フツーの人が書いた黙示録
肉食編 G

まだ肉を食べているのですか?

 かつてアメリカ産牛肉の安全性が疑問視され、輸入が中止されたことがありました。マスコミで議論が沸騰しましたので、議論の焦点となったBSE(牛海綿状脳症=狂牛病)に関する書籍をご紹介したいと思います。
 当時はマスコミ報道で「アメリカ産牛肉=危険」という認識とともに、「国産牛肉=安全」という図式が多くの人の頭の中に刷り込まれたのではないかと思います。実は、国産の牛肉も危険なものもあるはずですが、そのテーマを掘り下げるのはタブーとされていますので、ここでは輸入牛肉の安全性についての記述を拾ってみました。
     
『まだ、肉を食べているのですか』
ハワード・F・ライアンほか著 三交社
 

 牧場主、ベジタリアンになる

 私は4代続いた酪農家だ。
 長年、牧場で汗と埃にまみれて働いてきた。
 モンタナの農場に育ち、20年も牛飼いをやってきた。どうすれば牛が育つか体で覚えた。当然、この国で肉がどうやって生産されているか、それもよく知っている。
 その私の今の役職は、驚くなかれ「国際地球救済会議」という環境団体の会長様だ。この団体は有機農業を推進し、ベジタリアン(菜食主義者)の食事を推奨している。
 むろん、私も多くの人たちと同じように、これまでには牛ステーキをたらふく食べてきたものだ。
 けど、あなたの目の前のステーキに、いったい何が紛れ込んでいるか、それを食べたらどうなるか、――そのことを知ったら、あなたは間違いなく私と同じベジタリアンになるだろう。あなたが信じようと信じまいと、私は今や純粋なベジタリアンだ。動物性食品はいっさい口にしない。
 そして、ここで断言しておく。私は今、昔よりはるかに食生活をエンジョイしているというわけさ。

 
牛もまた“肉食主義者”なり

 もし、あなたがアメリカ人で肉食主義者だったら、全面的に次のことを知る権利がある。それは、あなたが食べたほとんどの牛に共通する“真実”――つまり、あなた同様、牛もまた「肉を食べてきた‥‥!」ということだ。
 牛が屠畜されると、重量でいえば半分ほどは食用にならない。
 たとえば腸とか、その内容物、頭部、ひづめ、そして角だ。同様に骨や血も食べられない。そこで、これらは「レンダリング・プラント」(動物性脂肪精製工場)というところに運ばれる。そして巨大グラインダー(攪拌機)に投げ込まれる。ついでに言うと、病気で死んだ牛はまるごとほうり込まれる。よその牧場で病死したほかの家畜も同じだ。
 ひどい病気に罹った動物、癌に罹った動物、腐りかけの動物の死体‥‥などなど、アメリカでは、これらほどレンダリング工場の飢えた機械にとって“美味しい”ご馳走はない。農場で死んだ家畜以外にも、もう一つ、レンダリング業者にとって美味しい“主食”がある。それは安楽死させたペットたちだ。なんと600万から700万頭もの犬や猫たちが、毎年、動物「保護施設(!)」で殺されているのだ。
 たとえば、ロサンゼルス市だけでも、毎月、約200トンもの犬や猫の山が、レンダリング工場に送られている。それらには動物管理局に捕獲された野良犬、野良猫、そして道で轢き殺された死体も混ざっている。
 この身の毛もよだつ“混合物”は、レンダリング工場でミンチに刻まれ、高温蒸気で調理される。そして、軽い脂肪分が表面に浮いてくる。それは、化粧品や潤滑油、せっけん、ろうそく、そしてワックス原料などに精製される。
 より重いたんぱく原料等は、乾燥され、茶色の“肉骨粉”に加工される。その約4分の1は、なんと糞便なのだ。その“肉骨粉”は、家畜の飼料と同様、ほとんどのペットフードの増量剤として使われる。これは農家で「濃縮たんぱく」と呼んでいるものだ。
 私もそんな“エサ”を、家畜を養うために何トンも使ってきた。しかし、“牛”を牛に食わせていたなんて、実は夢にも思わなかった!

