ケネディ暗殺直前における政府高官たちの
UFOキャンペーン
筆者が“ケネディ暗殺”と“UFO隠蔽”が関係あるのでは?……と最初に思ったのは、ケネディが実施に踏み切ったアポロ計画の理由と目的がアイマイなことや、両者を覆うムード、つまり真相隠蔽のパワーが大統領権限をはるかに超えていることなどが非常に似ている点、それに次のようなことによる。
・ケネディ暗殺事件の真相を歪め、強引に決着させた──ウォーレン委員会
・UFO実在を徹底否定し、国家的な脅威にならないと結論した──ロバートソン査問委員会
・「ケネディ暗殺資料の公開は国家の安全を侵害するため、2039年まで非公開」というジョンソン大統領の行政命令
・「UFO関連情報は国家の安全を侵害するため公開できない」という高等裁判所長官命令(なぜ国家の安全を侵害するのか、という理由が不明)
この他に、ケネディ大統領がアポロ計画の真の目的(UFO実在)を公表しようとしていた、と考えられる理由は次の点である。
ある日突然、アメリカ大統領が「UFOが実在する」と、それも月を基地にして頻繁に地球に飛来していると発表したら、全世界の人々に与えるショックは相当なものだろう。オーソン・ウェルズの『火星人襲来』のラジオ放送がパニックを起こしたように、世界的な混乱が発生するかもしれない。大統領ともなれば、そのようなことは十分わきまえていよう。となれば、どうしても一般へのキャンペーン(啓蒙と教育)が事前に必要になってくる。
ケネディは1961年1月20日に大統領に就任し、1963年11月22日暗殺された。その在任期間(約2年10カ月)の後半に軍の高官や専門家たちによって、UFOの実在と脅威が一般に向け堂々と啓蒙されていたのである。代表的なものをまとめてみよう。
まず、日本人におなじみのダグラス・マッカーサー大元帥である。当時はトルーマンに罷免され軍籍はなかったが、米陸軍では隠然たる勢力をもつ元老格だった。そのマッカーサーが1962年の陸軍土官学校卒業生たちに対する講演で次のように述べている。
「われわれはいま、宇宙の無限の距離、そこにひそむ測りしれない謎と取り組みつつあるのだ。われわれは現在、過去のあらゆる時代にも増して、人生をもっと活気あるものとする課題についての討論を展開しつつある。すなわち、宇宙のエネルギー(重力)を制御すること。さらに、どこか他の惑星集団からやって来た、いまわしい諸種族との闘争について検討を行なっている。次の戦争は惑星間の戦争になると思われる。したがって地球のすべての国民は、団結してこれに対処しなければならなくなるだろう」
また同じ頃、米陸軍トップ級のロケット専門家であり、陸軍宇宙開発計画局長でもあったパトリック・パワーズ少佐は、それをもっと具体的に雑誌『ファミリー・サークル』に書いている。
「地球人類が月に着陸しようとするとき、これをはばみ、追い払おうとする行動に出る、他の天体から来た知的生物に遭遇する可能性がある。これに備えるため、われわれの宇宙船は武装しなければならないかもしれない」
そして1963年1月9日、アメリカ陸海空三軍統合参謀本部、通信・電子工学部長ジョン・A・マクダビット准将は、イリノイ州デカータで開かれたミリキン大学の校友年次大会で、最近の宇宙科学について講演を行なった。大学広報課では准将の承認を得て、要旨をプリントして一般に配布した。
「われわれは将来に備えて、地球外の知的生物と人類との関係の問題を解決しなければならないであろう。われわれはいつの日か、宇宙空間で、地球人類よりも賢い種族と接触するであろうことを疑ってはならない。また、近い将来、人類は宇宙に存在する数多くの生命の諸形態のひとつにすぎず、われわれよりも遙かに進歩した別の世界があることに気づき、それを事実として受けとめなければならない。もし、それが事実とすれば、われわれが地球以外のところにいる、人間以外の生命体と出会うことは、紛争の潜在的要因を減らすよりも、むしろ、かえって増すことになるかもしれず、これからの若い人たち、つまり皆さんに大きな重荷を課すことになることを、ここでハッキリ申し上げておく」
カリフォルニア大学の著名な天文学者、カール・セーガン博士は、NASAの顧問であり、アメリカ科学アカデミーの有力メンバーでもある。さらに重要なことは、地球外生命に関する空軍要員の一員であることだ。1962年12月、ロスアンゼルスで開催されたアメリカロケット学界における講演で、そのものズバリ、次のように述べている。
