人は何のために祈るのか? B

 
すべての祈りが必ず実現するとは限らない

 ここで、もし大学を受験する全国の生徒全員が同じ神様に合格祈願をした場合はどうなるか、ということを考えてみましょう。最近は少子化で受験生の方が少ない状態となっていますが、ここでは受験生の数が定員の2倍であるとします。この場合、合格者は受験生の半分ということになります。つまり残りの半分の生徒の祈りは聞き届けてもらえないというわけです。
 このとき、合格者と不合格者を分けるものは何でしょうか。祈りの手法の違いだとすれば、ではまったく同じ祈りの手法で祈った場合は全員が合格するでしょうか。やはり半分は不合格になるはずです。つまり、同じ祈りをしても、その願い事が聞き届けられる人と聞き届けてもらえない人がいるということです。
 わが国では、正月になると毎年何千万人もの人が神社を訪れ、さまざまな願い事をしますので、中にはこのように、同時に実現させることのできない祈りをしている場合も考えられます。神様も、わがままな人間のために大変なご苦労をされていることでしょう。
 ここでは、「祈りはすべてが聞き届けられるわけではない」という認識を持っておきたいと思います。「神さま」という幸福の自動販売機に「祈り」というコインを入れれば自動的に「幸せ」が出てくる(実現する)というほど簡単なものではないのです。
 その原因はいろいろ考えられますが、最初に私たちが「幸福の自動販売機」と考えているものの内部構造、すなわち「祈りが実現するメカニズム」について考えてみましょう。
 
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