか。
  真夜中は、夜で一番暗いときです。しかし、その1秒後では、すでに新しい日が始まっているのです。まもなくあなたは暁の光を見るに違いないのです。
  今のあなたがあるためには、過去のすべての経験が、すべての人々が、失敗をも含めた人生の全ての浮沈と紆余曲折が必要だったのです。あなたが誰であり、何をしており、どこにいたとしても、蝶となるに必要な養分を、あなたはたゆみなく吸収してきたのです。そして、今も吸収しつつあるのです。

あなたの家族を信じ、仕事を信じ、あなた自身を信じなさい。人生の中から、価値あること、美しいこと、すばらしいことを見出してそれを実感しましょう。そして何にもまして、潜在意識をも左右するあなたの内部の「霊性」を信じなさい。あなたが何かを切望したり、フラストレーションを感じるのは、あなたの内部にその霊性が存在するからであり、それは常にあなたの進歩と向上に必要な人や、場所や、環境へとあなたを導いてくれるのです。
  あなたの身に起こるすべてのことを通して(今この本のこのページを読んでいることさえも)、あなたは、自分の想念や、感情や、言葉や、行動をもっと有益に使うように導かれているのです。
  このような見方をとれば、かつてあなたの敵として働いていた潜在意識は、あなたの友達になってくれるでしょう。そして、あなたの不安は確信に変わり、失敗は成功に、憎しみは愛に、欠乏は充実と豊かさに、悲しみは幸福へと変わっていくことは間違いありません。

●人をうらやんではいけません。うらやめばもっとうらやまねばならないことを、あなたは次々と作り出していきます。
  人を哀れんではいけません。哀れんでいれば、遅かれ早かれ、あなたは人から哀れまれるようになるでしょう。あなたの周りの人たちは、あなたと同じように進歩の過程にあるのです。あなたが出会う一人ひとりは、現在のあなた、過去のあなた、または将来のあなたのいずれかを映し出しているのです。

●私たち(=トーチェ夫妻)が述べてきたことを実行してくだされば、あなたは、自己の意識を日一日と高揚させていくことができるでしょう。心は新しく生まれ変わり、あなたは過去の間違った信念や恐怖から解放されることでしょう。誰もあなたを害することはできません。人々は、すべてを「善」と見るあなたに惹かれ、必ずついてきてくれるでしょう。
  あなたは地位や金や機会を失うことがあるかもしれません。しかし、あなたの潜在意識にある「満足」と「安定」の波長は、無数に流れる支流の中からどれかを選んで、もっと素晴らしい地位を、もっと多くのお金を、もっと大きな機会を、あなたのために引き寄せてくれるでしょう。
  今のあなたの状態と、あなたが夢見る幸せな将来との間に、たとえどんなギャップがあっても、私たちの述べてきたことをあなたが受け入れてくださるならば、それはあなたを助け、その橋渡しをしてくれることでしょう。
 不屈に、忍耐強く努力すれば、あなたに失敗はありません。
 
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