 
犬、猫、豚の死体で“栄養強化”

 1997年8月、BSEいわゆる狂牛病への不安が巻き起こってきた。これに対して、米食品医薬品局は、新しい規制を発表した。牛など反芻動物のたんぱく質を、反芻動物に与えることを禁止したのだ。「反芻」とは、一度飲み込んだ食物を、再び口に戻して噛み直しをすること。だから、この規制が実際に実行されれば、もはや牛は、無理強いされた“共食い”から解放されることにはなるだろう。
 もう牛たちは、ほかの牛や羊や山羊などの死体の一部を食べさせられることもなくなるはずだ。
 けれども、実は牛たちは、今もミンチに刻まれた馬や犬、猫、豚、鶏、それに七面鳥などの死体を、ムシャムシャといただいているのだ。同様に、牛の死体から選り分けられた血液成分から糞便まで、いまだ食べている。おまけに、鶏の死体から採り出した血や糞までもそこに混ぜられている。全米で約9千万頭も飼われている牛のうちの約75パーセントが、日常的にレンダリング処理された動物死体で“栄養強化”されたエサを食わされているのだ。

■‥‥以上は第1章の中から抜粋したものです。このあと、第2章から第9章にかけて、アメリカで生産されている肉の安全性に大変な問題があることや、また肉食がさまざまな病気の原因となっていること、牛肉生産が地球環境を著しく悪化させていることなどについて詳しく解説されています。
 特に、日本でも最近急増している心臓病や、癌、骨粗鬆症などの病気は、肉や牛乳を初めとする動物性食品の摂取が原因になっていることが強調されています。著者がベジタリアンであれば当然の主張でしょうが、なかなか説得力があります。ただ、すでに同種の内容はいろいろと取り上げていますので、ここでは割愛させていただきます。
 以下は第8章の中の一節です。「人間はもともと肉食をするようにはつくられていない」ということを証明しています。もしまだ肉食を続けておられるのでしたら、これらの文章をしっかり読んでいただいて、一刻も早く肉食をやめていただくことをお勧めします。(なわ・ふみひと)


 
人はハンターではない

 いまだベジタリズムに対する攻撃、非難が続いている。その攻撃は事実を無視して、推測で行なわれている。心臓麻痺や癌に関する統計データは無視する。ベジタリアンは肉食者より長生きするという事実を無視する。肥満の事実を無視する。その肥満こそは、動物性食品を基本とした食事に共通する結果なのに。
 さらに、彼らは、植物を基本とした食事の環境への配慮をすべて無視する。――そして、ある人はこう反論してくる。「人間は肉食に生まれているんだ。俺たちはハンターとして進化した。だから犬歯がちゃんとある。あんたは自然とは争えない。俺たちには血への欲望があるんだ‥‥」

 
肉食動物と草食動物の違い

 ありがたいことに、真実は違う。
 進化によって、多くの肉食動物がつくられた。たとえば、ライオン、犬、オオカミ、そして猫。彼らはすべて短い消化器系を持っている。おおよそ、彼らの体長の3倍の長さだ。
 それは腐敗しつつある肉をできるだけ早く腸内を移動させるためだ。腐敗した肉は、長く体内にとどまると、毒となって血流を汚染する。肉食動物は、また、酸性の唾液を持っていることが草食動物と異なる。酸性唾液は、肉や骨を消化するのに都合がいい。
 そして肉食動物は、鋭い爪をたくわえている。力強い顎、長く鋭い“犬歯”。これらは、生肉を切り裂くためのものだ。彼らには食物をすり潰すために必要な大臼歯がない。穀物をあらかじめ消化する唾液酵素もない。

 
人は草食動物の仲間

 人間は、これらをどう比較したらいいのだろうか? 
 はるか昔、プルタークはこう指摘している。
 ――人間とは「くちばしをもたない。尖ったカギ爪もない。鋭く尖った歯もない‥‥これとは反対に、歯はなめらかで、口は小さい。舌はやわらかく、その消化はゆっくりとしている。自然は、人間に肉を食らうことを厳しく禁じているのだ‥‥」
 プルタークは正しい。我々のイトコの類人猿たちの食事は、ほとんど果物と木の実だ。
 我々の消化器官の長さは、体長の12倍にもなる。肉を食べると、5日間の長旅のあと、体外に排泄される。菜食なら1〜2日だ。我々人類には鋭い爪もなければ、肉を噛みちぎる頑丈な顎もない。ただ、穀物をすり潰し、咀嚼するための大臼歯がある。草食動物と同じように、我々の唾液はアルカリ性だ。