「地球はおそらく、ほかの宇宙から来た高度の文明を代表する、知性のある生物の訪問をうけている。知的生物たちは、月の裏側に中継基地を造り、これを利用して地球にやってきたと考えられる。われわれは、この問題に正面から立ち向かう覚悟をしなければならない」
どうであろう。専門家がこのような衝撃的な見解を公表する場合には、少なくてもこれを裏づける確かな情報を握っているものとみなければならない。彼らはSF作家や三流ジャーナリストとは全く異なる立場にある。確かな根拠もなしに、この種の人騒がせな発言をすれば、たちまちクビが飛ぶだけでなく、専門家としての社会的生命まで失ってしまうのである。
そればかりではない。パワーズ少佐、セーガン博士、マクダビット准将という人たちは“陸海空三軍共同布告第146号”(1954年8月に布告されたもので、UFO目撃報告の迅速な入手と、許可なくUFO情報を民間に流すことを厳禁するという空軍長官命令)の拘束を受けている立場にあった。にもかかわらず、このように明確で決定的なUFO問題に関する情報を公にしたのはなぜだろう。それもケネディ大統領の在任期間中の後半に、いっせいに同主旨の発言をしているのである。
しかも、軍の大御所的存在であるマッカーサー将軍まで、あからさまな演説を、こともあろうに陸軍士官学校の卒業生たちを前にぶち上げたのだ。今だったらおそらく大変な騒ぎになっていただろう。
これらの点を考えれば、これらの物騒な声明は個々人が別々に、勝手にやった発言などではなく、ケネディ政権の許可のもとに行なった発言であったと推定されるのである。というより、計画的な心理作戦、事前キャンペーンとみなすべきであろう。
ケネディが暗殺され、ジョンソン新政権になってからは、もちろんキャンペーンは禁圧され、積極的な隠蔽政策へと方針は変更された。顕著な例がカール・セーガン博士である。
数年前、テレビ朝日系で「コスモ・スペシャル」という番組が放映され、特別ゲストとしてカール・セーガン氏が出演し、科学番組としては珍しくUFOを取り上げていた。そこで氏はUFOについて次のように語っていた。
「UFOを目撃したという話は、ほとんど間違いです。惑星の反射像とか、大気圏に突入した隕石、あるいは人工衛星でしょう。中には人をかつぐためのデタラメもあります。今まで一度も物理的証拠は挙がっていません。UFOを近くから撮った写真もないし、エイリアンが書いた文字も本も発見されていません。噂はいろいろあります、が、何の根拠もありません。だからといって、地球外生物の探究が無意味だとは言えません。私自身、エイリアン文明の発見には抑え切れない魅力を感じます」
同じ人物が20年前、「地球は、ほかの宇宙から来た、高度の文明を代表する知性ある生物の訪問をうけている。知的生物たちは月の裏側に中継基地を造り、これを利用して地球にやってきたと考えられる。われわれは、この問題に正面から立ち向かう覚悟をしなければならない」と発言した人であろうか。その豹変ぶりは驚くべきものである。
★なわ・ふみひとのコメント★
この本の結論を要約しますと、「アポロ計画は月の裏側に住み着いている異星人の存在を確認するために行なったものだ。ケネディはその異星人の存在を明らかにしようとしたために、世界支配層の手によって抹殺された」ということになります。ケネディ暗殺に関して書かれた本をいろいろと読んでみましたが、私はこの著者の分析が最も核心を突いていると思っています。ただ、「月の裏側に住み着いている」のは異星人ではなく、この地球の行く末を案じた世界支配層が、次の居住地として準備をしているという説もあります。もしそうであれば、ケネディはその事実を確かめようとしたために世界支配層の手によって葬られた、ということになります。ケネディ暗殺のあとしばらくして、「アポロは月には行っていない」という説が流布されるようになりましたが、これなども世界支配層の常套手段であるカモフラージュの一環だと見ています。彼らが、いろんな手段を使ってでも隠さざるを得ない秘密を持っている証拠と見るべきでしょう。
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