私と小鳥と鈴と 

  私が両手をひろげても、
  お空はちっとも飛べないが、
  飛べる小鳥は私のように、
  地面を速く走れない。

  私が体をゆすっても、
  きれいな音はでないけど、
  あの鳴る鈴は私のように、
  たくさんな唄は知らないよ。

  鈴と、小鳥と、それから私、
  みんなちがって、みんないい。
 
 
   ※地面(じべた)
 
 『みすゞコスモス…わが内なる宇宙』
矢崎 節夫・著  JURA出版局
【著者解説】
 『私と小鳥と鈴と』の中で、みすゞさんは〔みんなちがって、みんないい。〕と歌ってくれています。
 みんなちがって、みんないい。あなたはあなたでいいのです、といわれているようで、倖せな気持ちになります。
 みすゞさんは、なんとすてきなことばを、私たちに残してくれたんでしょうか。
 先日、教育出版の小学国語五年下にのっている『みすゞさがしの旅』の授業を見せていただいた時に、五年生くんから「〔みんなちがって、みんないい。〕って、人殺しでもいいの」とたずねられて、びっくりしました。
 そこで、次のように答えさせてもらいました。
 「〔みんなちがって、みんないい。〕というのは、一人ひとりがみんな光り輝いている、大切な存在だということです。ですから、人を殺したり、傷つけたり、いじめたりする人は、みすゞさんの〔みんなちがって、みんないい。〕の中には入りません。人を殺したり、傷つけたり、いじめたりする人は、きっと、このことばをまだ知らないから、そんな悲しいことができたのでしょう。〔みんなちがって、みんないい。〕を、ちがうことばでいうと、“まるごと認めて、傷つけない”ということです。小学生のみなさんが、本気でこのことばを大切にして、自分のものにしてくれたら、みなさんが大人になるころには、日本中から一人も、人を殺したり、傷つけたり、いじめたりする人がいなくなるでしょう。そうなったら、どんなにすてきでしょう」
 “まるごと認めて、傷つけない”とは、愛するということです。
 それも、それぞれに佇んで、“不平等に愛する”ということです。
 この世の中には、だれ一人として平等に生まれている人はいないからです。
 一人ひとりに佇み、不平等に愛して、初めてだれもが平等に倖せになれるのです。
 学校の中で、職場の中で、自分の心と一番遠い人に、一番心を飛ばす。大変なことですが、それなしには〔みんなちがって、みんないい。〕は成り立ちません。
 〔みんなちがって、みんないい。〕とは、
 大きいもの   小さいもの
 力の強いもの  力の弱いもの
 有名なもの   無名なもの
 有用なもの   無用なもの
 見えるもの   見えないもの
 すべてが 尊い ということです。

 今まで私たちは上(左)の部分、目立つ部分だけを見てきました。
 しかし、みすゞさんが甦ってくれたおかげで、これまで見えなかったことが見えてきました。
 みすゞさんに感謝したい、そんな気持ちでいっぱいです。
 
[TOP]