 
パッケージに隠されたもの

 我々が“犬歯”と呼ぶ歯は、使い慣れてきた名前にすぎない。名前は同じでも、犬や虎の歯は、長く、鋭く、槍のように尖っている。あなたの“犬歯”を試してみるといい。ヘラ鹿の生肉にかぶりつくことをお勧めする。私は、ほかの多くの人が挑戦するので、やってみた。しかし、文字どおり歯がたたない。うまく食いちぎれた者は一人もいなかった。
 我々人間には血の欲求があるだろうか。バラバラに解体しているシーンを想像してほしい。そして、その温かい血を唇をつけてすする‥‥。さて、気に入りましたか?
 人々は、きれいにパッケージされた肉に見事に欺かれるのだ。なぜなら、肉を食べるということの現実を我々が知ったら、ほとんどの人々は嫌悪感に陥るだろう。

 
世界をより平和に‥‥

 結局、我々は、生きてきた人生をどう意味づけるのか?
 もちろん、どれだけ多く金を稼ぎ、どれだけ富を手に入れ蓄えたかで、意味づけることもできる。しかし、有名かつ偉大なアメリカの演劇に、次のような台詞があった。
 「結局、あの世にゃ持ってけないのさ――」

 あるいはこう自問する。
 やってくる次世代のために、やるべきことはすべてやっただろうか?
 れれわれが生まれたときより、今、より多くの木々があるだろうか?
 大気は、より新鮮だろうか?
 水は、よりきれいだろうか?
 より良い、豊かな農地があるだろうか?
 空には、より多い鳥たちがいるだろうか?
 海には、より多い魚たちがいるだろうか?
 野生には、より多い動物たちがいるだろうか?
 人々は、より長く、より健康に生きるだろうか?
 人々は、飢えから解放されるだろうか?
 病気は減り、苦痛は和らげられるだろうか?
 世界は、より平和に満ちた場所でありうるだろうか?
 ――あなたが、これらの思いを胸に抱いて生きるならば、すべては、あなたの人生の足跡とともに、地上に実現していくことだろう。


 ↑ 『まだ、肉を食べているのですか』

 最後の部分で著者が呼びかけている内容は、私たちが肉食をやめれぱ(といっても一人だけではダメですが)確実に実現に近づくことなのです。肉食が地球の環境を著しく汚染していることは、すでに多くの人が気づき、証明していることです。
 さて、「この本はアメリカにおける肉食の問題点を述べたもので、日本の肉は問題ない」と考える方があるかも知れませんので、「日本の肉も同じ問題を抱えている」ということがわかる書籍をご紹介しておきます。この本の中に、わが国の「レンダリング・プラント」(動物性脂肪精製工場)について触れた文章があります。その前後の内容も含めてご紹介します。

     
『早く肉をやめないか?』
船瀬俊介・著 三五館
 

 自然発生の病気が“共食い”で伝染

 ‥‥ニューギニアの食人種族は、その死体を”愛をこめて食べた”。この共食いの食人行為により、プリオンたんぱく質は、病原体として他者の肉体に侵入を果たした。
 同種が同種を食う、いわゆる“共食い”――。これは動物界の最大のタブーだ。神は、ヒトがヒトを食うという行為を想定していなかった。ニューギニア奥地の“クールーの悲劇”は、まさに神の意思に反したがゆえに下された「罰」とはいえまいか?
 私はキリスト教徒でも何でもないが、プリオン病の悲劇を追ううちに、粛然とした思いで襟を正してしまう。「神の裁き」という言葉が、じつに荘厳かつ重々しく、胸に響くのを感じる。「神」という言葉を「自然の摂理」という言葉に置き換えれば、それはよりわかりやすいだろう。
 草食動物の牛に、牛の死体を食わせる。これもニューギニアの食人種と同じ共食いだ。世界の近代畜産業では「常識」のレンダリング・プラントを経た「動物性飼料」による肥育システムも、神(自然の摂理)に反する禁忌行為(タブー)だったのだ。「神の裁き」が下されて当然であろう。

