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 大世紀末 サバイバル読本
「食育」編
浅井隆+花田美奈子/太田晴雄 総合法令
 
 
 若年の“成人病”が増えている!

花田 私、食と健康については、日本はアメリカより40年は遅れていると思いますね。
浅井 ほう。それはまたどうして?
花田 40年ほど前のアメリカ人というのは、お肉の食べすぎ、油脂のとりすぎ、砂糖のとりすぎ……つまりオーバータンパク、オーバー糖分で、そのうえ大食い。牛乳はドクドク飲んでアルコールのおつまみはチーズオンリー。そしてアイスクリーム大好きときてたんですから。
浅井 それは最悪だ。
花田 その最悪の状態がいまの日本。
浅井 最近では、訳のわからない病気はたいてい“ガン”でくくられてしまいます。あるいは、最終的には心臓が止まって死ぬから心不全。体力が弱っているところに強烈なストレスがかかる。その結果は過労死や若者の成人病。とくに糖尿病が若年化しているそうですね。
太田 子どもの高血圧に骨粗しょう症。アトピーなんていうのもね、どうやら食生活が影響しているらしい。
花田 とくにいまの若い方は、食品公害そのもののインスタント食品が大好き。野菜もたっぷり農薬漬けを食べている。はっきり言って自分で自分の寿命を縮めているようなものかもしれない。
浅井 そういう知識がないから、野菜もきれいで形のいいものをありがたがっている。きれいなほど栄養があると錯覚しているようです。いまの日本は、やはり西洋文明の行きつく果てに来ていると思えてなりませんね。
花田 量は食べているのに栄養失調。結局、食べ方のバランスが悪いのです。
浅井 素材はいいのに“毒”を食べている。
太田 むしろ過食でしょう。過食はしているけれども栄養失調。
花田 緑黄色野菜が食べられない子どもが増えていますね。ニンジンとかピーマン。結局は親の認識の問題でしょうか。
浅井 カルシウム、鉄分などミネラル類の不足は目に見えていますね。その一方で、コーラをご飯にかけてお茶漬け代わりなんていうお子さんもいるとか。
花田 そうなんですってねえ。その点、伝統的日本食はバランスがとれていますよね。お味噌汁でお米のご飯を食べる。おかずは野菜の煮物や海草など。これにお漬物があれば十分。いや、小魚もつけたほうがいい。要は一汁三菜です。
 とにかくバランスよく食べていれば病気にならない──というのは本当なんです。なかでもお味噌汁というのは最高にいい。
浅井 私、思うんですけど、あのグルメというやつね。グルメブームというのは、“健全な食生活”という意味からすると邪道ではないかと。栄養的に偏るんじゃありませんか?
花田 そのとおりでしょうね。私自身も、フランス料理の食べ歩きで肝臓を徹底的にやられましたもの。アルコールはほとんど飲めませんのにね。
太田 花田先生の場合は、それが一つのお仕事だったのですから。
花田 銀座に「マキシム」という超高級フランス料理店を開きましてね。そのとき腕のいいシェフをスカウトするため、フランスに渡って連日連夜フランス料理を試食して歩いたんですよ。
 その結果が重度の脂肪肝。病院に人退院を繰り返すこと8年。それこそ薬漬けになって、薬害で地獄を見ました。結局、玄米菜食で治ったんです。
太田 食べすぎそのものもよくないんですね。江戸時代に水野南北という“食”の先生がいて、「人間すべて、食が運命を左右する」と喝破されているのですが、その水野南北先生が食べすぎをきつくいましめています。
 南北先生が生涯かけて体得した人生の秘伝がこれ。宿命もさることながら、人のさだめを変え得るただ一つのことは「食」であると。人間は、日々の食事の内容によって性格さえもつくり替えることができる──というのです。
 この先生の遺訓はたくさんありますが、なかでも「食を慎めば気が開け、やがて運も開く」とか、「少食の者に長命多く、短命の者に大食多し」。あるいは「鳥類を食べ続ける者は大病にかかる」、「乱食の者は生涯不安定」等々。一つの真理でしょう。

 
 
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