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 [魂の目的]
ソウルナビゲーション
ダン・ミルマン・著 東川恭子・訳
徳間書店
 
 
 信頼の法則

 私たちの中には、「自分を信じている!」と自信たっぷりの人もいるでしょう。けれどもよく考えてみると、自分という人間ではなく、頭に蓄えた他の人の意見や、本や指導者から教えられた知識や理論、信条を信じているだけなのではないですか? 自分を信頼できない人は、科学者や専門家、巫女、予言者、導師などに助言を求め、自分の考えや行動を検証してもらいたがります。自分自身を知るために、生まれながらにもっている内なる知恵に気づかずに、いつまでも他の場所を探し求めるのです。しかし、自分のうちに無限の知恵をくみ出す方法を見つけない限り、心から満たされることはないでしょう。真理を得ることとは、膨大な情報を収めたデータペースを手に入れることではなく、私たち一人ひとりに直接つながる知恵の水路を見つけるようなものです。
 信頼の法則は、自分の内面に存在する大いなる魂と、そこから生まれる崇高な知恵を信頼することを教えます。この法則は、私たちの自我意識を高めるだけではありません。大いなる魂は自分自身の内だけでなく、どんな人にも、そして世界のあらゆるレペルに機能していることを教え、私たちを取り巻く世界に対するより深い信頼を促します。
 大いなる魂への信頼は、既存の宗教にあるような外面的な神を信仰することとはまったく異なります。生まれながら自分に備わった知恵や宇宙の法則を信じ、幸せも不幸も含む人生のすべての過程の存在理由を信頼し、どこに足を踏み入れようと、その下には必ず道が現れると信じることです。
 信頼の法則は、私たちは皆、人が「神」と呼ぶ偉大な神秘の一部であり、一人ひとりのうちに、畏怖すべき力強く賢い不死の「魂」が脈々と息づいていることを教えます。
 私たちが「自分を完全に信頼している」と言う時、大抵は意識的な自己、理性や自我を信じているに過ぎません。しかし、このような自信では、人生の荒波を乗り越えることはできません。意識が利用できるのは、ほんの限られた知識領域に限られているからです。しかし、真の自己信頼、つまり無限の知恵と忍耐と、共感という神秘的なエネルギーが私たちの内にあり、私たちを形作り、私たちを通して現れると信じることができた時、人生の新たな扉を開けることができます。この深遠なレベルの信頼を手に入れた時、「自分」や「他人」と呼んでいる存在はすべて、この崇高なエネルギーの一部であると信じることができるでしょう。そしてあなたの人生はそれ以後全く違った経験となるでしょう。
 宇宙の原理ともいえる、崇高なエネルギー(私は「大いなる魂」と呼んでいますが、どういう名前で呼ぼうと自由です)が、独自の摂理、法則に従って、世界のあらゆる出来事の底流として機能していることが心から信頼できるようになれば、あなたを取り巻く世界とあなたの人生のあらゆる局面を信頼して生きられるようになります。
 私たちは、大いなる魂との結びつきをいつも心の奥底で感じることができます。しかし、それを実感するには、まず頭(知識や理性)の活動から抜け出し、すべての決定を、心(感情や身体の反応に近い、直感や本能の知恵)にゆだねなければなりません。たとえば、どのように行動するかについて決める時、身体の声に耳を傾けるのです。真の自己信頼は、まず自分という存在のすべて、身体、心、感情、精神を絶対的に信じることから始まります。
 私たちは、健康管理の仕方や高度な医療知識など全くなくても自分の体を健康に保つ知恵をもっていることに気づくでしょう。身体の声に耳を傾けさえすれば、その答えはすぐにやってくるのです。
 ロッククライミングのようなサバイバル訓練は、肉体を信頼するだけで、理性が認めた限界を大きく超える潜在能力を発揮できることを教えてくれますが、毎日の生活の中での日常的な試練の中でも、自分の信頼の程度を試し、深い結びつきをはぐくむことは可能です。
 信頼の法則は、理性を信頼することも教えます。しかしここで信頼しなくてはいけないのは、理性の情報を蓄える能力ではなく、崇高な知恵を利用する能力です。私たちの脳は、書類の整理棚やコンピュータとしてだけでなく、どの局の周波数にも合わせられるラジオとして機能します。言い換えれば、情報は「脳から」来るのではなく、「脳を通って」来るのです。
 自分自身を信頼するというのは、余分な知識を払いのけ、最も深いところにある直感を信頼することです。その時、私たちの感性は、潜在意識のメッセージを伝え、不十分な知識しかない理性よりも素早く、より包括的な判断を下し、精神法則として現れる普遍的な叡智を取り出します。
 大いなる魂を信頼する者は、大いなる魂と共に生きることができます。自分への信頼が深まれば深まるほど、崇高な知恵や愛が、人生のあらゆる局面で作用していることを実感できるようになります。本当の自己信頼を手に入れた時、私たちは、私たちが生まれてきた目的を達成するという究極の使命を果たすために、勇気をもって「失敗」を経験し、そこから学習できるようになります。
 私たちの直面する試練は皆、大いなる魂から与えられた学習の機会です。この普遍的な教師は、私たちをさまざまな状況や試練、困難に向かわせ、そのたびに私たちはどの程度、自分を信頼しているか、そして精神法則をそれらの経験から学び取っているかを悟らされます。
 アラン・ワッツがかつてこう言いました。「あなたのポケットからすり取った札入れをあなたに売りつける“教師”に用心しなさい」と。しかし皮肉なことに、人生のあらゆる教師(たとえ善意のかたまりのような人でも)にできることは、まさにこれだけです。なぜなら学ぶべき宝ものはすでに私たちのうちにあり、誰もそれ以上は与えられないからです。教師にできるのは、私たち自身の心の部屋の扉を開ける鍵をいくつか提供し、時間を節約し、進むべき道を示すことだけ。自己覚醒の旅の始まりも終わりも、私たちの心の中にあるのです。
 あなたの人生の専門家は、他の誰でもない、あなた自身です。他人や先人の意見ではなく、自分のうちにある高次の自我、つまり大いなる魂の語りかける声を信じることが究極的に一番あなたのためになるのです。そして、自分と同じように、大いなる魂が他人の心の中にも作用していることを知った時、世の中や他者に対する恐怖感はなくなり、大きな地球家族としての愛情が生まれます。
 信頼の法則を究めることは、宇宙全体を統べる叡智の存在に気づくことにつながります。自分と宇宙全体への信頼を学ぶにつれ、私たちは、あらゆる苦難の中に神の正義を感じ、人生のどんな状況も喜びをもって受け入れられるようになります。私たちが人生で出合う出来事はすべて、私たちが究極的な目的を達成するために、人生が絶妙なタイミングで私たちに贈ってくれた経験だからです。
 
 
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