 
日本にも当然、レンダリング・プラントはある

 日本にも同様のレンダリング・プラントはある。“動物愛護センター”とか“動物指導センター”などと呼ばれているのが、それだ。しかし、この名称は、まさにブラックユーモアではないか。入り口に花壇などが飾られ、中でどんな工程が行なわれているかは知るよしもない。しかし、この施設名は、実態を隠蔽したいという狙いが、逆に見え見えではないか。
 野犬、野良猫などはここに送り込まれ、殺され、ミンチに刻まれ、さまざまな“製品”となって出荷される。それは「医薬品」「ゼラチン」「化粧品」さらに「ドリンク剤原料」「食品原料」‥‥などである。野良猫、野良犬たちの霊を弔いながら、いただくべきであろう。
 このレンダリング・プラントのお得意さまが、「飼料会社」「ペットフード業界」である。牛や豚の死骸は、プラントで刻まれ、乾燥され、また「家畜飼料」や「ペットフード」に混ぜられて出荷され、市場に流通していく。
 つまり家畜が、死んだ家畜を食う。ペットが、死んだペットを食う‥‥。
 実に無駄のないシステムが、完結していたのである。

 
イギリスの牛の悲劇が始まり

 ここに、狂牛病のルーツがある‥‥と私は確信する。
 つまりスクレイピー(狂羊病)で狂い死にした山のような羊の死体は、このレンダリング・プラントに持ち込まれた。ここで鋭い刃とギアで刻まれ、それらは「骨粉」「油脂」など“栄養素”として市販飼料に配合されたのだ。当然、その中には病原体プリオンが潜む。なにしろ、(プリオンは)360度もの熱でも“死なない”のだ。
 こうして、出荷された狂羊病プリオン入りの配合飼料を食べたのがイギリスの牛なのだ。当時、イギリスの畜産業者たちは、トウモロコシなど飼料用穀物の不足・高騰に悩んでいた。そこで動物性栄養素の配合された安い飼料に飛びついたのである。
 草食動物であるはずの牛に、動物性のエサを食べさせた。すると、こちらのほうが牛は早く太った。そこで、畜産システムの中に動物性飼料が積極的に導入されていった。
 イギリスの畜産業者も、まさか、そのエサの原料が狂羊病で死んだ羊の死体だとは、夢にも思わなかっただろう。“死の工場”の業者ですら、高熱消毒しているから「何も問題ない」と割り切っていたはず。ところが、病原体たんぱく質プリオンは、高熱でもいっさい分解しないのだった。

 
「人にも感染する」――事実を認めたイギリス政府

 「牛肉を食べることで、狂牛病が人間に感染する可能性がある」
 ついに1996年3月20日、イギリス保健省のS・ドレル大臣は下院議会で、事実を認めた。イギリス国内で亡くなった若者10人の声なき声が、政府を動かしたのだ。
 彼は「イギリス国内のヤコブ病患者10人の発病原因は狂牛病の肉を食べたからだ」と発表。この衝撃発表に、世間は蜂の巣をつついたようになった。牛肉の売上げは激減。半値で投げ売りするスーパーも出てきた。
 パニックは、ヨーロッパ全土に衝撃波となって拡がった。EUはイギリスからの「輸入禁止」を、それまでの牛肉だけから、牛原料の加工品にまで拡大した。ゼラチン、牛脂製品、キャンディ、クッキー、口紅、咳止め‥‥までが禁止品目に加えられた。一見牛肉とは無関係のような口紅、咳止めにまで牛の成分が含まれることに驚く。
 さらにイギリス政府は、牛27万5,000頭を処分した。

