般若心経の宇宙論
コンノケンイチ・著 学研 2006年刊 

 王仁三郎の大霊界を構成する10の法則

 王仁三郎は大霊界の法則を次のように述べている。

法則@ すでに私たちは霊界にも生きているし、だれでも霊界と通じている。

 われわれはあの世の記憶を消去されているので、自分がどこから来て、どこに帰るのかわからないでいる。ゆえに外部世界(霊界)と密接に通じ合っていることなど知る由もない。いつも私たちは霊界から監視され、その影響下にあることを忘れてはならない。

法則A 霊界で起こることが、時をおいて現界に移写される。

 人間は絶えず霊界と通じ合い、そこからの干渉を受けつつ生きている。したがって、この世に現象として現れるすべては、霊界からの投影だといえる。ただし霊界での動きが先で、霊界で起こらないことは地上でも起こらない。また霊界で起こったことがそっくり地上に移るのでない。この世は、天国界と地獄界を総括した、三千世界(大霊界)の一大縮図といえるのだ。
 この世で起こることも反射的に霊界にフィードバックされるが、あくまでも主体は霊界というのも同じ意味である。この世は大霊界と従属する関係にあり、仏教でいう「霊主体従」と呼ばれる法則は宇宙の大きな真理なのである。

法則B 霊界とは、個々人の意思と想念の生みだす世界である。

 霊界は波動の世界で、個々人のもっている想念がストレートに現象化する世界である(これが量子物理学の波束の収縮である)。
 霊位の高い善良な精神の持ち主なら想念どおりの善の世界が展開するが、悪い想念をもつ霊位の低い人は悲惨で残酷な世界が展開することになる。この世でも、自分自身の意識や行動が徐々に現象化され、周りに現実化されてくることはだれも否定できないだろう。
 「メグリ(巡り)と申すのは、自分のしたことが自分にめぐって来ることであるぞ。メグリは自分でつくることぞ。他を恨んではならん」と王仁三郎はいう。

法則C 個人の想念(霊質)に応じて、無数の霊域が存在する。

 この世の人間は、自分の霊質に応じた霊界と無意識下で交流している。その違いは十人十色、千差万別であるから、霊界には無限とも思える多種多様な霊層や霊域が存在すると考えればいい(これが仏教でいう三千世界である)。何ごとも霊界に本源があって、そこでの思念がこの世の人間や物質に反映され、それがまた反射的に霊界にフィードバックされていく、というものである。

法則D 霊界では似たもの同志が相交わり、集団を形成している。

 霊界では個々人の本性によって、定まったひとつ境域を形成している。それがまた無数の段階に分かれており、したがって同じ境域に住む者たちは、同じ質のバイブレーションを有していることになる。
 霊質の高いもの同志が集まった天国的な霊域、一般的な想念が結集した精霊界、下層には餓鬼、修羅、畜生界の者たちの想念が形成する地獄界、それぞれが無数の段階に分かれて万華鏡のように多彩に存在することになる。
 この状態に入ると、悪的なものはますます悪的なものを発揮し、善的なものはより善的な力を発揮するから、霊界では同一の環境に住むことはできない。その縮図が、この世という特殊な霊界だったのである。

法則E この世でいう時間・空間の概念が霊界にはない。

 霊界では太陽は動かず、天の一点に留まっており、その明るさには変化がない。地上のような四季もなく、周囲もあまり変化しない。ただし、霊界での変化が地上界に波及し、時間的な推移となって現象化されてくるのだという。同じく、霊界では空間の感覚もない。どんな遠くでも思っただけで瞬時に移動できるし、意識も瞬時に通じ合える。
 これが量子物理学がきわめた非局所性の原理で、鋭意実用化を目指している量子コンピューターや量子通信である。

法則F 霊界には無限に近い階層があり、神(界)に近いかどうかで高低は決まる。

 高い霊界の境域は天国界(仏教でいう神界・仏界)で、中間層が精霊界、低い境域は地獄界(修羅、餓鬼、畜生界)で、上に昇るほどに神の領域に近づいていくが、それは宇宙そのものである最高神、仏教でいう大日如来に象徴される。したがって霊層の高低は神からの波長に近いか遠いかを意味し、神から離れるほど波長は粗く濁ってくる。
 そしてこうも述べている。

 人間が死んで霊界に行くと、初めのうちは現世の感覚や記憶を有しているが、それは徐々に薄れて霊的な感覚が増してくる。この段階に入ると、どんなごまかしもきかなくなってくる。自分の本性をさらけだし、美しい心の人は顔や衣服から光輝を放ち、汚い心の人は顔や容姿に醜さが露骨に出てくる。

