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 脳がよみがえる断食力
山田豊文・著  青春出版社
 
 
 「カルシウム=牛乳」信仰はもう古い?

 「カルシウムを摂るために牛乳を飲む」というのは、ほとんど定説のようになっている。実際、子どもにせっせと牛乳を飲ませる親はどこにでもいるし、牛乳嫌いの子どもは、「牛乳を飲まなきゃ、大きくなれないんだから‥‥」などと叱責されたりもするのが実情だ。
 しかし、
いくら牛乳を飲んだところで、骨のカルシウムが充実するということはない。まず、カルシウムが体の栄養素として使われるためには、吸収されなければならない。吸収されるには、カルシウムを含む食べ物が消化酵素によって分解され、吸収されやすい形になることが必要だ。
 乳類に含まれる成分、乳糖を分解する酵素はラクターゼと呼ばれるものだが、日本人はある一定の時期を除いて、このラクターゼがほとんど働かないのだ。ラクターゼが働く例外的な時期とは赤ん坊の時期である。
 乳児期の赤ん坊は基本的に母乳しか口にしない。栄養素の供給は母乳に依存しているわけだから、必要なラクターゼは活発に働くのだ。ところが、生後1年前後になって離乳がすすむと、しだいにラクターゼの働きが弱くなり、成人ではほとんど分泌されなくなるのである。
 成人になってもラクターゼを持っているのは北欧系の人に限られる。日本人などのアジア系人種、アフリカ系の人はラクターゼが働かないので、いくら牛乳を飲んでもカルシウムは吸収されず、ムダに排泄されていくばかりなのだ。
 つまり、牛乳をたくさん飲むと、カルシウムが摂れて骨が強くなるというのは、大いなる誤解なのである。それを実証する科学的なデータはいくらでもある。25年間かけて沖縄の人たちの健康法を調べた『THE OKINAWA PROGRAM』では、100歳以上の長寿の沖縄の人たちは、ほとんど牛乳を飲まないのに骨が強かったことが報告されている。
 また、1日1,000ミリグラム程度のカルシウムを摂取するアフリカ系アメリカ人と、1日296ミリグラムしか摂取しないアフリカ系先住民の骨折の度合いを比較したところ、前者の骨折率が9倍も高かったというデータもある。「カルシウム=骨の強化」という図式ではとうてい説明できない事実が厳然としてあるのだ。
 さらに、2年間毎日牛乳を2杯飲み続けた女性と、まったく摂取しなかった女性を比較した極めて興味深いデータも発表されている。前者は後者の2倍の速度で骨量が減っている、というのがその結果だ。このデータは、
牛乳は骨を強化するどころか、もろくするということを物語っている。
 これは科学的にも説明できる話だ。タンパク質を多く含む牛乳は、体内で酸を生じやすい。牛乳をガブガブ飲めば体が酸性に傾き、「脱灰」という現象が過剰に起こるリスクを高める。骨や歯のカルシウムが血液中に溶けやすくなるわけだ。骨がもろくなるのは当然である。

 牛乳の問題点はまだある。マグネシウムが少量しか含まれていないという点だ。牛乳のカルシウムとマグネシウムの含有量の比率は、ほぼ10対1だ。マグネシウムはカルシウムを正しく働かせるために極めて重要な役割を担っている。
 一般にはカルシウムとマグネシウムを2対1くらいの割合で摂るのがいいとされるが、私は1対1くらいが理想だと考えている。つまり、牛乳を多飲すれば、バランスはますます理想から遠ざかり、マグネシウム不足を招くのである。
牛乳は体内のミネラルバランスを崩す元凶でもある、といっていい。
  海藻や豆類、野菜などからカルシウムを摂っていれば、ミネラルバランスが極端に崩れることはない。
 我々日本人が何を食べればよいかという判断は、これまで日本民族が長い歴史の中でどのようなものを食べてきたかを考えるところから始めなければならない。これが「食を知る」ということである。
 
 
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