新・知ってはいけない!?
船瀬俊介・著 徳間書店 2008年刊 

 日本人の“心”が壊れていく‥‥

■“負け組”

 日本弱体化を狙う米国の謀略
 現在、24歳未満の若者の半数近くが非正社員という。
 小泉内閣は「労働者派遣法」を改悪した。これで非正社員の数が爆発的に激増。企業にすれば「正社員の半額で雇え」「昇級させる必要もなく」「いつでも首を切れる」。
 この労働者規制緩和は「米国の対日要求のひとつで、小泉元首相の発案ではない」「政府は、単に米国の圧力に屈しただけ」(『東京管理職ユニオン』設楽清嗣書記長)。つまり、米国の狙いは「日本の国力を低下させて、米国依存型の国柄に転ずるような政策を突きつけ、それを見事に成功させた‥‥」(『週刊実話』08/7/3)
 日本の国力の源泉ともいわれたのが、終身雇用や年功序列制。これを放棄させグローバルスタンダードが日本社会に定着してしまった。これにより金融資本主義下の資本家、という一握りの“勝ち組”と、多くの“負け組”がはっきり区分された。一度負けた若者に復活のチャンスはなく、このままでは日本は凋落の一途を辿る‥‥」(同誌)
 アメリカの悪魔性、小泉の犯罪性――その根は深い。

■親殺し・子殺し

 10年で親殺し92件、そして虐待死‥‥
 「殺してみたかった‥‥」
 これが父親を殺した少年がもらした言葉だ。
 2008年6月、奈良県大和郡山市の会社員(51歳)が長男(17歳)に惨殺された。
 1998年から10年間で、14歳から19歳までの少年が親を殺害した事件は92件も発生している(警察庁調べ)
 さらに成人などによる親殺しや老人虐待殺人を加えれば、この数は激増する。ここでも日本人の心が壊れていく。

 子殺しも激増している。いわゆる虐待死。
 1990年当時は児童虐待などほとんど存在しなかった。それが2005年までの15年間で3万4472件と爆発的に増加。

 虐待ターゲットとなるのは自分より弱いもの、つまり乳幼児とお年寄りに向かう。ここにも家族の絆の崩壊がある。

■白痴化TV ―― 「一億総白痴化」装置に堕落した

 「日本のテレビは食べてばかり」
 「一億総白痴化」‥‥。テレビ普及を皮肉をこめて批判したのは故・大宅壮一。反骨のマスコミ人だった。そして平成の世。彼の危惧は現実のものとなった。
 「ニッポンのテレビは、ドーシテいつも食べてばかりいるんですか?」
 来日した外国人は呆れ果てる。
 確かにどのチャンネルも料理、料理‥‥ばかり。いまやグルメタレントという分野すらある。
 大食いタレントなども続々登場。飢餓モンスターのごとく喰いまくり、もはや末期症状‥‥。

 発ガン食品、肉料理オンパレード
 なぜグルメ番組に肉料理が多いのか? ステーキ、ハンバーグ、牛丼、トンカツ‥‥。私はベジタリアンで肉は食べられない。肉は紛れもない発ガン食品だからだ。
 肉を食べると大腸ガンや乳ガンの死亡率が4倍に、糖尿病の死亡率も3.8倍、心臓発作や脳卒中の死亡率は、いずれも10倍となる。これらは学術報告で否定の余地はない。しかし、テレビで肉食の害を説いた番組は皆無。隠された悪意を感じる。

 石油・穀物・食肉メジャーの圧力
 地球を支配するのは石油・軍事・金融の三大メジャーである。石油メジャーの下に穀物メジャーが存在する。穀物は飼料として畜産市場に流入する。食肉価格が暴落したら、石油メジャーは莫大な損害をこうむる。
 テレビ支配の構図がハッキリ見えた。石油→穀物→食肉→テレビ局‥‥闇の圧力で、肉料理だらけの洗脳番組ラッシュとなっている。
 テレビは玄米正食(マクロビオティック)やベジタリアン料理は絶対放映しない。

 「収穫」「祭り」「動物ネタ」‥‥
 「スポンサーは神様です」。TVマンの口癖。
 だから、広告主に差し障りのある番組は作れない。よって、無難なのは――食べ物、旅もの、バラエティ――とあいなる。ニュース番組に“提供”企業が多い。これは“口止め”と訳すとわかりやすい。
 やはりメジャーに重層支配されている。よって「万引き」「痴漢」‥‥など、ノミ・シラミ級のニュースが垂れ流される。矢ガモ、崖っぷち犬‥‥など動物ネタも、重大社会問題から大衆の目をそらすため使われる。かくしてテレビは、マインド・コントロール装置に堕落した‥‥。

