全国民が
「第三死亡原因の死」に直面
2020年6月1日(月) 
 
 
 巨大地震に何を備えたら良いのか――本日は「南海トラフ巨大地震」編です。
 私が「南海トラフ」のあとに必ず「巨大地震」と続けるのは、この地震は「日本沈没」を狙った人工地震テロだからです。地震の揺れの激しさと津波の巨大さは、間違いなく東日本大震災以上の破壊力を持って太平洋沿岸を襲うことになると確信していますので、当「つぶや記」の読者のみなさんが決して地震の規模を侮って楽観されることかないように、いつも「巨大地震」と表記して強調しています。
 さて本日のタイトルにある「第三死亡原因」については何度も説明してきましたが、第一、第二とともに再度掲載しておきます。

南海トラフ巨大地震での被災者は
  どのような原因で死に至るのか


(1)第一死亡原因――地震直後に死亡する。

 地震で倒壊した建物(家具類を含む)に直撃されたり、または下敷きになって圧死するケース。また、倒れてきた建物に挟まれたり、生き埋め状態で身動きができない人が、やがて火災や津波の襲来によって死亡するケースもある。

(2)第二死亡原因――10日以内に死亡する。

 安全な場所にいて地震による建物の倒壊や火災、あるいは津波の被害を免れた人が、その後に水や食料が得られず衰弱死するというケース。

(3)第三死亡原因――半年(?)以内に死亡する。

 地震発生後、全電源消失によって被災地を含む全国民が深刻な食料危機に直面し、餓死したり、食料を奪い合っての争いに巻き込まれて亡くなるケース。


 (3)について、当初は「被災地の全住民が」としていましたが、「被災地を含む全国民が」と訂正しました。南海トラフ巨大地震は、日本の食料の主力生産地を破壊し尽くしますので、日本全体が深刻な食料不足に陥るのは避けられないからです。

 本日の「巨大地震に何を備えたらよいか」というテーマは、被災地だけでなく日本全体の問題としてとらえていきます。

 以上、前置きが長くなりました。
 それでは次の参考文献をもとに南海トラフ巨大地震の恐ろしさを再確認しておきましょう。

■『次の震災について本当のことを話してみよう。』(福和伸夫・著/時事通信社)

 私が特に注目してほしいと思うポイントを赤い文字に変えています。
 前半部分は言わば「学者の論文」ですので読み飛ばしてもらっても結構ですが、「延々と続く光景を想像してみてください」からあとの文章はリアルです。何度も読み返して、ご家族や親しい友人に伝えていただきたいと思います。

 国民の半数が被災者になる

 南海トラフとは、日本近海でフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む境界。「トラフ」とは浅い溝のことです。浅いと言っても、深さ6,000メートル以上の海溝よりは浅いという意味で、十分に深い溝です。巨大な岩盤が年間に5、6センチも移動しています。そして100年間で5、6メートル動くことによって、岩盤同士がこすれる面に巨大な「ひずみ」のエネルギーをためていきます。
 それが一気に解放されることで引き起こされる巨大地震。これまでは静岡県東部を中心とした駿河トラフで起これば東海地震、浜松沖から愛知県、三重県の紀伊半島沖が震源なら東南海地震、和歌山県から高知県など四国沖なら南海地震と呼び、それぞれM8程度の地震と想定されていました。

過去の歴史ではこれらが連動して翌日や数年後に起こったり、同時発生したりして甚大な被害をもたらしてきました。東日本大震災以降、その連動する範囲は九州の大分・宮崎沖の日向灘や太平洋側の浅い部分にまで広がると想定され、全体で南海トラフ巨大地震と呼ばれるようになりました。すべてが連動すれば地震の規模はM9以上。まさに「中部・西日本大震災」とも言える未曾有の災害です。

