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 大東亜戦争の正体
清水馨八郎・著  祥伝社
 
 
 「大東亜戦争」史観と「太平洋戦争」史観

 『笑いと忘却の道』を著したチェコの作家ミラン・クンデラは、登場人物に次のような言葉を語らせている。
 「一国の人々を抹殺するための最後の段階は、その記憶を失わせることである。さらにその歴史を消し去った上で、まったく新しい歴史を捏(ねつ)造して押しつければ、間もなくその国民、国の現状についても、その過去についても忘れ始めることになるだろう」と。
 一国を亡ぼすには、これが一番確かな方法で、刃物はいらないのである。
 西洋白人は、近世、アフリカ大陸や南米大陸の原住民を亡ぼすのにこの手を使った。アフリカは歴史のない暗黒大陸とされて、次々と簡単に滅亡させられていったのである。
 米国は今次の大東亜戦争後、占領政策でこの手を使って日本を亡ぼすのに完全に成功した。すなわち、占領軍が消し去った歴史が「大東亜戦争」史であり、発明し注入した歴史が「太平洋戦争」史である。
 大東亜戦争とは開戦直後、日本政府が正式に決めた名称であり、その中には、昭和天皇の開戦の詔(みことのり)のとおり、この戦争がアジアの安定と自国の平和と繁栄を願う自存自衛の聖なる戦いであることを明らかにし、開戦のやむなきにいたった日本側の正しい史観が込められているのであった。
 敵のマッカーサー司令官は、終戦直後の9月に進駐するや次々に占領指令を出し、昭和20年12月15日の「神道指令」の中で、この「大東亜戦争」という用語自体の使用をも禁止した。
 この指令に基づき、占領政策などに違反する出版物を厳重にチェックする検閲政策によって、「大東亜戦争」という固有の歴史観を持つことを否定し、「太平洋戦争」という新しい歴史観を持つことを強制したのであった。
 これ以後、日本では官も民も、日本古来の自国の歴史観を捨てて、この新しく発明された太平洋戦争史観を正しい歴史として植え付けられたのである。
 GHQのスミス准将は、勝者の立場で独断でデッチ上げた「太平洋戦争史」を強制的に、わざわざ開戦の日である12月8日を選んで全国紙に一斉に連載を開始させた。この虚構の太平洋戦争史は、日本が戦争を開始した罪、日本軍の残虐性、とりわけ南京とマニラでの残虐行為を事実として強調しており、何もかも日本が悪いという史観を日本人に植え付けるのに貢献した。続く東京裁判は、その筋書きどおりに進められたのである。
 この「太平洋戦争」史観の普及にはラジオも使われた。NHKでドラマ化されたラジオ番組「真相はこうだ」が10週連続で放送された。この放送と後の東京裁判を通して、日本人に初めて伝えられたデッチ上げの「南京虐殺30万人」の放送が、国民にとりわけ深刻な心情的打撃を与え、日本人の戦争犯罪堕罪意識の形成に決定的な影響をもたらしてしまった。
 一方GHQの指令は文部省にも及び、この歪められた侵略史観に沿って、教科書が書き改めさせられた。このため以後60年の現在まで、子供たちの教科書が、この押し付けられた侵略戦争史観一色に塗り潰され、今なおほとんど改定されずに現代にいたっているのは、恐ろしいことである。

 
NHK、朝日新聞、岩波書店が反日に走った理由

 このような「太平洋戦争」史観を押し付けるにあたり、GHQが最も活用したのは、情報発信の中枢であるNHKと朝日新聞、岩波書店などであった。これら重要な情報機関には検閲官が常駐し、厳重にチェックするばかりか、占領政策に都合のよい報道を積極的に流させた。
 GHQは占領政策に協力する「友好的な日本人、占領軍に利用できる人物」として数千の文化人をリストアップし、彼らを通して間接的に偏向情報を連日流させた。ここにNHK文化人、朝日文化人、岩波文化人といった反日的戦後民主主義者が生まれ、当時はさかんにもてはやされた。
 同じ日本の文化人の口から、日本の過去の戦争はすべて侵略戦争だ、南京虐殺30万人だ、と百万遍繰り返されれば、ウソでも真実と思わされてしまうものである。
 占領7年間に培(つちか)われたマスコミの反日偏向は「習い性」となって、それらの会社の社是となり、現在になお引き継がれている。たとえばNHKの朝の連続テレビ小説やNHKスペシャルで戦争関連のテーマを扱う時は、必ず日本だけを悪者とする東京裁判史観丸出しで、過去の日本を憎み侮蔑する偏向した内容になっている。当時GHQに育てられた局員の思想が、今もマスコミ界の中枢を占めているのは残念である。

★なわ・ふみひとのコメント★
 岩波書店や朝日新聞が偏向していることは、今日ではだいぶ知られるようになってきましたが、NHKは中立的な放送をしていると思っている人はまだ多いと思います。私の見るところでは、NHKこそがもっとも大胆に「国民を洗脳するための道具」として使われているのです。NHKのテレビ番組は、この本の著者が指摘しているようにニュース報道からドラマに至るまで、日本人の退廃化を促進させるためのテクニックが巧妙にちりばめられています。ただし、地球や自然をテーマとしたドキュメンタリー番組(たとえば「さわやか自然百景」やBSの「日本百名山」など)のなかには、さすがと言える番組もあります。
 問題があるのは報道番組と歴史をテーマにしたドラマで、大半は「百の真理(のなか)に猛毒一滴」といったものです。「うそ」を信じさせるために、誰もが知っている事実をうまくからませてストーリーをねつ造する手口です。それらは、戦後一貫して日本人に間違った歴史観を植え付ける目的でつくられた番組と言ってよいでしょう。「うそも百回繰り返されると真実になる」ということで、私たち日本国民はその「うそ」を信じ込まされ、自らがその「うそ」を広げるための片棒を担いでいる人も多くなっています。文字通り「うそ」の媒介人となって、間違った日本の歴史を広げることを手伝わされている有様です。こうして「本当の過去」を見えなくされてしまった国家と国民の行き着く先が、自分の国に対する誇りを失って、隣国から領土を略奪されかけてもまともに抗議ができない今日の日本の姿なのです。
 
 
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