わ ら い 

  それはきれいな薔薇いろで、
  芥子つぶよりかちいさくて、
  こぼれて土に落ちたとき、
  ぱっと花火がはじけるように、
  大きな花がひらくのよ。

  もしも泪がこぼれるように、
  こんな笑いがこぼれたら、
  どんなに、どんなに、きれいでしょう。
 
 
 『みすゞコスモス…わが内なる宇宙』
矢崎 節夫・著  JURA出版局
【著者解説】
 笑顔のすてきな方は、心の美しい人です。うれしいことに、笑顔のすてきな方がたくさんいらっしゃいます。
 みすゞさんを日本中に広めてくださっている大切なみすゞ仲間に、群馬県長徳寺のお坊さん、酒井大岳先生がいます。大岳先生は年に二百五十回以上も全国で辻説法をし、その中でみすゞさんを語っておられます。
 この大岳先生の笑顔がすばらしいのです。笑顔というより、からだ全体が喜びそのものなのです。この喜びが〔ぱっと花火がはじけるように、〕まわりの人までつつんでいくのです。大岳先生の笑顔のよさは、感動をからだ全体で表せる、心のやわらかさでしょう。
 初めて長徳寺をお訪ねした時、夜の暗い道を、車の後を、両手をふりながら「ありがとう、ありがとう」といつまでも追いかけてくださったことを覚えています。
 こんな見送りを受けたことは初めてでした。「よき人に会えた、みすゞさんが会いたくて、会わせてくれたんだ」と涙がでました。
 大岳笑いには、ウッハッハもあるし、ウフフも、ニコッもあります。ウッハッハだけでないところが、大岳笑いの妙です。奥さまのせつ子さんも、笑うとまわりが消えて、笑いだけが目に映る、あざやかで美しい笑顔の持ち主です。からだより心が健康なので、元気でいられる見本で、おかげで大岳先生は大倖せです。
 長徳寺には、毎月一日に開かれる一日会という講話会がありますが、みなさん心柄のよい、笑顔のすてきな方たちです。会に参加するたびに、人の魅力を実感します。
 一日会顔は、笑顔そのものです。
 悩み多い人々のために、私たちをおつくりになった宇宙か、だれか尊い方が、私たちに派遣してくれた“笑いは最高のお医者さん”でしょう。
 “笑えば長生き、怒れば短命”
 自分の笑いや怒りは自分だけでなく、まわりの人にも反映するのです。自己でなく、自他で生きれば、笑いもふえていくのでしょう。
 人と会う時、鉄仮面のような表情でなく、やわらかい表情でお会いできる人になりたいなとも思います。
 昔から、笑いの多い人に病気の人は少ないといいます。インターフェロンでさえ、心から笑うと、活発に動き出すそうです。
 そういえば、今から七十年ほど前にインドで発見された二人のオオカミ少女は、日がたつにつれて普通の人と同じことができるようになっていったそうですが、ただひとつ、笑うことはできなかったといいます。二人とも短命だったのは、笑いという、人が持っている最高のお医者さんが働かなかったからでしょう。笑うことを知らないオオカミに育てられたからです。
 みすゞさんの『わらい』のように、本当にすてきな笑顔ができるように、いつも心をやわらかくして、なににでも感動できる自分になりたいな、そして、いるだけでまわりの人に倖せを感じてもらえる人になりたい、と思うのです。
 
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