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 快癒力 A
篠原佳年・著  サンマーク出版
 
 
 病人が必ず答える5つのパターン

 毎日、私のところには、いろいろなタイプの患者さんがやって来ます。特に本を出してからは、私の専門であるリウマチの患者さん以外にも、ガン、糖尿病、高血圧などから精神的な病気まで、前にも増して多くの患者さんがみえるようになりました。
 ほとんどの人は私と向かい合うと「先生、この病気は治りますか」「どうすればよくなるでしょうか」などと心細そうに聞いてきます。こういう人ほど、私がいままで本に書いたり、いってきたことに耳をかさないのです。病気や健康、自分の体というものにとらわれすぎていて、ほかの何ものも見えなくなっている。病気から逃れられない典型です。
 私はどんな病気の、どんな症状であれ、いうことは次のことです。
 「いま、楽しくわくわく感じることをしてみたら、どうですか」
 いちばん大切なのは、病気を治そうとか、健康を保とうなどということを、すっかり忘れてしまうことです。そのためには、我を忘れて夢中になることをはじめなさい、といっているわけです。
 ところが奇妙なことに、すんなりとこの話を受け入れるのは、健康な人ばかり。私の本を読んでくれるのも、健康な人ばかりなのです。病気の人は、何度説明しても「薬は一日何度飲めばよいですか」「手術はしないと治りませんか」――そういうことにしか興味を示さないのです。
 私はだんだん気がついてきました。
 病気の人は、自分がやりたいことが浮かばない。わくわくすることが思いつかないのだということです。そこで、私は患者さんに、こうたずねてみることにしました。
 「治ったら、あなたは何をしたいですか」
 その結果、答えは次の5つのパターンしかありませんでした。
 まず、いちばん多いのが「絶句」です。
 「えっ、先生、何ですか?」
 これがいちばん多い。まず、ほとんど、これだと思います。たしかに、医者からいきなりそんなことを聞かれたら、とまどいはあると思います。しかし、ほとんどの人が『そんなこといわれても、急に自分の病気が治るわけがない』と思っているから、絶句してしまうのでしょう。
 ということは、「治っても、特にしたいことがない」ということです。
 何をしたいということもなく、日常生活を送っていたところ、病気になったために、その生活がストップした。だから、病気が全快したら、もとの日常に戻るしかない。つまり、ふだんの日常生活というのは、「どうしても戻りたいというほどのものではない」ということなのです。要するに、ただ川に流されるがごとく、何十年という時を過ごしているということになります。
 2つ目は男性に多いのですが、「仕事をしたい」という答えです。
 これも不思議でした。病気が治ったら、「もう、いまの仕事をやめたい」というのなら、わかるのですが、治っても仕事をしたいという人が多いのです。
 そんなとき、少し意地悪かもしれませんが、私はこういってあげます。
 「申しわけないんですが、病気は治りませんから、いまから仕事をやったらどうですか。時間がもったいないですよ」
 すると決まって、手を大きく振って、「いえ、先生、治ってからでいいですよ」といいます。つまり、仕事というのも、いますぐにでもやりたいものではないようです。
 しかし、仕事をやりたくないとはいえない。やりたくないものを、やりたいと思うように自分をだましつつ、ずっとここまで生きてきたのですから、病気にもなります。
 3つ目は「家事をしたい」というもの。これは女性が「仕事」の代わりに挙げることの多いものです。治ったら夫の世話をしなければいけない、子供の面倒を見なければならない。洗濯ものもたまっているし、お弁当も作らなければいけない……。これらも、「しなければならない」ものばかりで、決して、「治ったら、わくわくしながらやりたい」ものではありません。
 4つ目は、「旅行に行きたい」という希望です。
  ところが、そういう患者さんのカルテを見ると、みんな遠くから来ているのです。九州からも、東京からも、わざわざ倉敷まで旅をしてくるのです。ですから、もう十分に旅行はしているわけです。
 5つ目ですが、もう少し知的な人になると、「人のためになるようなことをしたい」といいます。では具体的にどんなことをしたいかとたずねると、ただボランティアをしたいというだけで、どこの施設で働きたいとか、介護の学校に行きたいとかいう具体的な目標はありません。
 つまり、病気になる前には、何も考えていなかったわけです。
 要するに、多くの人が病気になる、ならないにかかわらず、自分の人生において、特にやりたいことがないのです。
 「今日一日しか命がないとしたら、あなたは何をしたいですか」
 この質問も、同じことです。きっと明確に答えられる人は少ないでしょう。つまり、人はかなりあいまいに人生を送っているわけです。
 「そんなこといったって、金もないし、時間もない」
 そういう人も多いでしょう。しかし、今日一日しか命がないという前提で「やりたいことは何ですか」と聞いているのに、「金も時間もない」と答えるのでは、あまりにも寂しすぎるのではないでしょうか。
 逆に考えれば、人は決して、やりたいことをやって生きているのではないということなのでしょう。
 いま、病気でないあなたにも、同じことがいえます。
 特にやりたくもないことをやっていれば、当然、楽しくなんかありません。人生が面白いわけもない。食べて、寝て、起きて、働くという毎日では身動きができなくなる。そうなれば、それが病気のもとになるのは明らかです。
 
 
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