 
70万頭以上を「もう、食べてしまった」

 イギリス政府の調査データですら、国内で発病した狂牛は、2000年に累計18万頭を突破している。農業省は「動物性飼料を禁止した後に生まれた牛でも、2万8,402頭が発病している」という。
 イギリス予測研究グループは身も凍りつく推計をしている。
 「1995年までに、国内だけで、狂牛病に感染した牛70万頭以上がすでに食用で人間に食べられてしまった」
 専門家は「汚染肉を1グラム食べても発病する」と警告するのに、狂牛病の牛を70万頭以上も食べてしまったイギリス国民に、どれだけの狂牛病患者が発生するのか。それは誰にも予測がつかない。
 ただ、はっきり言えることは、ヒトの潜伏期間の10年から20年を過ぎたころに、体内で沈黙していたプリオンは、あたかも時限爆弾のごとく猛爆発を開始し、狂ったように増殖して脳をスポンジ状にしていく、ということだ。
 では、人間が狂牛病の牛の肉を食べたとき、どれくらいで発病するのだろう?

 
21世紀に被害は世界で爆発する

 「ハンバーガー、毎日食べているけどナントモないもん 」
 なるほど、そうだろう。プリオンに汚染された牛肉を食べた子どもや若者も、しばらくはまったくなんともない。潜伏期間は、短くても4〜5年‥‥ふつうは10年ほどプリオンはじっと体内で息を潜めている。
 専門家は言う。「食べて10年間ほどはなんともないだろう」と。10年から数100年後に突然、発病するのだ。忘れたころに、突然脳を侵し始める。

 昨今、日本の消費者は「なぜこれだけ安く肉が食べられるのか?」などとは考えない。「安けりゃ、いいじゃん!」と、安売りハンバーガー店にあふれ、昼食代を切りつめるために牛丼屋に列をつくる。

 ハンバーガーが怖い――それでも食べますか?

 「ハンバーガーは、狂牛病のもっとも“危険な感染源”になるであろう」
 世界的な権威ある科学雑誌『ニュー・サイエンティスト』の冷徹な警告である。
 1990年、イギリス中が最初の狂牛病パニックに陥ったときに、ジョン・セルウィン農業大臣は、思いきったパフォーマンスを演じて見せてくれた。彼はマスコミのカメラの放列の前で、4歳の娘とともにハンバーガーを美味しそうに頬張ってみせた。
 そして、後日談には呆れる。その後は、記者がハンバーガーを差し出しても手に取ることすら拒否した。大臣自らその危険性に気づいたからだ。
 1993年5月、ヴィッキーという少女が痴呆状態に陥り、新ヤコブ病と診断された。彼女はハンバーガーやソーセージが大好きだったのだ。

 安売りハンバーガーと牛丼のウラ側

 イギリスの狂牛病のとき、EU諸国をはじめ世界中は即座に禁輸措置をとった。しかし、この禁輸措置ほど信用できないものはない。
 「飼料には、闇輸出がつきまとう」――専門家はその闇ルートの存在を認める。これは、食肉についても言える。かつて、オーストラリアの大ネズミ(ヌートリア)の肉が日本に闇輸出されている、という話を聞いたことがある。しかし、食肉の闇ルートを調べることはアンタッチャブルであるらしい。その話をしてくれた人にも「怖いから、私の名前を出さないで」と念を押された。
 いま、食べ放題や低料金の焼肉店が続々オープンしている。牛丼屋が超安売りサービスをし、ハンバーガーは半額の65円。なぜなのか?
 それは、「いま日本に、牛肉は100グラム10円〜20円で入っているから」ということだった。

 世界で一番安い牛肉を原料に

 私はかつて『買ってはいけない』という本で日本マクドナルドを取り上げた。それに対してマクドナルドから抗議が届いた。「オーストラリア産の牛肉を使用しているので、熱帯雨林破壊とは無関係」「狂牛病は人間にはうつらない」などというものだった。
 これがまったくの嘘であった。
 日本マクドナルドの藤田田社長(当時)が週刊誌で、同社の食材調達法を「グローバル・バーチェシング(世界一括購入)といって原材料の世界調達です。牛肉、タマネギ、ポテトは、今どこが一番安いのか、瞬時に全世界から価格情報を集めて、一番安いところから仕入れます」と明言。
 「オーストラリア産の牛肉のみを使用している」という同社広報部の抗議はデタラメだったのだ。その担当者も、誤りであったことを私に認めた。
 この「世界で一番安いところ」というくだりを読んで、背筋が寒くなった。
 かつて、第一次狂牛病パニックのとき、イギリスは9割の牛肉市場を失った。EUはじめ世界中の国々が、イギリス産の牛肉の輸入を禁止したからだ。のべ18万頭も狂牛病が発生している国の牛肉など、恐ろしくて食べられない。それが正しい反応だ。
 当然、イギリス産牛肉の価格は大暴落して、タダ同然となる。はたして、これら「世界で一番安い牛肉」はどこへ消えたのだろう?

