マイクロチップヘのシナリオ
「キャッシュレス社会」の誕生には、これに対応する購買システムを開発し、市民に適当なチップを持たせることが欠かせない。それには、タビストック研究所の行動分析手法で開発した暗示法をメディアに載せて各家庭に流し、そのチップの購入が必要だと思わせることだ。米国でテスト中のシナリオでは、この過程は次のように展開する。
テックス・マーズはこう述べている。「人類は個人を識別するための国際コンピュータシステムに否応なく組み込まれるだろう。このシステムを使えば銀行との取引関係、信用状況、就業状況など、数値化された個人情報に瞬時にアクセスすることができる。そのためにまず、全人類一人ひとりに対し、最先端のIDカードが発行される。それから間をおかず、既存のIDカード、キャッシュカード、運転免許証、クレジットカードが先進技術を使った多目的スマートカードに一本化される。スマートカードは表面に集積回路チップを搭載したもので、そこに電子マネー情報や個人を特定するための諸情報が記録される。このとき、社会はキャッシュレス状態に置かれ、流通貨幣は非合法とされていることだろう。そうなると、売買にはコンピュータ上でやりとりされる金を使うしかないが、その金はもはやサイバースペースに漂う数字でしかない」
現金がなくなり、スマートカードが行き渡ってシステムが完成すると、システム内にさまざまな問題を発生させることができる。例えば、コンピュータ・エラーによって、あるはずの金が消えることもあるだろう(コンピュータにはエラーの発生がつきものであることも、それを意図的に発生させられることも、ともによく知られた事実だ。しかし、われわれ全員が、最終段階つまりはマイクロチップの移植に進むのが必然と思うようになるのなら、先に述べたシナリオがあって当然だ)。そして何カ月か後に電話が鳴り、思いがけず見つかった金が、法的措置によって銀行から正当な所有者に「返却」される旨が伝えられる。それとともに、スマートカードは紛失しやすく、また簡単に盗まれる可能性もあるが、もしそうなると金銭取引も、生活や仕事もままならなくなるとの説明を受けるのだろう。
調査会社のアライド・ビジネス・インテリジェンスでは、スマートカード用マイクロチップの国際市場は2008年までに32億ドルを超える規模にまで成長すると予測している。
フランスでは、85万人の消費者がスマートカードを常用している。日本ではプリペイド電子マネーの「エディ」カードが65万枚発行されている。フランスの「モネオ」カード(このスマートカードは電子マネーをデータとして持ち、パーキング・メーター、自動販売機、あるいは店頭での支払いに使われる。カードと情報読み取り機とのデータのやりとりは暗号化することで保護される)は、カード上の集積回路チップを既存のクレジットカードに搭載することもできる。
最終段階にくると、スマートカードの問題点を解決する方法として、人とカードを直接結びつけるやり方が示される。例えば、カードの代わりに手の皮下への注入が可能な、バイオチップ送受信機とも呼ぶID装置を受け入れるように仕向けられる。それがないと、物を買うことも売ることもできない。
こうして、人間の皮膚下にチップが埋め込まれ、スキャナー機能によって所要な個人情報を読み取る準備が完了する。そして、政府が個人を管理するのに必要なデータがそろえば、人間一人ひとりの制御ができるようになる。
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