いまどきガリバー
《 メガネの国 》
しりあがり寿
『わしズム』Vol.16 2005年秋号 

 私は ガリバー
 またまた難破してしまった。  

     ザザーン…(波の音)

 そこは美しく 小さな島

 …ところが…

 人々は不安げに
 遠くの空をながめている

 そこには
 遠くではあるが
 避けがたい災厄が、
 少しずつ
 確実に近づいてきているのが見えた。
 
     ゴゴゴゴゴ


 「‥‥‥‥」
 「‥‥‥‥」

 人々は話しあった
 その災厄を避けるために
 多くの困難と
 犠牲が必要なこと

 それを皆で
 決心して実行するには
 大変な覚悟がいること…

 …そんな時…

 ひとつの新製品が発売された

 それは、
 「遠くが見えない」メガネ

 このメガネをかければ
 遠くにせまる災厄など
 影も形も見えず
 ただ
 身近な自分の家族や
 自分の仕事や
 明日の楽しみ
 だけが見えた

 人々は争ってメガネを買い求めた

 不安の消えた人々は
 子供の将来に想いをはせ
 趣味のある人生に憧れ
 「リッチでワンランク上の生活」を夢見た。

 あらゆることを楽しみ
 まもなくそれに飽きると
 次から次へと
 さらにこまかなモノが見える
 性能のいいメガネに
 買い換えていった。

 「どの株が上がるか?」とか
 「どんなケーキがはやってる?」とか

 「チョイモテ」とか
 「美肌」とか

 「我々はもともと優秀なる民族なのでなんとかなる」とか

 人々はそういったことに
 夢中になっていった。

 メガネは売れに売れたが…
 大もうけした商人たちは
 いつのまにか島の外に
 逃げていった

 「メガネをはずした方がいいですよ」
 私は親切心から忠告したが
 彼らはあいまいに笑うだけ

 あきらめた私は
 小舟でその島を後にした。

 やがて彼らは
 イヤでもメガネをとることになるだろう

 その時彼らの目には
 何が見えるだろう。

 ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

★なわ・ふみひとのコメント★ 
 原作は漫画です。そのキャプションの部分だけを拾って載せたものですが、ストーリーは十分理解していただけたことと思います。
 さて、ここで問題です。

@ ガリバーが流れ着いたのはどこの国でしょうか。
A この中に出てくる「メガネ」とは何を意味しているのでしょうか。
B そして、最後に「彼らの目」に見えるものは何でしょうか。

 最後の「ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥」という音とともに現れるものの正体をお知りになりたい方は、当サイトをじっくりと遊覧してみてください。ガリバーが見捨てて去っていったこの国が崩壊していく地響きのようでもありますが‥‥?。
 2020年になればその正体が明らかになると確信しています。
 
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