アメリカの小麦戦略
――日本人の食生活を変えて輸出を増やす!
戦後の栄養教育は、理由なき「欧米崇拝思想」によって、米を中心とした食生活を批判してきたわけです。“意図的な米叩き”ともいうべき運動が行なわれていたのです。
アメリカの対日小麦戦略を最前線で指揮したリチャード・バウム氏は、『アメリカの小麦戦略』を書いた高島記者に対し、次のように話しています。
学校給食の拡充、パン産業の育成など、私たちは初期の市場開拓事業の全精力を日本に傾けました。ターゲットを日本にしぼり、アメリカ農務省からの援助資金を集中させたのです。その結果、日本の小麦輸入量は飛躍的に伸びました。
特に若い人の胃袋に、小麦は確実に定着したものと理解しています。日本のケースは私たちに大きな確信を与えてくれました。それは、米食民族の食習慣を米から麦に変えてゆくことは可能なのだということです。
具体的に行なわれた事業は、キッチンカー(内部に料理台などが取り付けられた大型バス)によって、「小麦食を基本とした料理」の講習会、学校給食のパン導入、パンを焼く職人の育成などでした。そして、それらの事業で行なわれた内容は、「米はいかに悪い食べ物か」を訴えるものがほとんどだったのです。
「日本人は不思議なほど達者である
――ザビエルが日本食を絶賛した理由
パプアニューギニアの高地に生活する人たちは、食事の90%以上がサツマイモで、肉や牛乳はほとんど口にしません。それでいて、筋骨たくましくよく働くといいます。日本の長寿村といわれた山梨県の棡原(ゆずりはら)村の長寿者も、肉や牛乳などはほとんど食べなくても、なんら困ることなく重労働をこなしてきた人たちです。
あるいは、宗教的理由つまり戒律によって「肉を食べない」という人たちが世界にはたくさんいます。しかし、それらの人たちに特別に貧血が多いとか、がりがりにやせて力仕事もできない、などという話も聞いたことがありません。
日本の土を踏んだフランシスコ・ザビエル神父が本部あてに出した手紙には、次のように書かれています。
日本人は自分たちが飼う家畜を屠殺することもせず、またこれを食べもしない。彼らはときどき魚を食膳に供し、ほとんど米麦飯のみを食べるが、これも意外に少量である。ただし彼らが食べる野菜は豊富にあり、またわずかではあるが果物もある。それでいて日本人は不思議なほど達者であり、高齢に達する者も多い。したがって、たとえ口腹が満足しなくても、人間の体質は僅少な食物によって十分な健康を保てるものであることは、日本の場合によっても明らかである。
まさに日本人は肉や牛乳などほとんど口にせずに生きてきたのです。しかも、その歴史は10年や20年ではありません。現在の栄養教育の主張するように、本当に肉や牛乳が健康を維持するために必要なら、とっくに日本人は滅びていてもおかしくはないはずでしょう。
そして、現在の栄養教育からすれば栄養失調だったはずの私たちの祖母は、子供を10人も産んできたのです。それも特別な話ではなく、ごく当たり前の話だったのです。
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