この世界で
いま本当に起きていること
中丸薫 × 菅沼光弘 徳間書店

◆朝日新聞もアメリカの息がかかっている――菅沼

 歴史的な話になりますが、アメリカの対日政策とはなんだったのかをあらためて考えてみたいと思います。占領当初は、要するに「日本を弱体化するにはどうするか」という活動だったわけです。これまでにアメリカはいろいろなことを画策しましたが、その柱のひとつにマスコミ対策がありました。
 例えば竹村健一さん。彼はいまもアメリカの思惑通りに動いている。竹村さんは毎日新聞の英文毎日にいました。英語の勉強で、フルブライトの一期生として留学しました。
 だいたいアメリカは、なぜフルブライト交流事業を設けたのかと言えば、海外に親米派人材をつくるためです。あるいはアメリカの手先をつくるため、と言ってもいいでしょう。
 上院のフルブライト議員が資金を出して始めたわけです。対象となるのは日本だけでなくて、いろいろな国で同じようなことが行なわれています。
 フルブライト交流事業は戦後すぐに始まっています。これまでに世界中で30万人以上の人がアメリカで学んだことになるようです。日本では、1950年代初頭までに、フルブライトの前の制度でおよそ1000人がアメリカに留学。1952年からがフルブライト交流事業にあたり、竹村さんはその一期生です。
 1980年代からは、日本政府もお金を出しています。いまでは、公費で毎年日本人とアメリカ人がそれぞれ50人以上ずつ行き来しています。これらの同窓生は日本人で6000人を超えるようです。マスコミ人だけでなく、教育や行政、法曹界、ビジネス界に入り込んでいます。親米派を育てる目的で実施していますから、留学した人は好むと好まざるとにかかわらず、必ず親米派にさせられてしまうのです。
 彼らが日本に帰ってきたあと、例えばフジテレビならば『報道2001』というような人気番組にコメンテーターとして出演するわけです。まさに竹村さんの代表的な番組ですね。私も何度か報道2001に出演し、いろいろな話をしました。しかし、彼には自分自身の意見というものがないのです。経済なら、ロンドンの「エコノミスト」という雑誌に書いてあることをそのまま自分の意見として言っていましたね。しかも、中国やロシアの批判はしますが、アメリカの批判はまったくしない。
 報道2001で司会をしていたのが、黒岩祐治・現神奈川県知事です。私がテレビに呼ばれていた頃は、黒岩さんが司会を担当していました。彼は、番組の流れを親米寄りに引っ張っていくのです。
 その黒岩さんも一度番組を降りてフジテレビのアメリカ支局へ行ってしまいました。そのあと、帰国して再登板します。日米を行き来して、また新たな情報を仕込んできて、日本でも新たな親米派のコメンテーターをアレンジして報道番組を作るのです。換言すれば日本人の顔をしたアメリカ人をテレビに並べて、アメリカ寄りの情報を発信するわけです。
 イメージしにくい方もいるかもしれませんが、いまでは朝日新聞もアメリカ寄りの情報を発信することが当然のことになっています。朝日も、元朝日新聞主筆の船橋洋一さんがアメリカへ行ったでしょう。彼が朝日の親米化を進めました。

