日本人に謝りたい
あるユダヤ人の懺悔
モルデカイ・モーゼ著 久保田政男・訳
沢口企画
 
3 日本人の知らない東京裁判の本質

 ゲッベルスは戦後日本の予言者だったのか

 ドイツのゲッベルス宣伝相は、ドイツ国民に与える警告として次のような内容の文書を1934年に公布している。
 それは、非常に強大な超国家的勢力が、文明の破壊にもつながる心理戦、神経戦を挑んできている。これに対してドイツ国民は十分警戒せねばならない。この心理戦、神経戦の目的とするところは、人間の純度を落とすことにより現存する国家を内部からむしばんでいこうとするものである。
 ゲッベルス宣伝相が挙げたこの超国家的勢力の狙いとする心理戦、神経戦とは次の如き大要である。

「人間獣化計画」
 愛国心の消滅、悪平等主義、拝金主義、自由の過度の追求、道徳軽視、3S(Sport Sex Screen)政策事なかれ主義、無気力・無信念、義理人情抹殺、俗吏属僚横行、否定消極主義、自然主義、刹那主義、尖端主義、国粋否定、享楽主義、恋愛至上主義、家族制度破壊、民族的歴史観否定


 以上の19項目をつぶさに検討してみた場合、戦後の日本の病巣といわれるものにあてはまらないものがただの一つでもあるだろうか。
 否、何一つないのを発見されて驚かれるであろう。ゲッベルス宣伝相は、戦後の日本に対する予言者だったのであろうか。
 戦後生まれの人たちにはピンとこないかも知れないが、これらは正常な人間の頭で判断すれば人類の文明の破壊につながるものであることは一目瞭然である。人間の純度を落とし、本能性に回帰させようというものである。

 ゲッベルス宣伝相が警告を発した第二次大戦前の時点でどれだけの人がこれを真に人類の文明への挑戦として脅威的に受けとったかは分らない。しかし第二次大戦が終わってみると、日本へはこれら一連の風潮が忍者の如く忍び寄って完全ともいえるほどに定着してしまっていたのである。
 これらを戦後日本へ持ち込んだのは一体何者なのか。また、これらがこれほど完全ともいえる状態で日本に定着したのは何故か。
 話を戻してみよう。精神衛生面の虚無性が何故に経済の高度成長をバックアップするのかという疑問も前述の19項目をみると直ちに理解されると思う。これらが日本人の間に巣喰ってしまうと、楽しみはただ「カネ」ということにならざるを得ないであろう。つまり、すべてを「カネ」のために、という思想が強烈なものにならざるを得ないのである。いわゆるエコノミックアニマルの徹底ぶりである。
 ここにエコノミックアニマルと、「アニマル」なる語が使われているのは、ゲッベルス宣伝相の警告にあった「人間獣化」と一致していて面白い。エコノミックアニマルという言葉は、パキスタンのフット外相(のち大統領)が言った言葉だが、急所を突いていると思う。
 高度成長のほとぼりもさめた今日、日本人が真剣に取り組まなければならないのは、この精神衛生面の虚無性である。志ある人々は皆、日本はこのままでいいのかと憂えている。
 何故、前述のゲッベルス宣伝相の警告にあるような思潮が今日の日本に定着してしまったのか。また一体誰が巧妙に持ち込んだのか。持ち込んだ時期は終戦後のどさくさにまぎれてのことであるのは誰にでも分かることだが……。

 さらに、忠実な残置諜者とでもいうべき、これら病巣をタブーとして固持、培養している勢力は何か。その勢力とこれを持ち込んだ勢力との関係は如何。今日の日本にとって最も大切なことはこれらを解明することではあるまいか。
 さらに、これらの病巣の残置諜者たる勢力が金科玉条としている日本国憲法の作者は誰か。この日本国憲法の隠された狙いとは如何なるものか。そのルーツは。これらの諸問題にメスを入れることは今日の日本にとって焦眉の急といわねばならない。
 これらの病巣のコーディネーターの役割をしているのが日本国憲法であることは何ら疑いを入れない。しかしもう少し考えてみると、この日本国憲法を持ち込み残置諜者を利用してタブーの網を張り、信仰という宗教的呪縛性でもって、あたかも千古不磨(途絶えることなく伝わり続けること)の大典の如く日本国憲法を最大限に活用している勢力は一体何なのか。さらに、この日本国憲法を最大限に利用するため準備行動として東京裁判という予行演習を演じていることも見逃せないことである。
 
← [BACK]          [NEXT]→
 [TOP]