ブルーアイランド
エステル・ステッド編 近藤千雄・訳
ハート出版
 
序 文
 
 
 ドイル卿から寄せられた喜びと激励の書簡

エステル・ステッド様(ステッド氏長女)
 ご尊父からの通信をパンフレットで拝見して、とても興味深く、かつ意義深いものとの感想を持ちました。どういう状況下で取得されたのか、また、通信の内容にどの程度まで霊媒の潜在意識が影響を及ぼしているか、その辺のことについての細かい判断はいたしかねますが、文章の世界に長く関わってきた一人として申し上げれば、明快な文体、当意即妙の比喩などには、生前のステッド氏の特徴が実によく出ております。
 こうした死後の世界に関する通信を扱う際に必ず直面する問題として、通信によって言っていることが食い違う場合があげられます。しかし、他方、これまた否定できない事実として、述べられていることが完全に一致している場合の方がはるかに多いということも指摘したいのです。
 常に念頭に置いておかねばならないのは、一口に死後の世界といっても、無限の複雑さと奥行きがあるということです。イエスが「私の父の国には多くの住処がある」と言っているのはそのことです。
 考えてみますと、この小さな地球上の生活についても、二人が同じことを述べることは、まず有り得ないでしょう。都会に住んでいる人と大平原で生きている人とでは、その生活環境についての叙述には、私がこれまで読んできた霊界についての叙述のいかなる食い違いよりも大きな違いが生じることでしょう。
 これまで私は、主として、そうした霊界から届けられたメッセージに関心を向けてきました。私は物質的な心霊現象にはあまり興味を抱きませんでした。そして多分、私ほどかずかずの霊界通信――印刷されたものからタイプで打ったものや手書きのものまで――を読んだ者は、ちょっといないのではないでしょうか。そのうちの多くは、それを取得した本人ですら、それが一体何なのか、どういうメカニズムで得られたものなのかが分からないまま、私に送られてきたものなのです。子供を通じて得られたものもありました。
 それらに共通して言えることは、死後の世界の環境は地上世界と非常によく似ていること、潜在している能力や心に秘めた望みが自由に、何の束縛もなしに発揮されていくことを述べていることです。生活環境について異口同音に語られているのは、足元が地球の地面と同じようにしっかりしていること、見かける花も動物も地上でよく見かけたものばかりであること、住居も、娯楽も、仕事もあるということです。
 いずれにしても、キリスト教が説いている、大ざっぱで、面白くなさそうな天国(
※@)とは大違いです。

※@――黄金の玉座に座すキリスト神のまわりでイエスと共に永遠に讃美歌をうたいつづけるという――訳者。

 正直に申せば、私がこれまでに読んだものの中には、ステッド氏のいう“ブルーアイランド”に相当する界層(※A)に言及したものは見当たりません。ただ、ブルー(青)というのは癒やす作用をもつ色彩で、アイランド(島)といっても多分一つの界層なのでしょうから、本館につながった控えの間、といったところなのでしょう

※A――普通は、“サマーランド”とか“パラダイス”と呼ぶことが多い。仏教でいう“極楽”に相当するとみてよかろう。本格的な霊界生活に備えて地上時代のアカを落とすための境涯である――訳者。

 睡眠とか栄養の補給といった生理的問題は、各自の魂の進化の程度による――程度が低いほど生理的にも似ている、ということではないかと信じております。理由が何であれ、死の直後の環境が地上と非常によく似ているという事実を知ることは、人類にとって計り知れない意義がありましょう。
 死への恐怖を取り払ってくれるのみならず、ご尊父のように突如として他界した場合に、あらかじめそうと知っていれば、戸惑わずに済むわけです。地上時代に間違った信仰を植えつけられていると、意識の切り換えや環境への適応のために、不愉快な体験を余儀なくさせられることになるのです。
 ご本の幸運を祈っております。

            1992年9月
 
 
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