◆マスコミの自虐報道が日本人を変えてしまった――中丸

 実際のところ日本のマスコミは完全に掌握されていると言ってもいいでしょう。CIAの息のかかったコメンテーターたちは、アメリカの批判はしません。それではなんのためのコメンテーターなのでしょうか。
 2001年に私が北朝鮮から帰ってきたとき、フジテレビの『報道2001』が、私に30分間のコーナーを用意してくれたことがありました。そこで、北朝鮮のありのままを話し始めて、北朝鮮にとってイメージのよい話が出てくると、私の話を遮るか、コマーシャルを挟んでくるという……。
 日テレ系列のラジオ日本で長くパーソナリティーを務めていたミッキー安川さんの番組に出たときのことです。彼は忌憚なく質問してくるタイプの方でしたので、それにいろいろ真正面からお答えしていたのです。ところが、あとでその番組を聴いていた人に感想を聞くと、私が話していて、もっと聞きたいところになると、音楽が流れ始める。先ほどのテレビ番組と同じように、北朝鮮のポジティブな話になると、横槍が入るんです。
 そういえば、私も黒岩さんがMCだったときの『報道2001』に出演したことがあります。やはり親米の司会進行でした。
 小泉政権のとき、マスコミはアメリカの言うこと以外は書かなくなりました。あのときは本当にはっきりしていました。下手なことを書くと潰されそうでしたからね。特に日本経済新聞が偏ったと思います。
 要するにグローバリズムの先兵ですわ。アメリカが、日本の金融制度、経済政策などを変えなければいけないとなると、アメリカにとっては、日経新聞から情報を発信するのが手っ取り早いのです。経済界では皆、日経を読んでいますから、日経を読んで「そうか、こうか」と納得してしまうわけです。
 菅沼さんも指摘されていましたが、船橋洋一さんは闇の権力の討議機関、三極委員会の委員にもなっていますね。ですが、元々は朝日新聞もアメリカに牛耳られていたのですよ。
 例えば朝日新聞、毎日新聞や多くの地方紙はリベラル系の論調を持っていますが、彼らも戦前は、日本の参戦を煽り、戦争中は国民に勝利の幻想を抱かせていました。戦争を煽ったというだけで、軍産複合ビジネスに加担している可能性かあると言わざるを得ませんが、戦後は一転。反省して、中国・韓国・北朝鮮寄りの記事を書いているように見えます。アメリカよりも、東アジアの平和に貢献しようとする新聞のように思われています。ところが、それは逆なのです。
 リベラル系の新聞も、戦前から、まさにアメリカ及びそのバックにいる闇の権力の意向をしっかり伝えています。何も変わっていません。リベラル系マスコミの場合、アジアを重視し、反米にも見えますが、実はそうではないという、手の込んだやり方で情報を発信しているのです。
 産経新聞は社長も務めた住田良能さんが編集局長だった頃から変わったように思います。その頃から、安倍晋三政権が成立する頃までに保守論壇の周辺で何か陰謀のようなものが渦巻いたようにも思います。そのひとつが新しい歴史教科書をつくる会の運動です。この運動の裏側でいろいろなことが動いたのではないでしょうか。
 同じグループのフジテレビの日枝久さんは、デイヴィッド・ロックフェラーの系列ですね。デイヴィッド・ロックフェラーの本が出たときに、彼は日本に来て出版記念会のような集まりを開催しました。このときに日枝さんが挨拶をしていましたからね。産経新聞も日枝さんの言うことは聞かざるをえない立場でしょう。キッシンジャー氏が来たときにも、一生懸命案内していましたね。
 新聞報道について具体的に言えることは、まず、普段から中国・韓国・北朝鮮を持ち上げる記事を書きます。一方で、日本を陥れる記事を書きます。こうなると、周辺国は日本の新聞がこう言っているではないか、我々は正しい、優れた民族だ、と勢いを増します。
 日本の国民は、自分たちは間違っている、大した国民じゃない、という思いを募らせていきます。戦後、日本人は、これらの自虐報道により、国際政治を強く主張できないという、おかしな癖がついてしまいました。
特に高度経済成長期を担ってきた世代はそうでしょう。
 GHQが戦前の日本を否定して、戦後はますます闇の権力のよき下僕となるように様々な政策を遂行してきたわけですが、教育の面からは日教組を組織することで、それを実現させようとしてきました。この日教組とリベラル系のマスコミが足並みを揃えて自虐史観を子どもたちに植え付けてきました

