伊藤博文、井上馨を緊急帰国させた 英国『TIMES』の記事 |
井沢 元彦 週刊ポスト 2013年3月22日号
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逆説の日本史 ◎幕末激動の十五年 「一八六四年」編 そのJ |
…(中略)… 長文にわたるので、内容を要約すると、 「長州藩士の無礼な行為(無差別砲撃のこと)については報復がなされた。だが、列強四か国(英・仏・蘭・米)が日本に今後もとどまるとすれば、この悪徳資本家のような連中(原文these robber-barons、特に無差別砲撃をした長州藩士のことを指していると思われる)に雇われている暴漢ども(原文ruffians これには外国人を斬りまくった攘夷浪人も含まれていると思われる)から、どのようにして同胞の生命や財産を守ればいいだろうか。確かにこうした悪大名の城を砲撃したからといって、死をおそれない日本人の攻撃から身を守ることは難しいかもしれない。しかし、やってみる価値はある」として、婉曲な表現ながら武力行使に踏み切ることを提言している。 印象的なのは、この記事の最後の部分である。長州藩士や薩摩藩士は「悪人」だとしながらも、日本人の能力については絶賛していることだ。 原文を翻訳すると、 「暗殺の恐怖にさらされながら日本に駐留していたオールコック公使によれば、日本の職人はイギリスのシェフィールドやバーミンガムの職人と等しいぐらいの技量を持っている。また、日本人はまだアームストロング砲やシェフィールド銃(いずれも商品名、当時最新鋭の銃砲)は生産出来ないが、ひとたびライフル銃を手にすれば完全なコピーを作れるばかりか、それを改良してみせるかもしれない」と絶賛した上で、「未来においては、この素晴らしい国の知性と信頼に対して、われわれは敬意をもって刺激されることになるかもしれない」とまで述べているのだ。 イギリスは既にアヘン戦争で中国(清国)とは長年戦ってきたわけだが、中国人に対する見方は次のように辛辣極まる。 「中国人であれば住んでいる町が炎上する前に逃げ出していただろうし、つい最近まで中国人は大砲すら改良しなかった。しかし日本人がこんなに善戦するとは、われわれはまったく予測できなかった」 「われわれは日本人の軍事に関する才能と、機械に関する天才的な素質に敬意を払わずにはいられない」 まさに絶賛である。 |
★なわ・ふみひとのコメント★ |
戦後教育の中で根絶やしにされてしまった「賢い日本人」の姿です。いまではこの国は中国の人からも見下され、同情される有様ではありますが、誇るべき先人の姿は心にとどめておきたいものです。
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