歴史検証ファイル 
世界初の核攻撃
“原爆”投下の真相
DeAGOSTINI
 

 根拠のない100万人という犠牲者予測

 多くの一般市民が犠牲となった原爆投下を、アメリカ人はどう評価しているのだろうか。『アメリカの中の原爆論争』(NHK取材班編集)によれば、:多くのアメリカ人は「戦争をはじめたのは日本であり、それを終わらせたのが原爆投下だ」という見方をしているという。
 1945年8月10日、原爆投下の直後に、トルーマンは国民に向けてスピーチを行なっている。「世界は、初の原爆が軍事基地のある広島に投下されたことに注目するであろう。これは、この攻撃でできるかぎり一般市民を犠牲にしたくないと考えたからである。私たちは、戦争の苦しみを終わらせ、何千人もの若いアメリカ人の命を救うために、原爆を使ったのである」
 トルーマンがこのように正当化した原爆投下を多くのアメリカ市民は信用した。『アメリカの中の原爆論争』によれば、終戦直後に行なわれた世論調査では、アメリカ人の85パーセントが原爆の使用に賛成であったというのだ。
 1947年には、後世に多大な影響を与えることになる論文が発表された。元陸軍長官のヘンリー・スチムソンがアメリカの雑誌『ハーパーズ・マガジン』に寄稿したもので、戦争中のトルーマン大統領の決定を支持するために書かれたという。その内容については、斉藤道雄氏の『原爆神話の五○年』に詳しい。
 スチムソンは原爆使用の目的を戦争をできる限り少ない犠牲で早期に終わらせることにあった」と主張し、原爆がなければ連合軍は日本での上陸作戦を行なう必要に迫られ、その犠牲者数はアメリカ軍だけでも100方人以上であると記していたという。つま原爆は100万人のアメリ力兵を救ったというのだ。
 しかし斉藤氏は、実際にアメリカ兵の戦死者は訳40万人と発表されている。果たして、日本上陸作戦が行なわれた場合、100万人もの死傷者が出たのであろうか。斉藤氏はこの数字には何の根拠もなく、明白な世論操作の意図をもっていたと結論づけている。
 
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