◆保守路線の産経新聞も親米派に成り下がった――菅沼

 情報の発信の方法が変わったという面があります。船橋洋一氏が日本に帰ってきてからしばらくして、2010年に新聞社を辞めました。それから朝日新聞もすっかりスタイルが変わったのです。表現が直接的なんですね。驚いてしまうくらい、朝日新聞も変わってしまいました。リベラル系新聞もかつては手の込んだ方法で自虐史観を打ち出していましたが、そういうスタイルか必要なくなったのは、時代の変化なのでしょうか。あるいは、リベラル姿勢で押す政策が行き過ぎたということなのでしょうか。親米ぶりが直接的になっている。
 そして、いま一番問題なのが産経新聞です。保守路線の産経がなぜこのようなまでに親米になってしまうのか。そこには経営的に苦しくなっていくマスコミ業界の事情も少しながら関係しています。
 1990年代から続く不景気はマスコミ業界の経営もどんどんと追い込んでいきました。いまでも広告は減り、読者も減る一方です。各社とも厳しい状況ですが、産経新聞もご多分に漏れず、住田良能さんが社長だった2007年頃から2009年頃まで大幅なリストラを敢行しました。記者もかなりクビを切られました。このリストラのときに反米保守の記者は切られてしまって、みんな親米保守ばかりになったという背景もあったのです。つまりメンバーがすっかり変わってしまったことでより親米か先鋭化し、エスカレートし続けているわけです。
 TPPにしても何にしても、アメリカのやることは全面的に賛成。それは産経新聞に限ったことではありません。日本の新聞は、もはや批評精神を失っています。「オール賛成」と言っても言い過ぎではありません。

◆道州制やTPPは、闇の権力のアジェンダです――中丸

 IMFと消費税について話を戻しますと、闇の権力とともに力の弱まっているIMFは、中川昭一さんを抹殺したあとも、性懲りもなく今度は消費税の増税により、日本の人々からお金を集め、闇の権力を支えようとしているのです。それが消費税増税の正体です。
 そのことがわかっていても、中川さんの抹殺のことなどもあり、もう闇の権力には逆らえないと政治家たちは思っている。だけど、消費税増税に突き進んでいく誇りなき政治家は選挙で落選させましょう。ちなみに野田佳彦さんの場合は、誇りがないどころか、アメリカとIMFがつるんで財務省を動かして首相を動かす構図です。IMFと消費増税とTPP。これら三つの大きな政治的選択についてどうしようとしているか、これは目安としてわかりやすいと思います。アメリカや闇の権力に何の目的があるのかを考えて、それに従おうとする政治家には票を入れないようにしなければなりません。反TPP、増税反対、脱原発を掲げる政治家は日本のことを考えていると思います。
 そうは言っても、既成政党の政治家はずいぶん迷っています。多分に勉強不足があると思いますが、真実を知らない国民もまだまだ多いですから、有権者の要望を聞いても迷ってしまうことは多いのだと思います。
 そんななか、橋下徹大阪市長のような人物が登場しました。まだその正体は確かには見えないのだけれど、頭脳も明晰で、家族思いで、若さやエネルギーもあるとあって、国民全体に期待させるような雰囲気も醸し出しています。
 そこで彼は信用できるのか。橋下さんはTPP賛成と言っていますし、道州制の導入も主張しています。残念ながら要注意人物だと認識せざるを得ないのです。
 道州制やTPPは、闇の権力のアジェンダです。特に恐ろしいのがTPPですね。これを受け入れれば、日本は息の根を止められるようなもの。橋下さんはそれを理解していないのではないかしら。
 さらに、闇の権力は、中国も9つぐらいに解体したいと考えています。
 日本は江戸時代、幕藩体制を採用していたため、行政は独立していました。幕末に、欧米の列強がそれぞれの藩に圧力をかけ、それが明治維新につながります。尊王攘夷派と佐幕派に分かれ、薩長も仲の悪い時期がありました。戊辰戦争を発端とする長州と会津の仲は、現代にいたっても解消されていない面があります。太平洋戦争が終了した際、北海道や沖縄を独立させようという動きもありました。
 しかしながら、日本は天皇制による君民共生の國體によって、根本がしっかりと結束していましたので、いずれのときもバラバラになることはありませんでした。だから日本の場合は道州制を導入しても大丈夫だという見方もありますが、その一方で、GHQが日本に与えた憲法により、家族や地域コミュニティの破壊が進んでいます。以前のように日本の結束力は強くありません。このうえ、さらに道州制を導入するのはリスクが高いのです。