 ルーツ隠しの“三角貿易”

 むろん世界中の先進諸国は、イギリス産牛肉の禁輸を講じているから、直接輸入は絶対不可能だ。輸入審査の段階で「不許可」となる。
 しかし、世界の食肉ルートには表があれば、裏もある。アジア、アフリカなど規制のゆるい第三世界の会社が輸入したことにするのだ。
 たとえば、アフリカのギニアとか、第三国に輸入させ、さらにそれを輸入すれば「ギニア産牛肉」に化ける。さらに「原産地証明」などはハンバーガーのように混ぜてしまえばわからない。そのことをある専門家に聞くと、「可能性はあります。抜け穴ですね。ただし確認は業界内部の人でないとわからない。聞いても『やってます』とは言わないでしょうが(笑)」ということだった。

 加工品は「原産地証明」が不要

 その専門家は鶏肉の例をあげる。
 「鶏肉の場合、アメリカから骨のついたもも肉が香港に輸出されます。それが中国に行って、中国で骨をとって焼き鳥やカラ揚げに加工される。それが日本にやってくる。揚げた状態で冷凍され、輸出される」
 「この骨をとったヤツはそのまま日本に入ってくることもある。加工品は『原産地表示』なんかいらない。だから、食肉はいろいろ形が変わるとルーツがわからなくなる」
 同じように、牛肉も塊のまま動くわけではない。ミンチに刻んでハンバーガー用パティにしたり、現地でどんどん加工し、混ぜたりしたら、もうわからない。第三国で加工してさらにX社からY社に輸出。ギニア産がインドネシア産、オーストラリア産に‥‥。日本は、輸入した最終国を言えばいい。だから、「オーストラリア産のみを使用」と言っても、まったく信用できない。

 汚染されていないという保証はない

 むろん、これら激安牛肉が、すべて狂牛病プリオンに汚染されているわけではない。その汚染確率はきわめて小さいと思う。しかし、ゼロではないという点に、われわれ消費者は注意をする必要がある。
 日本政府はイギリスどころかEU産牛肉の禁輸措置を打ち出した。しかし、それがいかに抜け穴だらけかは、すでにイギリスからの汚染飼料の闇輸入例がすべてを物語る。食肉業者も闇ルートの存在を告白している。レンダリング・プラントによる“悪魔のサイクル”は、今後牛だけでなく豚、ニワトリまでプリオン汚染を拡散させていくのではないだろうか?
 ヨーロッパの学者は「少なくと今後350万人から400万人が狂牛病で死ぬだろう」と予測しているという戦慄する情報もある。
 いま、日本の若い人たちは、ただ安く肉が食べられることに夢中になっている。しかし、その光景に私は不安がこみあげてくる。狂牛病(新ヤコブ病)の潜伏期間は、少なくとも5年あるのだ‥‥。


↑ 『早く肉をやめないか?』 

 さまざまな視点から肉食の問題点について明らかにしてきましたが、それらを読まれても、現在の日本の食生活に肉は欠かせないものとなっておりますので、自分だけ肉を断つということは難しいことでしょう。肉食に慣れ親しんだ舌は簡単に肉の味を忘れてくれないはずです。
 子どものころから学校給食や街中のファーストフーズの店で肉を食べる習慣を身につけてしまった日本人がようやく成人の大半を占めるようになってきました。いまや日本の病院は難病患者の行列ができ、年間の医療費総額は40兆円を超えるまでに急伸長しました。悲しい日本の終末風景を見せられているような気がします。
 
     
 
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