法則G 神界から遠い霊界は、まもなく消滅させられる。

 王仁三郎は「この世は天国界よりも地獄界の干渉を強く受けており、人の霊質はどんどん劣化している」という。戦後における世相を見ても、どんどん人の霊質が低下しているのがわかる。それも今までは必要悪として許容されていたが、まもなく「神より遠く離れた霊界」すなわち地上界(現世)と隣接する幽界(バルドー)、その大本である地獄界は淘汰され、消滅することになっているという。しかし通常人の行く精霊界といえどもその下層は地獄界で、その意味では正しき人間の霊魂が帰属するところではないのである。
 元来、神性を有する人間はこの世の刑期を終了すれば、当然の帰結として天界に帰ってこなくてはならない。ところが、自分の歪んだ霊質に相応する下層の霊界に移り住む者が増えて、天界に帰る者がほとんどいなくなってきているという。これは由々しき事態で、霊界ではどんどん地獄界の勢力が増大しているという。
 この世がいかに天国界の姿からかけ離れ、地獄界のそれに近いものとなっているかは、現今の世相を見れば容易に理解できるだろう。

法則H 人類に降ろされる終末予言は、すべて霊界に端を発している。

 人類の終末は、イエス・キリストの預言、釈迦の予言、ファティマの預言など、多くの霊示によって人類に知らされてきた。すべてが近い将来、神から離れた人類の終わりを警告している。つまり終末とは「神から離れた霊界」の淘汰を意味しているのだ。
 この世は、すでに神より遠く離れた地獄界からの干渉を強く受けるようになってきており、そのため、まもなく幽界とともに淘汰されることになっているという。ただし、人類全部ではなく、一部は神界に引き上げられるという。
 王仁三郎は次のようにいう。

 霊界とは想念の世界であって、時間空間を超越した絶対世界である。この世はすべて神霊世界の移写であり、また縮図である。霊界すなわち精神世界の万象を写し出したのが現界すなわち地上界で、ゆえに現世を称してウツシ世(写し世)という。
 今度は神と悪との力競べぞ。天地ひっくり返る大戦となるのぞ。残る一厘は誰も知らぬ所に仕掛けてあるが、この仕組、心で取りてくれよ。
 日本ばかりではないぞ。世界中はおろか三千世界(全霊界)の大洗濯と申してあろうがな。神にすがりて、神の申す通りにするより外には道はないぞ。
 立て替えと申すのは、神界、幽界、顕界にある今までのことをきれいに塵一つ残らぬように洗濯することざぞ。今度という今度は、どこまでも綺麗サッパリと立て替えするのざぞ。政治も経済も、何もかもなくなるぞ。食べるものも一時は無くなってしまうぞ。覚悟なされよ。
 大掃除はげしくなると世界の人民、みな仮死の状態になるのじゃ。今の科学のままでは岩戸は開けんぞ。今の肉体のままでは人民生きていけんぞ。一度は仮死の状態にして、魂も肉体も半分のところは入れ替えて、ミロクの世の人民として甦らす仕組、大地も転移、天も転移するぞ。


 人類終末の予言者たちは、その原型を霊界からのバイブレーションで垣間見て、元型の霊界がこの世で顕在化され、現象として具現化されることを知っていたのである。
 王仁三郎は「大三災(終末核戦争)は民族問題から起こる」と予言していた。世界を震撼させた9・11、それに端を発したイラク戦争、すでに終末現象は起こっていると考えていいだろう。

法則I 私たちは現世で霊質を上げることができる。

 霊界の天国には天人や天使が住み、最下層は地獄界の住人が住んでいる。
 そこでは、みなが固有の同一バイブレーションの霊域にあるため、個々の霊質の変化は困難といわれている。しかし現世ではだれでも全霊界と通じているので、自分の想念次第で霊質を上げることが十分に可能なのである。
 量子物理学の実験で、全霊界はミクロの隅々に浸透して、この世に滲みでていると述べた。つまり、天国界や地獄界のバイブレーションが渾然一体に入り混じり、われわれの肉体(脳)を常に浸潤しているのだ。いずれを選択するのかは自分自身で、地獄界からの想念を好めば自分の霊質も地獄界に近くなり、死後の霊界レベルもそれに準じてくるのである。
 この世に生きていることは、自分の霊層を高める大きなチャンスでもあるが、逆に危険でもある。いったん刑務所に入った者は獄内の悪気に染まって再犯を繰り返すのと同じで、現代は残念だが後者のほうが多くなってきている。それが同じような意味で、この世と霊界を合わせた大掃除(戦争)につながっていくのだろう。
 そうしたことを、王仁三郎は次のように述べている。

 すべての人は死して後、天国浄土に昇り行く。
 無限の歓喜に浴すべき、人間特有の資質あり。
 暗黒無明の生涯を送るものほど悲しみの深きものこそ無かるべし。
 第一死後の生涯に対して無知識なることは、悲哀の中の悲哀なり


★なわ・ふみひとのコメント★ 
 「色即是空、空即是色」の言葉で知られる般若心経は、膨大な仏教経典のエキスをわずか276文字の中に凝縮したものと言われています。その意味するところの解釈は大変難解とされてきましたが、コンノケンイチ氏は最先端科学のメスを入れて見事に解釈してくれました。また、この本の中で、コンノ氏はアインシュタインの相対性理論が大変問題が多いことをわかりやすく説明してくれています。知的好奇心旺盛な方にはぜひご購読をお勧めしたい一冊です。
 
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