 私も委員として参加した内閣府の検討会では、考え得る最大クラスの地震規模やそれによる被害を算定、公表しました。最悪の場合、震度7の揺れは東海地方から四国、九州まで10県153市町村の約4,000平方キロメートルに分布、震度6弱以上の揺れは大阪を含めて24府県687市町村に拡大します。津波は高知県の土佐清水市や黒潮町で最大34メートルに達するのをはじめ、静岡県下田市で33メートル、三重県鳥羽市で27メートル、愛知県田原市で22メートル。千葉や神奈川でも10メートルを超す想定結果が示されました。
 震度6弱以上、または高さ3メートル以上の津波が沿岸部を襲うと想定される自治体の面積は、日本全国の約30%、人口では約46%の5,900万人にも上ります。国民の半数が被災者になる大災害だということです。
 阪神・淡路大震災や東日本大震災では日本の人口の約5%の人たちが被害に遭いました。関東大震災も被害は関東限定でした。国民の半分が被害に遭うかもしれないというのは尋常ではありません。

 大空襲並みの惨状が各地に

 内閣府の最悪の想定では、死者は約32万3,000人。東日本大震災に比べ約15倍の数になります。ただし、この数字には関連死は含まれていません。原発事故で混乱した福島県や、熊本地震の被災地では、関連死の方が多くなりました。それを考慮すれば、100万人が亡くなると考えてもおかしくないでしょう。
 静岡県から宮崎県まで10府県の標高10メートル未満の居住人口は、東北3県の13.5倍です。
 そこを東日本より震源の近い地震が襲います。津波はより早く、高く到達。揺れはより強く、揺れている間に津波が来るところもあるでしょう。
 津波に襲われる和歌山県では予想死者は県民12人に1人、高知県は15人に1人、静岡県では34人に1人と想定されています。この数字は、自分の親戚のうち1人は失ってしまうことを意味します。学校では1クラスに1人以上が犠牲になる。東京大空襲や関東大震災での東京の惨状に匹敵します。それが静岡から宮崎に至るまで、
延々と続く光景を想像してみてください。

 高さ30メートルの
津波は新幹線並みのスピードで沿岸部に達し、防潮堤を破壊。陸上に上がってもオリンピック選手並みの速さで遡上し、海沿いの街をのみ込み、あらゆる住宅をなぎ倒す。
 
人々は逃げる間もなく、家屋や車ごと流される。がれきに激しくぶつかり、変わり果てた姿になって引き波の中に消えていく。コンビナートからは油が漏れて引火、石油タンクが浮上して街に進入、周りは火の海に。
 都市部では高層ビルが激しく揺さぶられ、上階の部屋では机や椅子が走り回り、ひっくり返る。コピー機は大きく移動し、壁に固定されていない大型のロッカーが人に倒れかかる。エレベーターはすべて停止。閉じ込められた人は真っ暗な狭い空間で長時間助けを待つしかない。
 地上では、ビルから剥がれ落ちた外壁やガラスが人々に降り注ぐ。デパートや劇場など、人が集まる場所はパニック状態。地下街や地下鉄駅の出入り口にはおびただしい人の群。「津波が来る」「火災だ」などの情報でパニックに陥る。すでに液状化も発生していて、
寸断された道路ではサイレンを鳴らした消防車や救急車が全く動けない
 市街地では倒壊した建物の下敷きになった人たちの救出が懸命に行われるが、火の手はどんどん迫る。
 そこら中からうめき声や「助けてー」という悲鳴がこだまする。しかし、消火ができず、近づくことすらできない。
傷だらけの遺体が、そこら中で置き去りにされる
 かつての三河地震では、「野焼き」が行われた。立派な火葬場のある現代都市でも遺体の処理は追いつかず、野焼きの煙が立ち込める街になる……。寺も大きな被害を受け、お弔いもできない。

 関東大震災では火災、阪神・淡路大震災では家屋倒壊、東日本大震災では津波が主に悲劇を引き起こした。今回は、これら3つがすべて襲ってきた。

 街は津波に襲われたところと、火災で燃えているところと両方の惨状が広がる。あまりにもたくさんの家が壊れているので、
避難所には入れない。人々は街にいられず、ヨレヨレの格好で郊外に歩いていく。
 行き倒れになっている人を助けることもできない。
電気もガスも水道も、すべてが途絶。広域の被害で仮設トイレが来るなんてあり得ないので、衛生状態も悪化の一途。街には強烈な異臭と腐臭が漂う。