◆自殺率で一万人に三人を超える韓国の異常さ――菅沼

 道州制は国家解体の思想です。さらに言えば、国家を解体へと招く政策です。私も中丸さんの考えに異論はありません。
 TPPについては、それがいったいどういうものか、中野剛志さんやいろいろな方が本を出していますね。
 日本の国民は愚かではありませんから、新聞の情報はおかしいのではないかということを感じ始めていて、TPPに参加することがよいとストレートに感じている人はいないと思います。国民側はTPPを推進しようという空気ではありません。単に農家が猛烈に反対しているというわけではありません。それは、多くの人が感じています。昨年の総選挙でも、TPP参加を声高に叫ぶことなどなかった。やはりそれは票が減るからですよ。いまとなってはもう政府は、TPP参加の方向へ向かってしまっています。
 TPPは、とにかく非関税障壁に対しては容赦なく攻撃することに注意しなければなりません。問題は、お米の関税などと矮小化して考えてはダメで、要するに日本という国をあらゆる意味で解体していくことを目的とした協定なのですから。郵貯、簡易保険、共済制度、医療制度。そのほか、日本の制度すべてを解体します。
 最後には非関税障壁と称して、日本語も問題となります。例えば地方自治体の事業も狙ってくるでしょう。地方自治体の六億円以上の公共事業にアメリカの企業も参入できるようになると、地方自治体のつくる入札関連の文書はすべて英語にしなければいけません。
 ちなみにTPPに二の足を踏んでいた日本政府に対し、アーミテージ氏はかつてこう言い放ちました。「TPPがダメならNAFTAに入れ」と言うのです。本音丸出しですよね。アメリカ、カナダ、メキシコの北米自由貿易協定です。そこへ日本も入れというわけです。それではまさに日本はアメリカの1州じゃないですか。そこまで言い出しました。メキシコなどもNAFTAの犠牲者です。
 話をTPPに戻しましょう。TPPによる市場開放を突き詰めていくとどうなるか。「日本語が最大の非関税障壁だから、公用語は英語にしなさい」と迫ってきます。現実に企業でそれを実施しているところも目立ってきました。先を行っているというべきか、アメリカの要求を理解している会社と言うべきなのか、楽天やファーストリテイリングが、会社内での公用語を英語にしている。すでに日本のなかで日本語が公用語ではなくなりつつあるんです。
 つまり、日本はアメリカの一州にされてしまうということです。アメリカと一体的な経済・文化・社会になれという指令を発しているのです。こうなれば、アメリカは日本を、アメリカ国内市場と同じように扱えるようになるわけです。アメリカにとっては、まさに障壁はなくなり、日本という優良市場での商売が格段にやりやすくなります。日本にとってみれば、先人たちが文化、伝統として決めてきたこと、育んできたものがすべてご破算になるということです。
 その事実を、政治家はキチンと知らないのだと思います。
 事実、野田さんはTPPについて何も知らなかったという話を聞いています。アメリカからの要求について報告は受けているのですが、「それはどういうことなのか?」と問うたというのです。自分では理解できないのです。うすうすわかっていても、TPPが日本の制度解体だと確信するのか恐ろしくて、わざとわからないふりでもしているのでしょうか。
 TPPを結べば、日本の社会はいったいどうなるか。いまの韓国を見ればわかります。韓国は、李明博前大統領がアメリカとの間でFTA条約に調印しました。そのために、韓国はどうなったでしょうか。
 あまり報道されていませんが、韓国社会はいま、大変乱れています。報道を見聞きしていると、韓国の企業は世界にシェアを伸ばし、調子がいいかのような印象ですが、実際の韓国経済はボロボロです。サムスンは儲かっていますが、ほかに儲けている会社は実はほとんどないのです。優良企業と言われていた会社の不良債権も相当溜まってきているようです。2012年の春から夏にかけては、貯蓄銀行が何行も潰れています。
 おまけに、実はサムスンは韓国企業ではありません。外資のものです。54%が外国の株主です。どんなに儲けても、利益は全部彼らの手に渡っていきます。
 一方、韓国の社会情勢はどうなっているか。これがものすごい格差社会になっているのです。実際の経済は疲弊していますから、若者の就職口がありません。就職口がないために、彼らが社会を乱し、治安悪化を招いている状態です。
 韓国の新聞にも書かれていますが、性犯罪も残酷極まりない。20代の若者が、自宅で睡眠中の7歳の女の子を布団ごと引きずり出して持ち出し、暴行して腸を破裂させそのまま道に捨てるといった犯罪が起こっています。登校中の10歳の女の子は連れ去られ、暴行された末、殺されています。痛ましいことです。
 韓国はレイプ事件の多い国ですが、さすがにこれはなんたることだと大問題になっています。ちなみに韓国のレイプ事件は年々増えていて、2011年は約2万件あったというデータがあります。毎日50件を超えるレイプが起こっている計算です。日本は年間で1200件弱、日毎3件程度です。人口比で見ると韓国でのレイプは日本の約40倍です。
 日本も毎年3万人の自殺者を出しており、大きな問題なのですが、人口10万人当たりの自殺率を見ると、韓国が世界でもっとも高いのです。1年に1万5000人以上が自殺で亡くなっていて、全死亡原因中、およそ三分の一が自殺だという異常さです。WHOのデータによると、自殺率で1万人に3人を超えるのは、韓国とリトアニアだけです。
 それだけ韓国の人々は生きていくのに辛い社会、あるいは自殺に追いやられる非情な社会環境があるということです。脱北者が韓国の生活に耐えられず、北に戻るという事例さえ出てきました。

