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 マネーを生み出す怪物
G・エドワード・グリフィン・著 草思社
 
 
 新しい世界秩序

 国連という枠組みの中に機能する世界政府を樹立しようとする計画が進行している。提唱者がよく「新しい世界秩序」と呼ぶこのグローバルな政府は、集団主義の原則に立って考えられている。
 国連には2つの権力メカニズムが用意されている。1つは、全ての国の軍隊とスーパー兵器を管理する軍事的指揮命令系統だ。これについては平和と軍縮という謳い文句のもとで実現をめざしている。
 もう1つは、いまはIMF/世界銀行と呼ばれている世界の中央銀行で、すべての国が受け入れなければならない共通通貨を発行する能力をもつ。
 2つのメカニズムのなかでは、マネーのコントロールのほうが重要だ。軍事力の行使は世界政府の武器のなかでは、最後の手段としてだけ使われる野蛮な兵器と見なされている。マネーのコントロールの効果のほうが、メガトン級の核兵器より強力だ。こちらはあらゆる店舗あらゆる家庭にまでゆきわたるが、常設軍はそういうわけにはいかない。国やグループあるいは個人まで正確に狙い撃ちして、ほかには累を及ぼさず、残るすべてには恩恵を施すこともできる。
 マネーの操作は被害者にはほとんど気づかれないから、怒りを買うこともない。それどころか、操り手は高い社会的地位と金銭的報酬を享受できる。これらの理由から、新しい世界秩序ではマネーのコントロールが武器として選ばれている。

 国連の中で育てられる新しい世界秩序は、世界のあらゆる独裁者、軍事政権が参加している。この世界秩序の哲学は、すべての善は国家から生じるという社会主義の教義の上に成り立っている。順応しない者は無理やりに政府の意志に従わせるか、抹殺する。この世界秩序が全体主義に反対できないのは、自らが全体主義だからだ。

 
標的はアメリカ

 新しい世界秩序は、アメリカが独歩行を続けられるかぎり、現実には機能しない。アメリカは陶器店にいるオウシのようなものと見られている。いまのところは、なんとかおとなしくさせているが、いつ暴れだすかと世界秩序プランナーたちは気が気ではない。
 アメリカ国民が世界の政治の現実に目覚めて政府の支配権を取り戻すとすれば、アメリカはまだ離脱する軍事的、経済的能力を持っている。したがって世界政府プランナーたちのなかでは、アメリカを軍事的、経済的に弱体化させることが至上命令なのだ。
 この命令は他の国の指導者からではなく、アメリカの指導者たちから発せられている。CFRのメンバーはホワイトハウスに、国務省に、国防省に、財務省にいて、計画の最終段階を実行しようとしている。これももう1つの破滅へのメカニズムで、十分なはずみがつけば後戻りできない地点を通り過ぎてしまうだろう。
 朝鮮戦争はアメリカの兵士が国連の権威のもとで戦った初めての戦争だった。この傾向は加速され、すでにイラク、ユーゴスラビア、ボスニア、ソマリア、ハイチなどでも、そのような軍事活動がおこなわれている。
 アメリカ軍が国連に吸収されかけているとき、アメリカの核兵器を差し出す動きも進んでいる。そうなれば破滅へのメカニズムが作動する。そうなってからでは、遅すぎて逃げられない。
 同じくIMF/世界銀行はすでに世界の中央銀行として機能している。アメリカ経済は無駄な公共事業で意図的に疲弊させられている。目的は困った人を救うことでも、環境を保護することでもなく、システムをダウンさせることだ。
 かつては誇り高く自立していたアメリカ人もスープの配給所に並ぶ境遇になれば、世界銀行が注意深く手配した「救済」をおとなしく受け入れるだろう。世界通貨はすでにデザインされて、導入を正当化できる適当な危機が起こるのを待っている。これも、そうなってからでは逃げ道はないだろう。
 
 
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