 このような光景を前に、人間性を失わずにいられるでしょうか。東日本大震災では日本人の「礼儀正しさ」や「辛抱強さ」が世界から賞賛されました。しかし、南海トラフ地震でも日本人がそのような冷静さを保てるのか、私は疑問です。圧倒的な、まさに地獄を見るような災害になると、人はなりふり構わなくなるでしょう。
食料や水が圧倒的に不足すれば、略奪もあり得ます。治安を保つ警察力や地域の力も十分ではありません。地方警察官の人数は全国で約25万人、人口500人に1人です。日本社会は、底が抜けたように奈落へと落ちていくように思えるのです。
 このような状況にならないようにするには、
耐震化などの事前の努力で被害を大きく減じるしかありません。

 被災想定エリアに住んでいることの恐怖が感じられる内容ですね。
 最後の部分で、「耐震化などの事前の努力で被害を大きく減じるしかありません」という内容には少しガックリきました。要するに「対策は何もない」ということです。
 これでも移住(事前疎開)を決意しない人は、間違いなくここに描写されている恐怖を体験することになるでしょう。テレビで東日本大震災における津波の破壊力をご覧になった方も多いはずです。ネットにもまだYouTubeの動画が載っています。これまでは「他人事」として視聴していたものが、今度は自分の「現実」になるのです。
 ですから、被災想定エリアに住む人から「南海トラフ巨大地震に何を備えたらいいか」と問われたら、「早くそこから逃げておきなさい」と申し上げるしかありません。
 津波の心配がないエリアに住んでいる人も、地震の揺れの大きさは覚悟しておく必要があります。家が壊れたら「第一死亡原因」だけでなく、「第二死亡原因」による死も覚悟しなくてはならないからです。場合によってはけがをした体を引きずって避難先を求めて当てもなく移動しなくてはならないかもしれません。家族にお年寄りや幼い子供がいる人はなお悲惨です。

 それから、この本の著者の福和氏にもその傾向がありますが、政府や学者は巨大地震の被害予測を説明するときにすぐ死者の数を問題にします。つまり、「第一死亡原因」による死者の数で地震の恐ろしさ、悲惨さを伝えようとするのです。確かに、地震による建物の倒壊や火災、あるいは津波によって命を奪われるのは恐いことです。その恐さを強調するのに死者の数を問題にするのはやむを得ないとは思いますが、巨大地震の本当に恐さは地震のあとなのです。
 南海トラフ巨大地震が起きれば、日本中から食料品をはじめ生活必需品が消えてしまいます。そのことは、これまでの「つぶや記」で『巨大地震Xデー』などの参考文献をもとに詳しく述べてきました。
 そのことを福和氏も最後のところで「日本社会は、底が抜けたように奈落へと落ちていくように思える」と述べています。
 もう一度申し上げます。南海トラフ巨大地震が起きると、日本中のスーパーやコンビニの棚から食料品をはじめとする生活必需品が一瞬で消えてしまいます。そして、それ以降、その棚に商品が並ぶことはありません。工場に多少の商品の在庫があっても、焼け石に水です。また電気がなければ出荷することさえできません。すぐに暴徒に襲撃されて奪い去られてしまうでしょう。生きるために手段を選ばない日本人や外国人が略奪行為を働くようになるからです。
 停電が長期間続くため、工場の復活はありません。地震で壊れた橋やトンネルなど道路の補修はいつまでもできませんので、日本は完全に原始社会に戻るのです。想像できますか?
 文明社会しか経験していない現代の日本人は、サバイバルを生き抜くことは難しいかも知れません。ほとんどの人が「第三死亡原因の死」に直面することになります。
 それでも、日本人として、最初から世界支配層にシャッポを脱ぐわけにはいきません。必ず生きのびて、彼らの悪事を記憶にとどめ、語り継いでいくべきです。
 ということで、ではそういう事態に何をどう備えたらよいのかを考えていきます。
 私も戦後生まれで、初めて体験する全国的な食料不足という事態ですので、サバイバルの経験はありません。皆さんもそうでしょう。ですから、すべて自分の頭で考えなくてはいけないのです。はっきり言えることは「地震が起きてからでは間に合わない」ということです。

 次回は、「南海トラフ巨大地震に何を備えたらよいか(実践編)」について、私なりに考えた内容をご披露したいと思います。実は今から考えるのです。「つぶや記」はすべて書き下ろしですから(汗)。
 ある読者の方から情報提供もいただいていますので、それもご紹介したいと思います。
 
 
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