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『みすゞコスモス…わが内なる宇宙』 矢崎 節夫・著 JURA出版局 |
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【著者解説】
みすゞさんは『大漁』の中で、〔鰮のとむらい〕と歌っています。ふつう、弔いといえば、私たちは人にしか使わないのにです。 みすゞさんはなぜ〔鰮のとむらい〕と歌ったのでしょうか。 ここには“いのち、いのち年”が隠されているような気がします。 私は今年49歳になります。ですから、私のいのちの年は、49歳です。でも、いのち年は、40億49歳です。 46億年前に地球ができ、その地球にいのちが生まれたのが、40億年前だからです。この40億年前からのいのちをえんえんと受け継いで、今、私はいるのです。鰯もそうですし、もちろん、みなさんもそうです。 40億年の間には、木だったことも、草だったことも、魚だったことも、鳥だったことも、石だったこともあるのです。何千回、何億回と生まれ変わっても、今、私はいるのです。 仏教では輪廻転生といいますが、自然科学の世界でも、元素までいくと、完全に生まれ変わりをしています。 地球上のすべての動植物には、炭素と水素と窒素が入っていますが、この炭素や水素や窒素は、地球上には無限にありません。地球は有限だからです。ということは、なにかが死んで、炭素や水素や窒素が空中に飛びだし、次のなにかに入って、初めて新しいいのちが生まれるということです。 私はこすもすの花が大好きですが、数ある花の中でどうしてこすもすが大好きなのかというと、きっと、私をやっている元素、またはDNAの中に、昔、こすもすだった記憶があるからなのだと思います。こう思うだけで、生きていることが、うれしくなります。 いのちをつくっている炭素も、水素も、窒素も、みんな星の中でつくられた元素です。この星を生み出したのは、150億年前に一瞬にして起きた、大いなる爆発、ビッグバンによってだといわれています。ビッグバンによって、宇宙が生まれ、星が生まれ、いのちが生まれたのです。 いのちの年49歳が、いのち年40億49歳になり、そのいのちの基の宇宙の誕生までさかのぼると、150億49歳(年)までたどり着く、驚き! 喜び! ここにいる自分が、はるか宇宙とつながっているのです。人も魚も、みんなそうです。ここには、人と動物、植物のいのちの区別はありません。 あるのは、ただ輝いている“いのち”です。 みすゞさんは、人のいのち鰮とのいのち、どちからが大切か、というのではなく、いのちは同じということを、きちんと知っていた人なのでしょう。 みすゞさんが〔鰮のとむらい〕と歌ってくれたおかげで、私たちはいのちの本質に気づかせてもらえました。 みすゞさんの深いまなざしに出会えたことを、今、とても感動しています。 |
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