◆アメリカの要求する「市場開放」は恐ろしい――中丸

 李明博氏は、まさに国を売り飛ばしてしまったということです。韓国で起こったことが日本でも起きようとしています。韓国も日本も全部アメリカに支配される状況が迫っています。あらためて米韓FTAの恐ろしさを紹介するとすれば、やはりいわゆる「毒素条項」と言われているものですよね。市場開放はもちろんですか、一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せないという条項があるのです。
 例えば、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できません。市場開放を決めたらそうするしかない。
 韓国に投資したアメリカの企業が、韓国の政策によって損害を受けたり、期待した利益を得られなかったりした場合には、国際機関に提訴して、韓国の法律の下では裁判しないという決まりもあります。要は、アメリカが「市場開放せよ」といって、まずいろいろとねじ込んできて、効果がなければ韓国に文句を言うという決まりです。FTAはまさに韓国という国の独自性を奪う屈辱的な協定です。日本における脅威が、言うまでもなくTPPなのです。
 アメリカの企業やアメリカ人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先して適用せよという条項もあります。韓国法では、日本と同じように公共企業やテレビ局などに、外資を制限していましたが、FTA締結後はもうこのようなこともできません。メディアも完全に乗っ取られてしまうことが現実に起きようとしているわけです。

◆韓国の金融機関はどれも「外資系」――菅沼

 韓国では、2012年4月に総選挙がありました。それまではおもに野党の人たちが、FTAに反対する声を挙げていました。ところが、野党は負けてしまった。そのために韓国はFTA賛成へと流れて行きました。どの国も、与党はアメリカに従属していくということになるのでしょうか。それだけアメリカが他国の政界に食い込んでいるということの表れでもあるのですけれど。
 FTAにしても問題は山積みです。現在、アメリカ産牛肉を世界でもっとも輸入している国は韓国です。それこそ、品質はまともなものから劣悪なものまで、様々な牛肉を韓国はアメリカから買っています。かつては日本がそうでした。しかし、現在は韓国がアメリカンビーフの最大消費地なのです。
 2011年10月。FTA批准に向けて、オバマ大統領から渇を入れられたか、何か引き換えになる利権の話でもされたかはわかりませんが、ちょうどFTAが結ばれる前に李明博氏かホワイトハウスを訪問しました。表向きには大歓迎を受ける形でしたね。オバマ大統領による歓待がありました。
 このときの晩餐会の料理に出たのがオバマ大統領自賛の牛肉でした。だがメニューのなかで使われた牛肉は高級和牛だったという笑い話があります。
 日本企業になりすまして世界に物を売る韓国企業や、執拗に反日を繰り返す韓国の元首に対しての痛烈な皮肉だった可能性もないことはないでしょう。おそらくアメリカ人の大雑把さでもあり、同時に韓国も日本も同じだろうという程度のセンスがやらかしたことだとは思います。晩餐の担当者にしてみれば、一番うまい牛肉を出すには、やはり和牛しかないだろうという程度のノリでしょう。
 というより、アメリカは食い物にしてしまおうという国に対して、この程度の扱いをするのです。とりあえず、うまいもので歓待しておけばいいだろう、という発想止まりです。
 うまいものでもてなすことなど、別に国賓の接待に限るようなことではなく、普通どこでもやっていることですよね。ホストが、よほど日本をよく知っている親日家でもない限り、日本の総理大臣や要人に対する態度も同じだと思いますよ。ましてや韓国人に対する接待について深い配慮が利く人などいないでしょう。
 ですが、いまからアメリカの商品をたくさん買いますよ、という韓国に対しては、礼を失した結果になってしまいました。おまけに反日を振りかざして人気を取ろうとする李明博大統領ですから「和牛を出すとは何事だ」とさすがに怒らせてしまった。でも、こういうことがあっても結局韓国はアメリアにへつらい、FTAをのんだわけです。