■“洗脳”戦略 ―― 美人、赤ちゃん、動物‥‥総動員

 市場とはバカで構成される
 ある広告代理店の社長が、こう言い放った。
 「――世の中、めあき千人、めくら千人、あとの8千人はバカだ。市場とは、このバカで構成される」
 まだ20代後半だったわたしは怒りで身が震えた。なんという傲慢‥‥。この言葉が、わたしが消費者運動の道に踏み入るきっかけとなったのだ。
 日本のCM権力の総本山は(株)電通。高度経済成長期に突入する前夜‥‥社長は訓辞を垂れた。「戦略十訓」となって、今日にいたる。
 @もっと買わせろ。Aもっと使わせろ。Bもっと捨てさせろ。C無駄づかいさせろ。D流行遅れにされろ。Eきっかけを投じろ。F贈り物をさせろ。G気安く買わせろ。Hコンビナート(組み合わせ)で買わせろ。I混乱をつくりだせ。
 ここでは、表向き、かれらが唱えている「お客様は神様」という姿勢は微塵もない。「バカはこうして洗脳操作しろ」そう「戦略十訓」はハッパをかけている。

 有名人やリアル映像で引きつける
 ただし、バカを“洗脳”するにもテクニックは必要だ。門外不出の“秘伝”をお教えしよう。
★3B戦略
 これは“アイ・キャッチャー3B”といわれる広告の古典的テクニック。つまり人目を引く技術。
 その3Bとは「@ビューティ(美人)」、「Aベイビー(赤ちゃん)」、「Bビースト(動物)」。この3つが広告に登場すると、人間は本能的に目線をそちら向けてしまう。ソフトバンクCMのしゃべる白い犬など、その典型。
★後光(ハロー)効果
 仏像の後ろに光るものが後光(ハロー)。有名人がCMに登場するのは、この後光効果を狙ったもの。その人物の名声、実績に便乗して商品をアピール。こうして、松井が牛丼をかきこんだり、イチローがユンケルを飲んだりするCMができあがる。
★シズル感
 理屈抜きで臨場感いっぱいの映像をリアルに表現。ビールならシュワッ、焼き肉ならジューッ! 五感本能にダイレクトに訴える。
★性的象徴
 本能欲求のひとつ性欲に潜在的にアピールする。たとえばコカ・コーラのくびれたボトルは女性の肉体を象徴している、といわれる。女性が唇に運ぶ口紅は男性(ペニス)の潜在イメージ。
★潜在訴求
 これは消費者の潜在意識に働きかける高等テクニック。放送画面の一コマにだけCM画面を潜ませる。すると消費者は無意識にその商品に手を出す。これは公的には禁止されている。しかし、様々な形で誘因“シンボル”を映像や画面に潜ませる方法はいまだ行なわれている。

■“ゲーム脳” ―― 「生まれてこなけりゃよかった」が5倍に

 仮想と現実の区別がつかない
 子どもの脳が壊れていく‥‥。
 衝撃の報告書があります。『脳内汚染』(岡田尊司・著/文藝春秋)。著者の岡田氏は精神科医。京都医療少年院に勤務している。日本の非行少年矯正現場の真っ只中にいる。
 現場からの報告はショッキング。ゲームに溺れる子どもたちは「仮想と現実の区別がつかなくなる」という。そしてゲームで「麻薬と同様の中毒症状に陥る」という。
 ここで想起するのが2008年6月に発生した秋葉原の通り魔事件。17人を次々に殺傷した容疑者は子どもの頃からテレビゲームに熱中していた。それに先立つ11年前、「酒鬼薔薇聖斗」と名乗って友達の首を切って校門に“飾った”少年A。14歳の彼もやはりゲームに耽溺していた。

 「生まれなきゃよかった」が5倍
 むろん、ゲームに熱中する子どもがすべて異常な凶行に走るわけではない。
 しかし、その脳構造は明らかな変異をみせている。
 岡田氏が東京、大阪などで中学生対象に調査を実施したところ、驚愕の結果が出た。
 「ゲームにはまる子」は「そうでない子」に比べて次のような特徴があった。
「生まれてきてよかった。自分のことを好きだと思う?」との質問に「いいえ」と答えた割合は、なんと5倍!
「人は敵か味方かのどちらかだと思う」に「はい」と答えた子は2.5倍。
「傷つけられるとこだわり、仕返ししたくなる」と答えた子は2倍。

 現実と区別できない“仮想現実失調”
 岡田氏によれば、「こうした兆候の先には現実と仮想の区別が曖昧になり混乱する“仮想現実失調”が待っている」という。
 「仮想現実失調に陥った子どもたちは、現実とはまったく違う世界に生きているともいえる」と岡田氏。
 「それが彼らにとっての現実とさえなっているのだ。現実と仮想の逆立ちが進む中で、同じ人間の生命を破壊することへのもっとも強いタブーさえ失われてしまう」。
 
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