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 愛国対論
渡部昇一/小林よしのり  PHP
 
 
いまなお日本人を呪縛し続ける「32年テーゼ」――渡部

 日本の歴史を歪めた最大の作用は、1932年にコミンテルンから出された「32年テーゼ(日本の情勢と日本共産党の任務に関する方針書)」で、それが今も私たちを呪縛し続けている。
 当時の日本共産党というのはコミンテルン日本支部ですし、スターリンが出した指令というのは各国の共産党に行くわけだけれども、自国の歴史を暗黒化させるような指令は、日本以外の共産党には出していない。これが徹底した自虐史観の醸成のもとといってもよい。
 スターリンは日露戦争の敗北がよほど悔しかったらしく、そのルサンチマン(=弱者が強者に対する復讐心を鬱積させていること)を日本歴史の暗黒化とそれによる日本民族の弱体化という手段で晴らそうとした。国際共産主義の拡張という美名のもと、当時の知識人や労働運動家はそれに乗せられて自国の歴史破壊をやったわけです。
 何とか持ちこたえていたものが、大東亜戦争の敗戦ですべて引っ繰り返された。混乱のなかで明日革命が起こるかもしれない、粛清されるかもしれない、そういう恐れが日本の知識人や学者に「32年テーゼ」の枠のなかでしか発言をさせない、ものを書かせないようにしました。さらにこれに連合国の「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(W・G・I・P=戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための情報宣伝計画)」が重なって、いわば二重の拘束を日本人は受けることになったわけです。これが日本の戦後の精神史にいちばん大きなダメージを与えた。
 私は38歳のときから1年間フルブライトの招聘教授としてアメリカの4つの州の大学で教鞭を取りましたが、そのときアメリカで生活している日本の青年たちや、アメリカの学校で教えている日本の若い学者たちが、日本について恐ろしいばかりに無知であることを、痛いほど思い知らされました。彼らは大東亜戦争についても日本側だけが一方的に悪いと信じ、日本にも相当の言い分があったなどということについては知識のかけらほどもなかった。
 それどころか日本の歴史、伝統についての知識もまったくなく、したがって日本文化への誇りもなかった。英語は達者なのに何もアメリカ人たちに向かって「日本の立場」や、「日本人とは何ぞや」ということが発信できていない。私が帰国して最初に書いた本は『日本史から見た日本人』というんですが、何たる無知な日本人か、という当時の苛立ちをそのままペンに託した感じでした。いまから30年ぐらい前の話ですね。大方の日本人の共感を得られたのか版を重ねロングセラーとなって、いまは文庫(祥伝社)になっていますけれど、当時はそうした状況に本当に驚いたものです。
 いま、英語教育の充実が盛んに言われていますが、まずは国語と歴史だと私は思います。英語教育で大切なのは、単に英語が話せる、書けるという能力だけではない。何を発信するかなのです。慶応大学名誉教授の鈴木孝夫さんは『日本人はなぜ英語ができないか』(岩波新書)のなかで、「英語で何を習うかより、何を発信するかが重要だ」と述べておられる。
 私はある雑誌からその本の書評を依頼されて、先に述べたようなフルブライト教授時代の話と『日本史から見た日本人』のことを書きました。しばらくして鈴木さんから葉書が来て、そこには、「まったくそのとおりだ。実は私はもっと日本の立場について書いたのだが、岩波は左翼だから大部分が削られた」というようなことが書かれてあった。鈴木孝夫さんは日本の立場の発信を強く主張され、第二次大戦における日本の立場についてもいろいろ書いたけれど大幅に削られたというのです。
 結局、大人が教えるべきこと、子供たちが学ぶべきことは、すべて自国の歴史と文化に根差しているという自覚がなければならないんです。発信する力はそこからしか生まれない。国際化というのはたしかに“ある高み”に至る行為かもしれませんが、それは日本人であることをやめることではない。まずはちゃんとした日本人を育てることが大切です。
 国際化教育とは無国籍人間を生み出すことではない。

★なわ・ふみひとのコメント★(2011年記)
 「32年テーゼ」と言われても、最近ではピンとくる人は少ないでしょう。歴史を幅広い視点から分析している渡部氏の著書には教えられるところがたくさんありますが、戦後の偏向教育の影響で、大多数の日本人には氏の著書に共鳴する力が失われているような気がします。せめて、朝日新聞や岩波書店の発行物がどういう性格を持つ媒体であるかぐらいは認識しておきたいと思います。それらはいまや「左翼(サヨク)」というよりも、「外国に操られた外国のための媒体」というべきものだからです。
 これにNHKを加えると、戦後の日本人を誤った歴史観で洗脳し続けてきた三悪媒体と言ってよいでしょう。今日では、そのような三悪媒体に影響を受けた人たちがテレビ局や新聞社、出版社などの中枢を占めるようになっていますので、ますます一般の国民に真実が伝わらなくなっているのです。


★なわ・ふみひとのコメント★(2012年記)
 
戦後、マスコミを手中に入れた占領軍は、当時の最強メディアとなりつつあったラジオ局の周波数を決めるのにおもしろい細工をしています。国営放送ともいうべきNHKは666。その他の放送局も、構成する数字を分解して合計すると18(=6+6+6)になる周波数を割り当てたのです。たとえば、NHK第2放送は828(8+2+8=18)、朝日放送1008(10+0+8=18)、毎日放送1179(1+1+7+9=18)、ラジオ大阪1314(13+1+4=18)、ラジオ関西558(5+5+8=18)、東京放送954(9+5+4=18)、日本放送1242(12+4+2=18)、文化放送810(8+10=18)といった感じです。
 666は新約聖書のヨハネの黙示録に出てくる数字で、「獣の名またはその名の数字のこと」となっています。しかも、この数字が今日では商品のバーコードの中にも潜ませてあるのはご存じの方も多いでしょう。そのことにどのような意味(呪い?)が込められているのはわかりませんが、マスコミを通じて日本人を洗脳しようと画策した世界支配層が、その手段として使うラジオ局の周波数にまでこだわったという事実については知っておきたいと思います。「マスコミは完全に彼らの手の内にある」ということがわかるからです。

★なわ・ふみひとのコメント★(2013年記)
 日本がいま危機に直面していることを実感させる最大の兆候は、多くの国民が世界支配層による意図的、計画的な洗脳によって、自国の歴史や文化に誇りを持てなくなっていることです。自虐史観を真実として受け入れさせられた大人たちは、子供を正しく導く知識を持たないため、ただ経済的に安定することだけのために子供を育てることになります。その子供たちが大人になれば、さらにその傾向は強められ、「自分たちの先祖は悪い人間だったのだ」という自虐の思いから、国を愛し、誇りに思う気持ちは失われていくのです。これこそ、“彼ら”すなわちスターリンやルーズベルト、チャーチルなどを手玉に使ってこの国を完膚なきまでに貶めた世界支配層のもっとも理想とする姿なのです。今日では政治もマスコミも彼らの手中に握られてしまってますので、もはやこの流れを変えることはできませんが、幸いなことにまだ正しい歴史を著した書籍は残っています。ここに紹介した渡辺氏や小林氏も、そのような正しい日本の歴史を伝えるために努力をされている数少ない人物と言ってよいでしょう。
 
 
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