 サムスンとアップルの戦いは、アメリカではアップルに完璧に負けて、ものすごい賠償金を払わなければいけなくなりました。アメリカでは、スマートフォンのデザインや技術特許について、アップルとサムスン電子が互いに訴えていましたか、カリフォルニア州連邦地裁は、アップル側の主張をほぼ認めて、サムスンに日本円にしておよそ800億円の支払いを命じています。
 サムスンは控訴するかもしれませんが、厳しい結果が待っているのではないでしょうか。サムスンとアップルの訴訟は世界で繰り広げられていて、判決はいろいろですが、アメリカでは勝てません。
 これがアメリカの裁判所のやり方なのです。しかもアメリカのやることは本当にうまいと思うのですが、この判決を出したカリフォルニアの裁判所の判事は韓国系のアメリカ人の女性なのです。アメリカのロー・スクールを出て、女性としては珍しく判事に採用されています。もちろん陪審員制で行なわれた裁判ですが、訴訟指揮をするのは韓国系アメリカ人の女性判事だったのです。
 この女性判事がサムスンの弁護団に対して、ものすごく怒ったわけです。「あなた方の言い分は何事だ」と。その結果、陪審員は圧倒的多数でサムスンを特許違反としました。韓国人判事が場の雰囲気を支配すると、韓国側も、アメリカはけしからん、と言えないような気持ちになるのです。アメリカはそういうやり方をするのです。
 世界銀行もそうです。世銀のトップに韓国系のジム・ヨン・キム氏を据えました。こういう環境設定をしておいて、韓国には世銀の政策に対して有無を言わせず、潰していくのです。
 韓国の金融機関である韓国第一銀行は、外資100%です。90%、70%の外資が入った銀行もたくさんあります。もっとも少ない銀行でも34%が外資です。言ってみれば、すべて外資系金融機関なのです。韓国の一般企業もほとんどの資金を外資から借りています。サムスンを含めて、借金ばかりしています。特にヨーロッパの銀行からたくさん借りています。
 外資は吸い上げるだけ吸い上げて、少し傾いてくると、さっと引き揚げていきます。韓国企業の調子が悪くなったときもそうですが、欧州経済が傾くときも同様です。実際、ヨーロッパが危機に陥ったとき、引き揚げてしまったのです。こうなると途端にウォン安になります。リーマン・ショックのときほどではありませんが、2010年も2011年も急激に下げたり徐々に戻したりしながら、全体的にはウォン安傾向があります。
 ウォンはこのように不安定な通貨ですから、例の日韓通貨スワップ協定は、日本が韓国を支える手段として、中長期的にものすごく効果を発揮します。ウォン安が止まらなくなりそうなときに、韓国はウォンの担保を差し出し、日本はドル買い介入で溜まっているドルを貸し出します。
 日韓貿易では日本が儲かっていますので、韓国を支える意義はありますか、発動したあと、韓国は日本が融通した資金を返済できるのかという懸念はあります。しかし、いざとなったら日本が韓国を助ける準備をしているというだけで効果はあります。
 この協定は、2011年にウォンか急落していたときに、たまたま野田さんが、例の李朝の儀軌を李明博氏に渡しにソウルに出向いていたために、ついでに協定も結んできてしまった格好です。その額は、700億ドル。五兆円超ですから、ものすごい額です。ほかにも日本は韓国に巨額の債権を持っていますから、これについてそんなに騒ぐこともないのですが、韓国には借りたものは返すようにと言っておきたいですね。
 ちなみに韓国側から「返せ、返せ」とうるさかった李朝の儀軌を日本は渡してしまったために、今度は日本の国立博物館にある4000点以上もの文化財を渡せと言うようになりました。
 日韓通貨スワップ協定については、増額設定分の570億ドルの契約をやめ、130億ドルの協定に戻しました。韓国の国債を買うこともやめました。韓国にしてみれば、李明博大統領の暴言や竹島上陸で墓穴を掘ったわけです。これから韓国は、日本に対して、また世界に対してどのような外交をしていくつもりなのでしょうか。
 隣国は社会的にも経済的にも、さらには政治的にも最低・最悪の状況になりつつあります。このため、韓国は再度、李明博前大統領が仕向けたような反日を繰り広げなければならなくなるかもしれません。それで国内の状況の悪さをエスケープするのです。もっとも、中国の反日活動も条件的には近いものかもしれませんが。反日をやれば、日本はそれなりの対応をせざるを得ません。反日か終わると、最悪な状況の内政にげんなりするしかない。第一に、経済的な凋落は深刻です。反日をしたところで本質的な解決にはならない。韓国は負のスパイラルに巻き込まれてしまっていますね。

