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 7つのチャクラ
キャロライン・メイス・著 川瀬勝・訳
サンマーク文庫
 
 
 まえがき――直観医療の芽生え

 ‥‥そうはいっても、私はこの新たに発見した知覚能力に魅了されてもいて、人びとの健康状態の診断を続けていかなくてはいけないという気持ちでいた。この初期のころ、私が受ける「印象」は、おもに人の身体上の健康と、それに関連した感情的、心理的ストレスに関するものだった。しかし同時に、その人の身体のまわりを包み込んでいる気を見ることもできた。それは、その人のこれまでの人生に関する情報であふれていたのだ。「気」は、その人の霊体の延長として私の目に映った。そして、学校では教えてくれなかったことに私は気づきはじめたのである。
 つまり、私たちの霊、魂は、間違いなく私たちの日常生活の一角を成しているということだ。それは私たちの思考や感情を体現し、ありふれたものから高いヴィジョンまで、そのひとつひとつを記録しているのである。大ざっぱにいってしまえば、霊は死後、天国に行くか、地獄に落ちるかのどちらかだと教えられてきたが、それだけではないことが私には見てとれた。霊は、私たちの人生の一瞬一瞬に参加しているのだ。それは意識のある力であり、生命そのものなのである。
 私は、人の健康状態を読みとるというこの仕事を、一種の「自動操縦」状態で続けていたが、あるきっかけでこの半信半疑な気持ちは吹っ飛んだ。ガンを患ったある女性とのセクションを行なっていたときのことだ。
 暑い日で、私も疲れていた。彼女と私は、スティルポイント社の小さなオフィスで向かいあって座っていた。診断を終え、それを彼女に話すべきかどうか、私は一瞬ためらっていた。ガンが全身に広がっていると告げるのが、どうしようもなくいやに思えたのだ。彼女が、自分がなぜこんな惨劇に見舞われるのかをたずねるのはわかっていたが、それに答えなくてはいけない自分の責任にもいらだちをおぼえた。果たせるかな、私が口を開こうとすると、彼女は手を私のひざの上に置き、こうたずねたのだった。
 「キャロライン、深刻なガンがあるのはわかっているの。でも、なぜこうなったのか教えてくれないかしら」
 こんな不吉な質問をされて、私の憤りも頂点に達した。そして、「そんなこと私にわかるもんですか!」と言いかけたその瞬間だった。私は、それまで体験したことのないエネルギーで自分が満たされるのを感じたのだ。
 そのエネルギーは全身をまわり、まるで私の声帯を使うために、私をどかそうとしているようだった。目の前にいる女性の姿はもはや見えなくなっていた。自分が小さな10セント硬貨ぐらいまで収縮し、頭のなかにいて、この状況を「ただ見守る」ように命じられているような気持ちがした。
 そして、ある声が私を通してこの女性に語りかけた。
 「それほど知りたいのなら、まずあなたの人生を振り返ってみましょう。人生の人間関係ひとつひとつをたどってみるのです」とその声は言った。「あなたが抱えていた恐れのすべてを、これから一緒に見つめていきます。そして、長い長いあいだ、恐れが支配していたために、エネルギーがあなたに栄養を与えられなくなってしまったのだということをお見せしましょう」
 「存在」は、この女性の手をとり、彼女の人生の詳細を振り返っていった。それも文字どおりあらゆる詳細を、である。取るに足らないような会話も再現した。さびしさに彼女が人知れず泣いたときのこと、そして彼女にとって多少でも意味のあった人間関係すべてについて語るのだった。この「存在」はひとつの強烈な印象を残した。それは、私たちの人生のあらゆる瞬間、その瞬間を満たしているあらゆる知的、感情的、創造的、肉体的な活動、あるいは休息さえも、そのすべてが知られ、記録されているということだ。私たちが思うこと、感じることはすべて、プラスかマイナスか、どちらかの力の源となり、そのすべてについて私たちはきちんと釈明する責任をもつということなのである。
 私はこの荘厳な体験に圧倒されていた。意識のかたわらで見つめながら、祈りはじめた。半分は恐れから、そして半分は、宇宙がもつ究極の意昧での「計画」を目の当たりにしたための謙虚な気持ちからだった。それまでも、祈りは当然「聞かれている」と考えてはいたが、実際それがどういうかたちでなのかはわからなかった。それに、いくら神なるものとはいえ、いかなるシステムをもっていたにせよ、ひとりひとりの人間のニーズ――たとえば金銭的な願いより、病気を癒すという願いが優先だといった細かいことをすべて記録し、きちんと整理しておくことなど、いったいどうしてできるのだろうか? そんなことが私の単純な人間レベルの論理では理解できるはずもなかった。人生のあらゆる瞬間が大きな価値をもち、愛情やさしく記録されていると示してくれた、この「聖なる壮観」に出会う準備など、できているはずもなかったのだ。
 まだ観察者の状態のままで祈りながら、いま語りかけているのが自分でないことをこの女性が気づかぬままでいてくれるよう私は願った。「なぜ私はガンになったのか」という質問に答えられなかったのだから、彼女の過去をなぜ知っていたかを説明することも当然できなかった。祈りを終え、意識をそこから離すと、ふたたび彼女の顔を直視している自分がいた。助けを求めて手を伸ばしてきた彼女と同じように、自分の手が彼女のひざの上にあるのに気づいたが、いつそうしたかは、まったくおぼえていなかった。
 全身がふるえていた。そして私は手をどけた。彼女が口にしたのは、「どうもありがとう。これで私は何でも受けいれることができます」というひと言だけだった。ひと息ついたあと、彼女は続けた。「死ぬのだってもうこわくありません。もう大丈夫です」
 彼女のすぐあとにオフィスを出たが、私はとても動揺していた。スティルポイント社のある建物を囲む美しい野原に歩き出し、私は、たとえそれがどんな結果をもたらそうとも、自分のこの直観能力に協力していくという使命を受けいれようと決心したのだった。
 
 
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