★なわ・ふみひとのコメント★
 復活した自民党の安倍政権のもとで、日本もTPPへの加盟を決めました。その結果何が起こるかということが、日本に先駆けてアメリカと自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国を例にとって紹介されています。その後、アメリカはトランプ政権のもとでTPPではなく国と国との自由貿易協定を結ぶように方針を転換しました。これはまさに韓国が結ばされたFTAと同じ内容になるでしょう。ということは、いまの韓国の姿は明日の日本の姿だというわけです。多くの若者にまともな仕事はなくなり、社会はますます退廃化していくのです。そのような社会は韓国だけでなく、いまや世界中に広がりつつあります。そしてそのひな型は、なんとアメリカそのものにあるのです。アメリカ政府は闇の権力(世界支配層)に乗っ取られていますので、TPPなどの自由貿易協定によって加盟国から利益を吸い上げても、それがアメリカ国民に還元されることはなく、多国籍企業の懐が潤うだけなのです。最近出版された『(株)貧困大国アメリカ』(堤未果・著/岩波新書)を読むとその実情がよくわかります。彼ら世界支配層がこの国をどのような国にしたいと思っているかを知る上で参考になります。
  しかしながら、そのようなことがわかっていたとしても、もはや日本の政府はこの流れに逆らうことはできないのです。ささやかでも抵抗しようとすれば、中川昭一氏のように、自宅で葬り去られることになってしまうというわけです。別に危機を煽りたいわけではありませんが、多くの日本人がこのような現実を知らないまま、操られたマスコミの報道に洗脳されてノー天気な日々を送ることはあまりにも悲しいことなので、あえてご紹介しました。
 
 [TOP]